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風香の手帖

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 話が終わり、小岩井と風香は小岩井家に戻ってきた。
「ふぅー。お父さんに散々どやされると思ったけど拍子抜けだな」
「最初緊張したー」
「ところで、お父さんこんにゃくがどうとか言ってたけど、あれはどういう意味?」
「あれ? よつばちゃんから聞いたけど、小岩井さんてこんにゃく屋さんでしょ。お父さんに小岩井さんのお仕事を聞かれたとき、少し脚色して話しておいたの」
「またよつばか。風香ちゃんが前スーパーでこんにゃくのこと聞いてたのはそのせいか」
「何かまずかったですか?」
「風香ちゃん、俺はこんにゃく屋じゃなくて翻訳家。外国語を日本語に訳したり日本語を外国語に訳すのが仕事だ」
「ええー、そうなんだ! 私ずっとこんにゃく屋さんだと思ってた!」
「まあそれ自体は特に問題ないけど、お父さんには後で訂正しないと」
「わかりました。じゃあ、私一旦帰りますね」
風香は自宅に戻っていった。

 家の台所へ行くと両親が話をしている。
「風香がこんなに早く結婚するようになるとは思わなかったねえ」
「よつばちゃんがいるから、私たちもうおじいちゃん、おばあちゃんですよ」
「後で子供たちの昔のアルバムでも見るか」
二人の話を陰で聞いていた風香は、不意に寂しさに襲われる。
そして風香は自室に入りいつものようにベッドに横になると、家族のことを考えた。
慣れ親しんだ家族と別れ、家を出る。
その事実は風香を感傷的にさせた。
「でもしょうがないよね。それだけ好きな人に出会っちゃったんだから」

 風香が横になっていると、恵那とよつばがドアをノックして入ってきた。
「風香お姉ちゃん、いつ結婚するの?」
「まだ決まってないけど、私が高校を卒業した後かな」
「すごーい。じゃあ私が六年生になったら、お姉ちゃんはよつばちゃんのお母さんになるんだ!」
「ふーかはよつばのおかあさん? とーちゃんのおよめさん?」
「私はとーちゃんのお嫁さんで、よつばちゃんのお母さんになるの」
「そーかー。ふーか、とーちゃんとチューしたか?」
「その質問には答えられませーん」
「あー、お姉ちゃんキスしたんだー」
「答えられませーん」

 数日後、風香は小岩井親子と水族館に出かけるため小岩井家を訪れた。
今日の風香は先日の超ナチュラルメイクで、さらにリップグロスを塗っているため唇が艶のあるピンク色をしている。
服装は小岩井の好みを反映させたのか、白いミニのワンピースである。
「ふーか、いつもとちがう!」
「フフーン、お姉さんもやればできるのだ」
「唇が明るい色でつやつやしてるね」
「今日はグロスを塗ってみたんですけど変じゃないですか?」
「大丈夫。よく似合ってるよ。じゃあ、一枚撮ろうか」
小岩井は出かける前に、自宅の前で風香とよつばの写真を撮った。

「しゅっぱつー」
よつばが二人と手をつなぎ、うれしそうに歩いていく。
電車を乗り継ぎ、一行は水族館についた。
中に入ると当然のことながら魚だらけで、島育ちのよつばと言えどもこれだけの魚を見たことはない。
よつばははしゃぎ、魚を追いかけて走り回っている。
「よつば! 危ないから走るな!」
「よつばちゃん楽しそうでよかった」
「よつばの心配をしてくれるのはうれしいけど、風香ちゃんもまだ高校生なんだし、もっとわがまま言ってくれていいんだよ?」
「でも私、よつばちゃんが喜ぶ顔が見たいんです」
「風香ちゃん、君は本当にいい娘だね。じゃあこれからはよつばを連れていくときと、二人だけで行くときを、相談して決めようか」
「はい、わかりました」

 そこによつばがやってきて、二人を引っ張っていく。
「とーちゃん、このさかななにー?」
「ハリセンボンだな」
「わー、くりみたい」
「イガイガだねー」
「あのおおきいのは?」
「あれはマンボウだ」
「あははは、へんなかおー。あれはないなー」

 小岩井が写真を撮りながら水族館を一通り回り、三人は帰途についた。
「よつば、面白かったか」
「うん! いっぱいおもしろかった!」
「良かったねー」
「いい時間だし、帰りに晩飯でも食っていこうか」
「よつばちゃん、何食べたい?」
「カレー!」
「カレーか。あそこに行ってみるか」
「小岩井さん、お店のカレーってよつばちゃんには辛すぎないですか?」
「そこは子供用のメニューもあるから大丈夫だと思うよ」

 三人は途中の駅で降り、目的のカレー専門店へ入っていった。
長く続いている店らしく内装が物々しい。
早速三人はメニューを見ながら料理をオーダーする。
「他の人から見たら、私たちってどう見えるんでしょうね」
「俺の子供と姪っ子かな」
「やっぱり私は恋人には見えないかなぁ」
「風香ちゃんがもうちょっと大人になったら、見えるようになるさ」
そして頼んだ料理が来たので食べ始める。
「よつば、子供カレーうまいか?」
「とーちゃんのカレーうまいけど、これもうまい! パンがすき!」
「それはナンって言うんだ」
「あ、本当だ。おいしい。そんなに辛いわけじゃないんですね」
三人はみんな完食した。

 料理に満足した三人は、再び電車に乗り小岩井家へ帰ってきた。
「ただいまー」
よつばが家の中に入っていく。
「どうする風香ちゃん。寄ってく?」
「いえ、今日は帰ります」
そして風香は目を閉じる。
「んー」
小岩井がキスをすると、風香は手を振り笑顔で帰っていった。

 家の中に入ると、よつばが小岩井の顔を見ている。
「とーちゃん、くちがあかいぞ」
小岩井が口を拭うとグロスが着いている。
(ああ、風香ちゃん化粧直してたから)
「とーちゃん、ふーかとチューしたか?」
「こ、こら! 大人をからかうな!」
照れ隠しで声が大きくなる小岩井であった。

作品名:風香の手帖 作家名:malta