ふしぎなひと。
side N
「ふう」
裏々山の頂上で、私は息をつく。
「いち、にい、さん、しい…今日はずいぶん多かったなぁ」
今日はひときわ罠が多く仕掛けられていた。
勘の悪い金吾あたりがまんまとはまって怪我でもしたら大変だ。
すぐに外さなくっちゃな。
…あれ、えっと、ん?
どこだったっけなぁ…?
まあ、仕掛けたのはどうせ四年生の綾部喜八郎だ。
学園に戻ってから外すように言ったらいいか。
「よっし」
走る。
走る。
「あっれ?」
途中罠に出会うこともなく、忍術学園まで帰りついてしまった。
「あれ?」
見逃したのかな?
行きにはちゃんとあったのになぁ。
「あ、喜八郎!」
ちょうど喜八郎が通りかかった。
直接言ってはずしてもらえばいいや。
「あのさ、裏山と裏々山の」
「罠なら全部はずしましたよ」
ぴしゃりと言い切る喜八郎は少し不機嫌そうだった。
「用はそれだけですか?」
「おお。ありがとな」
喜八郎はいぶかしげに首をかしげながら去って行った。
…それにしても、なんでわざわざ私に言われる前に罠をはずしてしまったんだ?
なにか気に入らないところでもあったんだろうか?
せっかく仕掛けた罠なのに。出来もよかったと思うんだけどなぁ。
へんなやつ。