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【サンプル】奇跡の起きないびっくり箱

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「で、なんでついてきてるんです?」
 小傘さんに別れを告げてから数十分後、私は守矢神社の境内に降り立ちました。何故か小傘さんと一緒に。
 おかしいな……いくら幻想郷とはいえ、さようならは流石に別れの挨拶であってるはずですが。
 私が振り返って小傘さんを見ると、小傘さんはまたしても唐突にその場に手と膝を付いた。
「師匠、お願いします! どうしても手品をできるようになりたいんです!」
「またそれですか。さっき無理だって言ったでしょう?」
「それでも! 無理を通して道理を引っ込めたいんです!」
「どんな諺ですか、それは……」
 困ったなあ……この様子じゃテコを使っても動きそうにない。かといって教えてどうにかなるようなものでもないし、いったいどうしたものやら。
「何をやっているんだい、早苗?」
「なんだか騒がしいねえ」
 頭を悩ませている私に近づく影が二つ。
「神奈子様、諏訪子様」
 守矢神社が誇る二柱の神様が騒ぎを聞きつけてやって来た。
 お二人とも私と小傘さんの様子を交互に見て、その後仲良く首をかしげた。
「神社の境内で地面に頭をこすりつけてるなんて、ずいぶんと熱心に祈りを捧げているようにも見えるが……どうもそういうわけではなさそうだな」
 と神奈子様。
「どうしてこんなことになってるのか、まずは早苗から説明してもらおうか」
 と今度は諏訪子様。
 うう、お二人の手を患わせるのは気が引けますが、やむを得ません。ここはお二人になんとかしていただきましょう。
「実は……」
 かくかくしかじか。私は先ほどの人里での出来事を簡単に説明した。
「マジックショーってお前……」
「まあ、早苗らしくていいんじゃん? 信者が集まりさえすればそれでいいんじゃないかな」
 あるぇー? なんだかお二人に妙に呆れられている。そんなにダメかな、マジックショー。我ながらまあまあのアイディアだと思ったんですけどねえ。
「とりあえずマジックショーについてはおいといて、次はそちらの娘に話を聞こうか」
 神奈子様は私が説明している間にも律儀にずっと土下座をしたままでいた小傘さんに目を向けた。小傘さんはそれを受けて顔を上げる。おでこにちょっと砂が付いてる。
「まずは名前から聞こう。お前の名はなんという?」
「はっ、私の名前は多々良小傘と申します!」
「そうか。では、多々良小傘よ。お前はどうしてそこまで手品がしたいのだ?」
 言われてみれば、そこを聞くのをさっぱり忘れていた。
 小傘さんがこんなにも必死になる理由……いったい何でしょうか。