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こらぼでほすと 十一月4

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「あいつは度を外れた寂しがり屋なんだ。」
「うん、知ってる。それも、一番逢いたいと思ったのは、刹那だったんだよ。」
 ダウンして、これまでか、と、思ったニールが逢いたいと思ったのは、たぶん、ライルと刹那だったのだろう。ライルは、ちょうど降下の予定があって顔を合わせられた。刹那だけ顔を見られなかったのが気になっていたのだと思う、と、キラは、アスランと話し合ったことを刹那に説明すると、刹那もこくんと頷いた。
「あいつは、俺を自分の子供と勘違いしているからな。心配なんだろう。」
「そうだね。ママったら、刹那には甘いよね。」
 ふたりして笑いあったらライルも背後で笑っているし、ゆっくりと追いついてきたアスランも苦笑している。
「刹那、チケットの手配をやり直した。明日の午後ではなくて明後日の朝まで滞在できる。その代わり、そこからは強行軍のスケジュールだ。」
 きみの端末にデータは送った、と、アスランが携帯端末を、ゆらゆらと揺すり説明する。公共機関を使用すると、どうしてもタイムラグが生じるから、時間がかかる。そこいらを一挙解決する方法を使うことにした。明後日の朝、オーヴまでMSに同乗して、そこから軍のシャトルでオーヴ所有の資源衛星まで飛ぶ、そこからはティエリアに迎えの手配を頼んだから、たぶん、そこからも使えるMSにぎゅうぎゅう詰めで組織のドックまで帰還することになるだろう。これなら、公共機関で生じるようなタイムラグもないし、スピードもアップするから一日の時間を作れる算段だ。
「だが、アスラン。俺のおかんは、起きないと言われたが? 」
「今夜、漢方薬を飲ませれば明後日の朝には目が覚める。出発の挨拶ぐらいはできるはずだ。それに、一日くらい、刹那も身体を休めたほうがいい。」
 まあ、その後は地獄の強行軍だが、それはしょうがない。できれば、出発の挨拶を聞かせてやりたい、と、アスランも考えて、トダカに相談した。すると、ウヅミーズラブのメンバーにトダカから依頼してくれて、オーヴ軍のシャトル便乗の手配ができたらしい。ティエリアには、すでに連絡済だ。このスケジュールで動いてもらう。
「俺も、ママニールには過保護ならしいよ、刹那。」
 はははは・・・と、アスランは笑っている。年少組も、大人になって、少しずつニールのおかしいことに気付けるようになった。アスランも、じじいーずの心配を、ようやく理解した。だから、無理を承知の遠征も刹那たちの帰りの行程も納得してやったことだ。
「ということは、一日ぽっかりと空いたわけだ。どうする? ダーリン。」
 ロックオンも、そのほうがいい、と、思う。何も言わずに帰ったら、実兄は、やっぱり気にするだろうからだ。
「明日の朝から一日、おまえに付き合ってやる。それでいいか? 」
「そうだな。兄さんとデートするつもりだったんで、同じコースをダーリンにやってもらおう。ただし、時間は短縮で。」
「わかった。」
 あまり離れたくないだろうから、時間は短めに外出することにした。実兄は寝こけているのだから、少しぐらい亭主といちゃこらさせてもらっても罰は当たらない。
「刹那、布団は脇部屋に用意してる。それと、明日、出かけるんなら夕方に戻ってくれ。俺ら、バイトだからさ。」
「そんなに遅くはならないぜ、悟空。ちよっと出かけるぐらいだから。」
「まあ、そこいらは頼むぜ、ロックオン。」
 寝転けているとはいえ、水分補給やらはあるのだ。八戒が、そういう場合は顔を出しているが、夕方からは仕事だから様子は見て欲しい、と、悟空が依頼する。
「お待たせ。」
 そうこうしていたら、ニールが私服に着替えて戻って来た。なぜか、坊主も一緒だ。今夜は酔っていないから、誰も怖がらなくていい。
「家で食事すりゃいいのに。」
「たまには肉が食いたいんだ。おまえは、さっさと寝ろ。俺が帰って起きてたら容赦なく殴るぞ。」
「はいはい、寝ますよ。さすがに疲れた。」
「ママ、夜食があるから、ちょっとは食べなよ? それから刹那たちは明後日の朝に帰るんだってさ。」
 明後日? と、悟空の言葉に、ニールは聞き返して、ふわりと微笑む。どうやら、スタッフの予想は当たっていたらしい。
「ねーさん、俺とレイは、明後日の夕方までは寺に戻らないから、そのつもりでな。悟空、悪りぃーが、洗濯頼む。」
 シンとレイが揃って、声をかけてきた。とりあえず、刹那たちが出発するまでは、シンとレイも遠慮する。
「おう、まかせとけ。」
「さあ、そろそろ帰りましょう、ニール。坊主のほうは、僕らで機嫌取りをしておきますから。」
 さあ、と、八戒がニールの背中を押す。刹那は、親猫の右腕を掴まえて介助する態勢で、荷物はロックオンが預かる。着替えの終わったダコスタが、「クルマを店の前に持ってきますから。」 と、飛び出していった。





 ダコスタの運転で寺へ戻ると、やれやれと三人は居間に座り込む。風呂はタイマーで沸いているはずだから、刹那とライルの着替えを用意して、と、ニールが立ち上がる。
「刹那、まず風呂に入れ。湯加減の確認してくれるか? 」
「わかった。」
 勝手知ったるなんとやらだから、刹那も命じられれば、すぐに動き出す。ロックオンのほうは、じゃあ、俺が布団の確認を、と、こちらも勝手に動く。やることをやらないと、ゆっくりできないから、さっさと動くに限る。
「あんたも風呂に入れ、ニール。」
「え? 三人はキツイだろ? おまえさんたちが、先に入りな。俺が夜食の準備をしておくからさ。」
「まーまー、兄さん。ちょっと窮屈でもいいだろ? 家族三人で入ろうぜ。」
 用意されているのは、冷製のオードブルだから温めなおすものはない。たぶん、兄は、何か付け足してやろうと考えているだろうが、そんなものはいらない。できるだけ寝るまでの時間を、三人で過ごしたい、と、ライルも提案する。そういうことなら、と、ニールも一緒に風呂に入ることにした。


 刹那とライルが湯船でウプーと融けている間に、ニールは、さっさと上がって夜食の準備に取り掛かる。ライルのほうは軽食を摘んでいるが、刹那は、たぶん何も口にしていないだろう。この忙しい時期に、何をやらかしてんだか、と、内心でツッコミつつ、それでも嬉しい気持ちは抑えられない。純粋に逢いたかったのは間違いのないニールの本音だ。ダウンして、最後に謝ったのも刹那だった。よくよく考えたら、ライルを除けば一番長い時間を過ごしているのが刹那だ。それも、見かけは一桁年齢の十二歳の頃から、刹那の世話をしていたのだから、一番大きく成長していく時期を見ていたことにもなる。ニールにとって、刹那は大切な子供なのは、もう変えようがないらしい。ヒルダが選んでくれた衣装に身を包んでいた刹那は、惚れ惚れするくらいに男前で、よくここまで大きくなったなぁ、と、内心で感心していたのは、刹那には内緒だ。
作品名:こらぼでほすと 十一月4 作家名:篠義