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こらぼでほすと 十一月3

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翌日の朝から、ニールの実弟は現れた。まだ一ヶ月に満たない時間での再訪ではあるが、それでもニールは嬉しそうだ。坊主も、黒猫の降下は知らされていない。ただまあ、女房の気持ちを考えると、逢いたいだろうな、とは思うらしい。

「おはようございます、三蔵さん。」
 ちょっと寝不足らしいが、クラウスはきっちりと着替えた姿で現れた。後ろからライルもついてきている。パンのほうが馴染みがあるだろうと、寺の女房が用意したのは、ワンプレートにスクランブルエッグ、サラダ、カリカリベーコンが載せられたものだ。これにトーストがついている。
「カップスープで悪いけど。」
「兄さん、俺、味噌汁とメシも欲しい。」
「クラウスさんは? 」
「じゃあ、少し味見させてください。」
 まあ、伊達にテロリストをやってたわけではない。食べられる時に食べるは基本だから、ライルとクラウスは朝から食欲旺盛だ。坊主と寺の女房は食べ終わっているから、食後のコーヒーを飲んでいる。
「おまえの昼は用意してないから、カレーでもいいか? ライル。」
「うん、それでいい。てか、俺の予定は、どうなってんのかな? 」
「さあ? ハイネがクラウスさんの世話役らしいから、あっちに聞いてくれ。」
 ハイネは、仕事がなければブランチな時間まで寝ているので放置されている。午後から店で衣装合わせとかあるんだろうな、ぐらいにしかニールにもわからない。ふと、思い出して、そうそう、と、ライルの頭を撫でる。
「ああ、ライル。データありがとな? 」
「どういたしまして。てか、上から目線はやめろってっっ。対等にモノは言えっっ。」
「言ってるだろ? 」
「いい年した男の頭を撫でるな。」
「いや、ふわふわして触り心地が良さそうでさ。ついつい。」
 あははは・・・と、ニールが陽気に笑うので、ライルも頬を歪める。とても普通の会話だ。それが心地良い。
「じゃあ、俺にも撫でさせろ。」
「別に撫でてもいいけどさ。それより、ハイネが起きるまでは自由行動なんだろ? クラウスさんと散歩でもしてくれば、とうだ? 」
 同じ容姿の同じ髪質の兄は、そう言って笑う。また、それかい、と、ライルは呆れつつ、「そうだな。」 と、返し、実兄の頭を撫でる。寺でできない話は、外でするべきだから、勧めてくれることには同意する。あれから、一ヶ月程度だから目新しい情報というのは、これといってないが、まあ、突合せはしておくほうが得策だ。
「クラウス、そこいらをブラブラしてみないか? 」
「そうだな。・・・お兄さん、これ、おいしいですね。スローフードとしては、それほど癖がなくて美味しいですよ。」
 味噌汁というのは、特区独特のものだ。クラウスも食したことはなかったが、スープとしてはあっさりした部類で飲みやすい。
「それじゃあ、和食でもよさそうだ。それから、好みのお酒の銘柄ってありますか? クラウスさん。用意できるものなら用意しますが? 」
「えーーー、俺には、そんなこと言ってくれたこともないじゃんっっ。俺、ギネスッッとシードルの入ったエールッッ。」
「おまえのは解ってるよ、ライル。もう用意してる。」
「俺は、なんでもいいんで、ライルと同じもので結構です。昨日、飲んだのもいけましたから。それから敬称は結構です。ライルの友人なんだから、呼び捨てでお願いします。」
 あっちこっちと飛び廻っているクラウスは、銘柄には拘らない性質だ。あまりクセの強いのやアルコール度数の高いものは好まないが、それ以外なら、なんでもアリだ。
「まあ、敬称は追々に外します。」
 なんでもアリなら楽なものだ。寺には焼酎とビールの在庫はキープしているから、新しく追加しなくてもいいらしい。

 実兄が、とても元気そうなので、これなら連れ出してデートもできるんだろうと、店に向かうクルマの中で、ハイネにスケジュールを確認したが、相手は渋い返事だ。
「どこいら辺りを予定してる? 」
「うーん、ちょっと街をブラブラして食事するぐらい。」
「寺から半径2キロ圏内なら、なんとか。」
「はあ? 」
 半径2キロなんていうと、近くの公園ぐらいしか行けない範囲だ。ちょっと、のんびりと兄弟で過ごしたい、と、思っていたライルとしては繁華街でも繰り出して、〆に酒でも呑むつもりだったから、そんな範囲では無理だ。ここいらには、そんな小洒落た店はない。、
「あのな、おまえの実兄は、現在生きてるのが不思議な状態なんだよ。漢方薬治療で体調は維持してるけど、体調を崩したら即座に冷凍保存という状態だ。だから、外出は無理。」
「え? でも、ハイネ。兄さん、顔色もいいし、家事もやってるじゃないか。」
「普段通りにはやってねぇーぞ。洗濯と掃除はレイとシン、悟空が分担してる。やってるのは食事関係だけだし、昼寝どころか、途中途中で身体を横にしてる。」
 無理をすると、翌日は寝たきり状態になる。ハイネも、悟空から漢方薬の効能を聞いて、外出しないようにさせている。買い物も、ハイネかトダカがクルマで付き合っているし、夜も、寺に住んでいる面々は早めに上がって帰るようにシフトを組んでいる。もう少しで治療が出来る。それまでは、この緊急シフトを解除するつもりはない。
「・・・そんな・・・」
「まあ、休み休みに身体を動かしてる分には危険はない。イレギュラーなことは避けたいってとこなんだ。それに、おまえとデートするとか言うと、張り切るだろ? 」
「そうだろうな。」
「だから、兄弟でデートっていうなら、治療が終わってからにしてくれ。今回は許可できない。」
「ライル、それなら今日のコースぐらいにしておけばいい。すぐに、お兄さんは治療にかかれるんだろ? 」
 クラウスも、傍で聞いていて、そう勧めてくれる。無理させたいわけではない。マイスターに戻れない理由は、以前に聞いている。
「そうだな。じゃあ、その代わり? 」
「どこかにホテルでも取ろうか? 」
「それがいいな。寺は、やるには防音が問題だ。」
 セフレだから、そこいらの息はぴったりだ。まあ、三日間、延々と寺に滞在してもらわなくてもいい。
「泊るなら朝のうちに、ママニャンに言っとけよ? それから、店には六時までに出勤。」
「了解、了解、ハイネ。明日、そうする。」
 特別ミッションとはいえ、それほど時間を束縛する類のものではないから、適度にライルとクラウスにも息抜きはさせておくことにした。




 特別ミッション当日は、寺の人間も出勤だから、レイも直接に店のほうへ行くことになっている。本日限りは、レイとシンも出勤しなければならない。
「昼寝しとけよ? 」
「わかってるよ。もう出かけんのか? ハイネ。」
「ああ、余興の練習があるからな。ママニャンたちは、俺が迎えに来るから。」
 昼食が終わるとすぐに、ハイネが二人を連れて出かけた。余興のマジックが、結構、大変らしく、クラウスもライルも夜にはヘトヘトで帰ってくる。本日で、この苦行も終わりだから、ちょっと顔色は良い。そこまで余興に力を入れているのか、と、ニールも呆れるほどだ。
作品名:こらぼでほすと 十一月3 作家名:篠義