はいいろのゆび
『菊、どうしたアルか?今日はお庭で遊ばないアルか?』
『わたし、もうおそとであそびません。』
『どうしたアルか?菊はお花大好きアルのに、何かあったアルか?
にーにに話してみるヨロシ。』
『わたしがいると、おはなさんがしんじゃうんです。』
『どういう事アルか?』
『わたしがさわると、おはなさんたちのげんきがなくなって、しおれてしまうんです。』
『えっ』
『わたしは、おはなさんを、からしてしまうんです。だからもう、おそとにはでません。』
『…菊、よく聞くアル。花は人を選んで咲くアルヨ。
我達が咲かせてるわけじゃないアル。菊の指は花を枯らすもの何かじゃないアルヨ。』
昔、本当の兄のように自分を育ててくれた人を思い出す。
彼と同じようなことを言う目の前の青年に、言葉が出ない。
悲しいような、悔しいような、気持ちの渦に飲み込まれる。
そして、やっとの思いで口を開いた。
「…では何だと言うのです?」
翡翠の瞳が菊を見上げ、視線が交わる?
「お前の指は、花を愛する綺麗な指だ。」
瞬間、菊の顔が真っ赤に染まった。
「指の力なんかなくたって、ここにはこれがあるだろう?」
そう言ってアーサーは立ち上がると、ジョウロをちらつかせた。
菊はフッと頬をゆるめ、ふわりとほほ笑む。
「分かりました。貴方の要望、聞き入れましょう。」
「へ…」
「秘書兼雑用ですよね?私に出来ることであれば、やりますよ。
こんな古めかしい家に来るくらいです。よっぽど、働き手が足りないのでしょう?」
そう言って笑う菊にアーサーはたじろいく。
「あ、あぁ。それじゃあ、頼む…菊。」
「はい、アーサーさん。」