二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
西園寺あやの
西園寺あやの
novelistID. 1550
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

はじらいのお兄さま

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

「それでよい。遠慮はいらぬ。……我輩はそれほど気が利くわけではない。はっきり言ってもらわねば、わからぬのだ」
湖の氷を溶かし込んだような、透明であり深みもある蒼い瞳。瞬きもせぬままで、リヒテンシュタインは息も止まりそうな心地でその奥に見入った。
ほんの少し。それほど長い時間ではなく、二人は見つめ合った。時の枠から切り取ったようなひととき。確かに互いの中に、なんらかの形で想いが湧いた。
それを捕らえきれないまま、先に我に返ったスイスが手を離し、顔を離した。
己の言動を振り返り、頬を引きつらせ、必死に次の言葉を頭の中で纏めているスイスに向かって、今度はリヒテンシュタインが助け船を出す。
「はい、お兄さま。今後ともいろいろな教えを賜りますよう、よろしくお願い致します」
なにごともなかったかのように、明るく朗らかな声でリヒテンシュタインは告げる。
その言葉にスイスも平常心を取り戻したか、兄らしく重々しく頷いてみせる。



着替えは自室もしくは浴室ですること。朝食は基本的に交代で作ること。食事はなるべく一緒にとるようにすること。家畜の見回りに行く時は、特に体調が悪くなければリヒテンシュタインにも声をかけ連れていくということ。
食卓で向かい合い、そういう相談と取り決めをした。これからも話し合い、互いに居心地のよい暮らしにしようと決めた。
そんな楽しい会話に紛れ、交わした一瞬は流される。だが忘却の隅でしっかり根を下ろすことは忘れず、本人達も意識せぬまま、身体の奥底に刻み込まれた。
それが形を得て花を開かせるには、まだしばらくの時が必要だった。


それでもスイスはしばらくの間、着替えをするたびに騒動と顛末を思い返し、自室や浴室で一人、頬を赤らめる日々が続いた。
やがてリヒテンシュタインが日々の暮らしに慣れた頃になっても、断固としてタンクトップだけは死守して肌身を晒すようなことはしなかった。
 

結局、それはあえて肌身を晒すようになるまで続くことになる。