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はいいろのゆび

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色んな花を植えてみた。しかし、どれも芽は出ても日に日に生気を失っていき枯れて
しまった。やっと蕾のつくところまで成長しても、蕾のまましなだれてしまいその度に
菊は兄の膝の上で泣いていた。

『大丈夫アルヨ、菊。花を咲かせるのは誰だって難しいアル。
でも愛情をかけて育てた分、綺麗な花を咲かせてくれるアルヨ。菊なら絶対出来るアル。』

そんな兄の言葉を胸に、菊は諦めずに花を植え続けた。
そして少し暑くなってじめじめした初夏、早朝に世話をすることが日課となっていた菊は
先日蕾をつけた花を見にいった。兄の大きな庭の一角にある、小さな自分だけの希望の
つまった空間。そこには、茶色と緑の他に青紫があった。朝日をあびて、地面から太陽に
向かって力強く咲いているその花を見て、菊はほぉーっと感嘆の息を吐いた。
触れないように細心の注意を払いながら、花びら一枚一枚を食い入るように
見つめていると、下の方から自分のものではない息遣いが聞こえた。
視線をしたに下ろすと、花の根元に白い綿あめのような塊が、葉に隠れるようにして
膨らんだり縮んだりしているのが見えた。




「それが、ポチくんとの出会いです。あの時植えていた花の名前は『ブローディア』
でした。花言葉は、『守護』。もしかしたら、ポチくんはあの花々が咲くように
護ってくれていたのかもしれません。」

そう言って菊は、はんなりと笑った。
アーサーはその表情に思わず魅入り、自分が運転中だということも忘れ菊の横顔を
見つめる。

キュワン!

「おっと!」

ポチくんの鳴き声に我に返ったアーサーは、急いでブレーキを踏み前の車との衝突を
何とか逃れた。

「本当に賢い犬だな。」



作品名:はいいろのゆび 作家名:Sajyun