はいいろのゆび
「ブラギンスキ?」
その名前が出た瞬間、3人の間に緊張が走る。
「お前らも知っての通り、ヤツは緑の指の持ち主であるにも関わらずその力を
使って世界を独占しようとしているアル。公にはなっていないアルが、ヤツの勢力は
徐々に拡大していってるアル。にもかかわらず、ここ最近ヤツの情報は全くと
言っていいほど耳にしないアル。今まであんなに派手な事をしていたヤツが急に
こんなにも大人しくなるなんて、おかしいと思わないアルか?」
「確かに、それは俺達も思っていたところだ。
それで?お前の要望は何だ?」
「相変わらず生意気でムカツク男アルね…。
今知ってるヤツの情報を全部我に教えるヨロシ。」
「はぁ?大将様が知らない情報を俺たちが知ってるわけないだろ。」
「ごまかしても無駄アル。我を舐めるんじゃねぇアルよ。
お前たちの情報網とその処理能力はちゃんと知ってるアル。」
「あらあら、随分と俺達も高く買ってもらったもんだねぇ。
でも、王大将だってあちこちに情報網を張り巡らしてるはずでしょ?
何でわざわざ俺達に聞くの?」
「どうも我の密偵は敵に感づかれてるらしく、なかなか尻尾が掴めねぇアル。
でも、ヤツをこのまま野放しにしておくわけにもいかねぇアルから今お前たちが
知ってる情報を全部我に教えるヨロシ。」
燿はこれ以上いう事は無いと言った表情でアーサーとフランシスを見る。
観念したフランシスが昨日食堂でアーサーが言ったことをそのまま燿に伝えた。
「俺が知ってるのはこれで全部だ。」
「その能力者の守護霊も得意種も分からないとなると、捜索は難しいアルな。」
「それに、その人物は能力者であるにもかかわらずHGFの名簿に載っていない。
最悪、もしかしたらもうあちら側についてるかもしれない。」
HGFの名簿に載っていないだぁ?どうりで、登録者名簿から探しても見つからない
わけだ。大抵の緑の指を持つ人間は、放っておくとその力を制御できず家を草木
だらけにしてしまい、困った家族がHGFの学校に入れその制御法を学ぶ。
HGFに入っていなかったら入ってなかったで、そいつの家は草木でボーボーに
なっているはずだ。
「分かったアル。では、引き続きお前たちにはブラギンスキに関する情報を集めるアル。
そして少しでも何か分かったら、すぐ我に知らせるヨロシ。」
王燿の部屋を出て、アーサーとフランシスは自分の部屋に向かう。
「てめぇ、何であのことをもっと早く言わなかった?」
「え?何のこと?」
「ブラギンスキが探してるヤツがHGFの名簿に載っていないことだ!」
「あぁ。」
「あぁ、じゃねぇ!お前、そのことが分かってったらもっと早く…!」
「ん?どうした、アーサー?」
突然、言葉を切ったアーサーにフランシスが呼びかける。
「何か、嫌な予感がする。今すぐガーデンに行かねぇと…。」
「え?ガーデン?」
アーサーは困惑するフランシスを置いて走って自室へ向かった。