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たとえばこんな間桐の話の蛇足の話(後)

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「……貴方は、あの方達と共に在るのですね、ランスロット」
「はい。……我が王。私は、カリヤ達を守る者として、カリヤ達の傍に居たいと思います」
 穏やかに、語り合う。
 嘗ての主従は、過去のしがらみも何もかもを乗り越え、笑い合う。
 聖杯を切望していたセイバーも、己が望みが何を変えてしまうのか。何を否定してしまうのかを知り、理解し、呑み込んで。
 ランスロットもまた、狂化を解かれ、そして王との対話を果たし。思う存分語り合って、納得と満足の末に、邂逅した。
 ……その語り合いが主に拳によるものであったのは、まぁ騎士様達のお約束なのだろう。
 剣での語り合いは危ないから駄目だと互いのマスターから言われていたので拳での殴り合いになったのだが、それは二人の気質に合っていたらしい。
「それにしても、本当に貴方はあの方達が好きなのですね」
「ええ、勿論」
 セイバーの言葉に、ランスロットが微笑む。
「私が王とこうして穏やかに話す事が出来るのも、カリヤ達のお陰なのですから」
 感謝をしている。
 彼等は、己が狂戦士として在った時から、己を受け入れてくれていた。
 自らを壊れ、歪み、狂っていると言いながら、彼等はとても楽しそうに、幸せそうに、生きていた。
 狂化したままの自分も呼び出し、一緒にあの蟲爺と遣り合った時でさえ、ボロボロになりながら笑っていた。
 あれを狂っていたというならそうなのだろう。だが、それでも彼等の強さは本物で。
 それに引き摺られて、私もいつしか彼等の中に居た。
 狂化を解かれても尚。……まぁ、サクラにはカリヤを取られるという危機感を持たれてちょっと冷たくされたけれど。
「……そうですね。私とて、切嗣やアイリスフィール達の事は好ましいと思っていますから。……まぁ、切嗣は心を折られていなければ、私の事をガン無視する感じになっていたらしいから、正直切嗣の心を折ってくれたという貴方のマスターには感謝してもし切れません。士郎も、あの方達の事はとても好きな様だし……。イリヤスフィールとも仲良くしてくれて、本当に有難い」
「……私達は、とても幸福ですね」
「ああ。……とても」
 嘗ての願いは、独り善がりで、今思うと愚かしいとまで言える様なものだったけれど。
 それでも自分達はそれらが在ってこそ此処に来て、そしてそれらを越えて、此処に居る。
 互いに浮かべる微笑は、今この時が幸せだという証だ。
 英霊である自分達は、本来ならこの世界に居てはいけないのだろう。
 だが、それでも。
 叶うならば。
 いつまでも、いつまでも。
 彼等と共に在りたいと、願っている。


 ──そう思い、願い、祈って、それから。
 時が経ち、それらはやはり、変わる事も無く。


「うちの雁夜と桜と慎二は天使です!!兄上殿はアル中ではあっても立派な大黒柱です!!」
「うちの士郎とイリヤとアイリと舞弥こそ天使だ!!切嗣は目は死んでいても最強だ!!」
 ……若干残念にはなっていたが。
「相変わらずだな貴様等!!我も混ぜろ!!我の凛とカレンは天使!!葵は母としての強さを持つ故恐ろしいが頼もしい!!時臣はうっかりだがだからこそ我を愉しませる天才ぞ!!綺礼は割愛する!!」
 そしてもう一人増えた。
 突っ込み所しかないが、今更なのでスルーしつつ。
「……貴方も相変わらずですね、ギルガメッシュ」
「ところでいい加減我のモノになれ、セイバー」
「死んで下さい」
「照れるな照れるな。愛い奴め」
「どうしようもなく相変わらずですね、慢心王」
「黙れ駄犬めが」
 睨み合う二人に溜息を一つ零し、セイバーは己の結論を口にする。
「とにかくウチの天使達に勝るものなどありません!!特に士郎のご飯なんて、至上ですよ!!」
「そこへ到るのですか王よ……。しかし桜の作るご飯も負けてはおりませんよ!!特に洋食が得意でですね……」
「何を言うか!!凛の中華を舐めるでないぞ!!」
 そしてエンドレス。


 嘗ての英霊達は、今はただの兄馬鹿姉馬鹿と化していた。
 ただこの時は、騎士でも王でも無く、ただ大切な者を、大事な者を想うだけの。
 それが良いのか悪いのか、誰にもきっとわからない。
 けれど、それでも。
 己の想う者達の……ぶっちゃけ身内の自慢大会を繰り広げている彼等は、傍目にも幸せそうだった。