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こらぼでほすと 十一月4

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お客様は、「お疲れさんだったね。あと一息だからさ。」 と、ニールに微笑んだ。いろいろと諸事情に詳しいお客様なので、ニールのことだけでなくマイスターたちのことも知っているのだろう。ニールのほうも、「ありがとうございます。」 と、返した。


 怒涛の特別ミッションは、最後まで恙無く終わった。サプライズもあって、ニールも驚いたものの、それはそれは嬉しいサプライズだった。虎がお客様を送るためにエスコートして退出すると、やれやれと残りのスタッフは肩の力を抜く。クラウスとライルに到っては、へろへろと床に座り込むほどの状態だ。
「今年も終わったねーアスラン。」
「ああ、無事にお客様も喜んでくださった。・・・・家具の配置換えは明日にして、今日は、これで解散しよう。各人着替えてください。」
 フロアマネージャーの言葉に、やでやでとスタッフは動き出す。さすがに更衣室だけでは手狭だから、各人が適当な場所で着替える。野郎ばかりだと遠慮はない。ホールで大胆に着替えているのもいる。で、着替え終えたクラウスは、ヒルダとハイネに拉致されていくらしく両腕を取られて外へ連れ出されていた。
「刹那、ちょっとこっち来いっっ。」
 サプライズ登場でスタッフを驚かせた刹那は、ディランディー兄弟の着替えを待っていたが、悟空の声に反応して、そちらに歩き出した。ホールの片隅まで引っ張られて、そこで悟空から、明日の親猫の様子について説明された。
「たぶん、明日は起きない。寝る前に、このクスリを三粒飲ませたら、そこから一日寝てる。」
「・・・そうか・・・」
「でも、明後日の朝には起きる。」
「すまない、明日の午後には出発する。」
「・・・そうか。ごめんな、ゆっくりできなくて。でも、毎日、飲ませないとマズイんだ。」
「わかっている。こちらこそ、感謝している。すぐに、ニールは完治する。」
「ああ、頼むぜ? 刹那。・・・俺ら、これからメシ食って帰るから、ママ、クスリ飲ませて寝かせておいてくれ。」
「了解した。」
 悟空からクスリを預かると、刹那は深く、悟空にお辞儀をした。ラッセの状態からして、ニールが危険な状態なのは解っていた。それを人外の漢方薬を使ってまで生き永らえさせてくれたことには感謝してもし足りない。
「いいんだよ。三蔵の女房なんだからさ。俺のおかんでもあるし。だから、いいんだ。気にすんなっっ。」
 悟空にすれば当たり前のことだ。だから、刹那に礼をされるほどのことだとは思っていない。これでもダメなら最終兵器が待っている。それは、さすがに勝手に使っていいとは思えないから、あまり使いたくない。
「刹那君、これ、夜食にしてください。それから、ニールのことは聞いてくれましたね? 」
 すっと横手から、タッパーがいくつか入った紙袋が出てきた。着替えもしていない八戒が立っている。ああ、と、刹那が紙袋を受け取る。
「今夜ばかりは、ニールも飲ませていいですから。」
 動かないように、スタッフは手配はしていたが、それでも久しぶりの接客は疲れたはずだ。ニールが明日起きないのは、八戒も予想している。ゆっくりといえるほどの時間ではないが、それでも家族水入らずで話をすればいい、とは思っている。
「刹那君、俺が運転手しますから、ニールたちが降りてきたら、声をかけてください。」
 ダコスタも着替えつつ、声をかけてくる。肉弾戦組は、とりあえず深夜営業の焼肉屋まで遠征して時間を潰すことにした。まあ、悟空は、あまり食べられなかったからというのもあるし、三蔵の機嫌取りの名目もあるが、本当のところは、寺に三人だけで過ごさせてあけたいからのことだ。



 久しぶりに顔を見たら、夏より、ひとまわり小さくなった印象だった。でも、顔色は悪くないし、刹那の顔を見て嬉しそうに微笑んだ顔は、刹那にとっても何よりの安心材料だった。キラと待機時間に打ち合わせはした。十日もしないうちに、親猫は宇宙に上がってくる。トランザムバーストの場所は、ティエリアが計算して指定した。そこなら、どこの陣営からも死角になってレーダーにも察知されない場所だ。そこで、トランザムバーストをすれば、確実に擬似GN粒子による細胞異常は完治できる。そう思うと、長くかかったな、というのが刹那の感想だ。まあ、夏まで地上で遊んでいたのだから、突貫工事で三ヶ月強で完成させたのだから、早いといえば早いのだが、それでもダウンされてしまった。親猫は、何も言わないが無理はしてくれただろうとは思う。たった一言、「かなりキツイ戦いだった。」 とは言ったが、それだけだ。乗り切って、無事に戻って、気を抜いたのかもしれない。だが、まだまだ眠ってもらっては困るのだ。刹那にとってもロックオンにとっても、他のマイスター組とフェルトのためにも、親猫は戻って来られる場所であってもらわなければならない。そこから刹那の未来は広がっているからだ。

 今回はダウンしても、すぐに再生治療を受けられる状態だったし、人類の科学力とは違うオリエンタルマジックな漢方薬のお陰で、親猫は、自分の前で微笑んでいる。だから、あと少し、待っていてもらうだけでいい。それさえ終われば、ダウンされることもなくなる。
 そんなことをつらつらと考えていたら、ロックオンのほうが先に戻って来た。ニールのほうは、着替えた衣装をランドリーボックスへ運んでいるとのことだ。ぶーとわざと膨れっ面で、刹那の女房は前に立つ。
「なんで教えてくれなかったんだよ? 」
「おまえ、ニールにバレない自信はあったか? 」
「・・う・・・・」
「そういうことだ。」
 ロックオンは、エージェントをやっていたから、そこそこの演技力だってあるのだが、どっこい、それよりさらに上手のニールに表情を読まれない自信なんてない。刹那だってない。だから、隠していた。まあ、そうだろうな、と、ロックオンは刹那の背後から腕を回して抱き締めつつ、苦笑する。
「俺は、明日の午後には飛行機で移動する。おまえは、あと二日、ゆっくりしていろ。」
「え? 一日だけなのか? 」
「このサプライズのためだけだから、二十四時間が限界だ。来月の頭に、ニールの治療をする予定が決まった。」
「うん、ありがとう、ダーリン。それなら、俺も一緒に戻るよ。準備の手伝いは全力でさせてもらう。」
 刹那も少しぐらい残れば、とは、ロックオンには言えない。ダブルオーの最終調整やチェックは刹那自身がするべきもので、ロックオンでは肩代わりできないからだ。携帯端末を取り出して、ティエリアにチケットの変更を頼もうと思っていたら、キラがやってきた。ロックオンは無視して、「ありがとう。」 と、刹那の両手を握って礼を言う。
「俺のほうこそ、感謝だ、キラ。」
「ううん、これで、ママは少し楽になると思う。どうしても、僕らでは刹那のようにはいかなくてね。」
 普段、同じ屋根の下で暮らしている悟空は、空を見上げているニールに気付いた。たぶん、その空の上に居る黒猫のことを考えているのだろうとは予想できる。いろいろと、年少組がニールに世話を焼かしていたが、それでも、やっぱり空を見上げるので、悟空がキラに相談したのだ。その結果、キラが組織に遠征して、刹那の地上降下の時間を稼いできた。
作品名:こらぼでほすと 十一月4 作家名:篠義