魔法少女リリカルなのはA’s〜孤高の改造人間と夜天の主〜
第五話 本郷の過去
ショッカー海鳴支部
世界征服を企む、秘密組織ショッカー。ここは、そのショッカーの秘密基地である。そして、今此処で、ショッカー最高幹部のみが出席できる幕僚会議が開かれていた。
「暗黒魔導師。参上いたしました」
『うむ。これで四人の最高幹部が揃ったか』
暗黒魔導師の前のモニターには、ナチスの軍服に身を包み、左目に眼帯をした男性と、黒いマントに黒い紳士服を着こなす初老の男性と、特異な形状の服装に身を包み、鞭を右手に持った男性が写っていた。
『失敗したな・・・暗黒魔導師』
初老の男性が最初に口を開き、先程の作戦の失敗を暗黒魔導師に問うた。
「まさかあの出来損ない《ミスクリエーション》があそこまで強いとは思わなかったわ」
その返事に、鞭を持った男性は不愉快に思い、本音を漏らした。
『ふん!おめおめと失敗したくせに!よくそんな事が言えるな!』
「東南アジアでこそこそしているゴキブリに言われたくは無いわね」
『何だと!貴様ァ!』
今にも口喧嘩が始まろうという時に、焦眼の男性が止めに入った。
『よさんか!今此処で我等が争っては、組織の恥だ。御二方には、地位を弁えて頂きたい』
「・・・・・」
『ふん!』
辺りが静まり返ると、初老の男性が暗黒魔導師にある事を持ち掛けた。
『ところで、暗黒魔導師。其方の基地にある仮面ライダーの戦闘データを私に渡してくれないか?』
「“更なる男”の為?」
暗黒魔導師は、その事に対して返事をすると、データを渡すように、外の戦闘員に伝えた。
『勿論・・・緑川の裏切りで既に七体の怪人が奴に葬られた。しかしそれは奴の高い戦闘能力を分析できたも同じ。第二期強化改造人間計画の次の段階に入れるのだ』
「ふふふ・・・でも闇の書とその主が手に入ればその計画もおじゃんよ」
『その時はその時よ』
そんな会議の中、遂に首領が口を開いた。
『何れにせよ、今作戦の運命は貴様に掛かっているのだ』
「はっ!肝に銘じておきます!」
首領の言葉に、暗黒魔導師は膝を付いて答え、他の三人も同じ事をした。
『今回の最高幹部会議は此処までとする。解散!』
首領の声と共に、モニターが消え、辺りは薄暗くなった。
「フフフフ・・・・」
暗黒魔導師は、不適な笑みを浮かべ、部屋から出た。
*
八神家
現在、八神家のテーブルには、本郷をセンターに、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ(人間形態)が座っていた。はやてはまだ気絶したままで、今は自室で眠っていた。
「さぁ。話してもらおうか。先程のあの姿、主を連れ去ろうとした蜘蛛の化け物が言っていた《ショッカー》とやらの事を」
シグナムは、本郷に睨みながら言った。当然である。主の身を守るのが彼女たちヴォルケンリッターの務め、その為にも、主であるはやてを狙う奴らについて聞かねばならないのだ。重苦しい空気がリビングに漂う中、本郷は、重々しく口を開いた。
「・・・実は、俺も、そしてショッカーも、この世界と平行して存在する、ある世界の人間なんだ」
「どういう事だ?」
本郷は、自分がこの世界に来た訳を話した。コーチの立花藤兵衛と共に、全日本グランプリの練習中に、謎の光に包まれてこの世界に来たことを。
「・・・つまり本郷さんは、次元漂流者という事ですね」
「次元漂流者?」
「とある理由で別世界に来てしまった人の事です。簡単に言えば、迷子のスケールが次元世界に拡大したものです」
なるほど、本郷は頷きながら答えた。
「では、先程の姿は何だ?あの時、蜘蛛の化け物はお前を《仮面ライダー》と呼んでいた。お前は一体何者だ?」
シグナムの次の質問は、本郷の体についてだった。本郷は、少し暗い表情で話し始めた。
「・・・俺は奴らと同じだ」
「えっ・・・」
本郷の言葉に驚く四人。本郷は、構わず話を続けた。
「・・俺は、奴らと同じ改造人間なんだ」
「改造人間?」
「俺はショッカーによって、脳髄を除くほぼ全てを改造された」
「ど、どういう事なんだ?」
ヴィータが本郷の説明に疑問を抱き、その訳を問いただした。本郷はそれを聞くと、自分の過去を話す事にした。
「あれは忘れもしない。昭和四六年四月三日の事だった・・・」
本郷は、四人に、自分が何故仮面ライダーになれるのかを話す事にした。しかしそれを聞く者が、外にいた。
*
本郷猛、城南大学生化学研究所きっての秀才で、その事のさる事ながら、オートバイのテクニックも、超一流といわれ、その生涯は、約束されたものに思えた。
だが、その輝かしい生涯は、地獄の悪魔達によって踏み潰された。
*
ショッカー日本支部
「うう・・・」
本郷は、冷たい手術台で眼を覚ました。眼を覚ました本郷は、自分が練習中に蜘蛛の糸の様な物に捕まり、そして、謎の女達が自分に近づいてきたことを思い出した。そして、手術台の周りには、不気味な刺青を顔にした白衣の男達が囲んでいた。本郷は起き上がろうとするが、手足を鎖に繋がれており、身動きが出来なかった。
「此処は一体何処だ!俺を自由にしろ!」
すると、手術台が怪しく点滅しながら、謎の声が聞こえてきた。
『はっはっはっはっ・・・本郷猛。ようこそ我等がショッカーに来てくれた』
「ショッカー?一体何のことだ!?」
本郷猛が耳にした、ショッカー。それは、世界のありとあらゆる所に網を張る、悪の秘密結社である。ショッカーは、世界各国の人間を改造し、その意のままに動かして、世界征服を企てる。恐るべき集団なのだ。
『我々が求める人材は、知能地数六百!スポーツ万能な青年だ。本郷猛。君は選ばれた栄誉ある青年なのだ』
「馬鹿な!俺はショッカーに入ったつもりは無い!」
本郷は激しく反論するが、首領は嘲笑うかのように答えた。
『ふっふっふっふっ・・・もう遅い、遅いのだ本郷。君が意識を失って既に一週間、その間に我々ショッカーの科学陣は、君の体に改造手術を施したのだ。今や君は改造人間なのだ。改造人間が世界を支配し、その改造人間を支配するのが私だ。世界は私の、意のままになる』
「改造人間・・・?信じられるか!」
『信じざるを得ないよう見せてやれ!』
首領の言葉の後、科学陣があるスイッチを押すと、本郷の体に風が吹き荒れた。
暫くすると、科学陣は同じスイッチを押して、風を止めると、今度は本郷の手足に、プラグを取り付けた。
「今からお前に、五万ボルトの電流を流す。並の人間なら一瞬にして黒焦げの死体になる。しかし、お前は改造され、風力エネルギーを得た』
そう言うと、科学陣の一人が送電スイッチを押した。
「グワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
本郷は電流に苦しむが、本郷の体には火傷の一つや二つが出なかったのだ。本郷の叫びを聞きながら、科学人の一人が口を開いた。
「火傷一つ、君の体には残らない。苦痛を感じるのはまだ脳改造がされてないからだ。脳改造がすめば、君は完全なる!ショッカーの一員になれる!」
その言葉と同時に本郷の送電は停止した。