魔法少女リリカルなのはA’s〜孤高の改造人間と夜天の主〜
第四話 怪奇蜘蛛男
それは、小さな出会いだった・・・
心優しき少女との静かな生活、幸せな日々・・・
そこに現れた、4人の守護騎士・・・
そして動き出す、因縁の組織・・・
今、宿命という名の歯車が、回り始めようとしていた・・・
魔法少女リリカルなのはA's~孤高の改造人間と夜天の主~
始まります。
*
海鳴市立病院に着いた本郷たちは、当直だった石田先生の元に気絶したはやてを担ぎ込んだ。石田先生はヴォルケンリッターの面々に不審な目を向けたが、まずはやての診察に掛かった。本郷は診察を石田先生に任せると、四人と一緒に部屋を出た。
寒い廊下で待つこととなったブレザー姿の本郷とヴォルケンリッターの四人、本郷は四人の服装を見ると、上に羽織っていたブレザーとセーターを脱ぎ、ピンク色の髪の女性に渡した。
「そんな格好だと寒いだろ。寒さしのぎにもなるから、一応羽織っておけ」
「嫌、御好意はありがたいが、大丈夫だ」
本郷はそうかと言うと、ブレザーとセーターを、近くのベンチに置いた。
しばらくして、はやての診察を終えた石田先生が出て来た。本郷は、ベンチから立ち、石田先生のもとに向かった。
「石田先生。やはりはやては」
「本郷さんの推測通り、強烈な閃光による気絶でした。今は寝てますから、朝には目覚めるでしょう」
本郷はそうですかと言い、ほっとしたため息をついた。そんな本郷に先生はある事を質問した。
「本郷さん、あの人達は誰なんですか?まだ寒い時期なのにあんな薄手で・・・」
ちらりと四人を見る石田、それを見た本郷は苦笑しながら返事をしようとした・・・その時!
「嫌あの人達は・・・っ!?」
改造人間である本郷猛は、常人よりも動体視力、並びに視野が数倍になっている。このとき本郷は、数十メートル先にある建物の屋上に怪しい人影を捕らえた!
「すみません!ちょっと失礼します!」
「えっ!?ちょっ本郷さん!?」
人影を見た本郷は、直様その場を後にし、駐車場に置いてあったサイクロンのアクセルを回し、人影のいた場所に向かった。
*
海鳴の道路を疾走するサイクロン。それに乗っていた本郷は、妙な胸騒ぎが沸いていた。そう、本郷が見た人影は、ショッカーの戦闘員だったのだ。何故奴らがこの時代にいるんだ?本郷は、そう思ってならなかった。
人影のいた場所に着いた本郷だったが、既に立ち去った後だった。
「見間違い・・・か?」
そう感じた本郷は、はやてのいる病院に戻ろうと、サイクロンの置いてある場所に向かおうとした、その時!
『久しいな・・・裏切り者、本郷猛』
突然、声が聞こえてきた。聞き覚えのある声、本郷は、その声に対して、怒声の様な声を出した。
「ショッカーの首領!何処にいる!」
『ふふふふ・・・そうだな、《元の世界》とでも言っておこう』
「何!どういうことだ!」
本郷の反応に首領は、あざ笑うような声を出して、本郷に答えた。
『今貴様がいる世界は、元の世界と平行して存在する世界なのだ。私はこの世界にある〈闇の書〉を手に入れる為、ショッカー海鳴支部を設立した』
「闇の書だと!」
本郷は、首領が闇の書を知っている事に動揺した。首領は気にもせず説明を続けた。
『闇の書とその主、この二つが手に入れば、世界のみならず、全ての次元世界を征服できる力をもてるのだ。全ての世界は我等ショッカーの物になる』
「何だと!」
はやての持っていた闇の書にそんな力がある事に驚愕する本郷。
『だがその前に・・・その弊害となる裏切り者本郷猛・・・嫌、仮面ライダーを処刑する!掛かれ!』
首領の合図と共に、隠れていた戦闘員が、本郷に襲い掛かった!
「っ!?トォッ!」
襲い掛かる戦闘員をローリングで避ける本郷、戦闘員の一人が手に持った短剣を本郷に向けて投げつけた!
「トォォォォッ!」
だが本郷はそれをジャンプで避け、サイクロンのある場所に着地した。
サイクロンでその場を去る本郷を戦闘員が追いかけようとしたら、
「待て!」
声が聞こえた。戦闘員が振り向くと、そこには暗黒魔導師がいた。
「暗黒魔導師様!何故裏切り者を逃がすのです!」
「裏切り者の虫けら《ワーム》など、何時でも殺せる。我等の最優先事項は闇の書の主だ。今蜘蛛男が主のいる病院を監視しておる。お前達も蜘蛛男の元に向かわんか!」
暗黒魔導師の命令に引き下がる戦闘員、数秒後、その場所から戦闘員と暗黒魔導師は姿を消した。
〔テレレレーン、テレレテテン!(アイキャッチ:シグナム)〕
*
〔パッパパ~ン、パパパパン!(アイキャッチ:旧1号)〕
病院に戻ろうとした本郷は、石田先生からはやては家に帰ったのを電話で聞き、直様家に帰った。
「ただいま~って何だ?この状況は?」
本郷が眼にしたのは
一、前に見た服装とは違った服を着ている三人
二、巨漢の男の姿が無く、代わりに蒼い毛の狼がいる
三、何気なく朝食を食べている三人(内一名は箸の持ち方、並びに使い方が違う)だった。
「あ、猛兄お帰り!朝食出来とるよ」
詳しく事情を聞きたかったが、今はまず朝食を済まそうと思い、洗面所に向かった。
その後、はやてから闇の書についての説明と、はやてが闇の書の新たな主となった事などを聞き、最後にヴォルケンリッターと自己紹介をした。その時にシグナムに謝罪されたのは言うまでも無い。それを聞いた本郷は、ショッカーが闇の書とはやてを狙っている訳が判った。闇の書の力は、ある意味では危険すぎるのだ。使い方を間違えれば、世界そのものを滅びしかねないのだから。そして、本郷は決意をした。
「(ショッカーは絶対はやてを狙ってくる。はやてをショッカーから守れるのは、俺しかいない!はやては必ず守ってみせる!)」
そう考えていたら、
「猛兄」
「ん?何だいはやて?」
「今日、海連れてく約束やったやろ?」
「あ!」
本郷はあっけをとられた。そう、思えば今日ははやての誕生日で、海に連れてく約束だったのだ。
「よし!新しい家族が出来たんだ!海を見に行こう!」
こうして、八神家全員で海を見に行くこととなった。
・・・だが、それを遠くから聞く者がいた。
*
海鳴海浜公園通路
本郷達は、海の見える場所で、海を見ていた。澄んだ蒼い海を見て、はやては涙を流していた。
「どうしました主?具合が悪いのですか?」
傍にいたシグナムが心配しながらはやてに問う。はやては、涙を拭き、笑顔で返した。
「嫌、そうやない。感動しとるだけなんや」
そんなはやてを見る本郷。その表情は悲しげだった。
「(俺はこの1ヶ月、はやてと一緒に生活してきたが、やっぱり辛いんだな)」
そう思いながら本郷はその場を去っていった。それを見たはやては、本郷の声をかけた。
「あ、猛兄何処行くの?」
「え、ちょっと飲み物買って来る」
そう返すと、本郷はサイクロンにまたがり、その場を去った。五人だけとなった海辺、そこではやては、色々な事を思い出していた。
「(今まで色んな事があったけど、やっぱ一番良いのは家族が増えたことやな)」
そんな事を思い浮かべていた、その時!