二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

MISSION IMPOSSIBLE

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 



 ウゾをあおるアイオリアを眺めながら、私はじりじりしていた。
 あの後も思いつく限りの秋波を送ってみたが、アイオリアの様子に変化はない。
 いつもは私が待てと言うのにも耳を貸さないのに、強引でない獅子など別人のようで気味が悪いではないか。
 こうなったら、意地でもアイオリアを誘ってみせる!

 私は遂に捨て身の手段に出ることにした。

「……アイオリア……」

 あまりにも古典的だが、彼のような性格には極力ストレートな誘いの方がいいのかも知れない。
 私はアイオリアの逞しい肩にしなだれかかった。
 バスローブの袷から覗いた、ほんのりと石鹸の匂いがする褐色の胸元に頬を寄せる。

「……早くベッドへ……」

 限界一杯まで甘えた口調で訴えた途端、力強い腕が私の体を抱き込んだ。
 顔が近づく気配は、目を閉じたままでも判る。

(よし!)

 心の中で諸手を上げるまもなく、触れ合ったのは唇ではなく、互いの額だった。

「どうした、具合でも悪いのか?」

 思わず目を開けると、息の掛かるほどの距離にアイオリアの真剣な顔があった。

「今日のお前、何か変だと思っていたんだ。調子が悪いのだったら無理をするな」
「…………」

 ……悪かったな、変で。


 だが、いつも強引な癖に妙な所で優しいこの男の不器用さを、私は心底愛しく思っているのだと改めて感じた。

「横になるか? それとも水を持って来ようか?」

 バスローブ越しに、彼の高い体温と早い鼓動が伝わってくる。
 作戦などと真剣に考えていたのが馬鹿馬鹿しくなって、私は結局白状してしまった。

「具合が悪い訳ではない。一応誘っているつもりだったのだが、判らぬか」

 アイオリアは心底驚いたようだったが、やがて合点がいったらしく笑い出した。

「何だ。だからそんな格好をしていたのか。どういう風の吹き回しかと思ったぞ」
「何だとは何だ。私がせっかく……」
「それで───」

 不意に、わざと低めた声を耳元に吹き込まれて、軽く震えが走った。

「お前の誕生日くらい静かに過ごそうと思っていたのに、自分から誘ってくるほど淋しかったのか」
「そのようなことは───」
「答えろシャカ。どんな風に淋しかったのか言ってくれ」

 遅ればせながら、アイオリアの目が獲物を捕らえた獅子のように閃いた。
 誕生日をちゃんと覚えていてくれたことは嬉しかったが、このままでは誘っている意味がない。
 あまりにも密着した体勢を変えようとしたものの、体格差もあって、逆にソファに沈められて身動きがとれなくなってしまった。

「……やめたまえ……っ」
「言うまでこのままだ」

 結局、またいつものパターンになだれ込みである。
 やはりこれが一番しっくりくるような気がするが、認めてしまうのは口惜しい。

「いつの日か思い切り大胆に誘ってやるから、覚悟したまえ……!」
「判ってないな───お前は素が一番色っぽいんだよ」

「乙女座お誘い大作戦」は、こうして続行不可能のまま終了となった。


FIN
MISSION IMPOSSIBLE/実行不可能
2012/9/19 up




作品名:MISSION IMPOSSIBLE 作家名:saho