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【とある】とある神秘の氷彫刻師【①】

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#1 はじまり



「ここが学園都市か・・・」
一人の少女が空港の前に立ちすくんでいた。
少女の名前は水野凜。
水野は今日、初めてこの【学園都市】に降り立った。
それもそのはず。
水野は昨日まで遠いアメリカにいたのだから。

ものごころがついたときには両親や親戚はもういなかった。
かといって捨て子でもなかった。
彼女はたったひとり生き残った。
不幸な事故で、親戚中が集まる正月に火事が起きたそうだ。
逃げる余地もなくそこにいた人は全員死亡、となるはずだった。
彼女は己の力を使い火を消した。
しかも、全員の死亡が確定した後に自分だけ助かったのだ。
なぜ他の人を助けなかったのか?
なぜ自分だけ助かったのか?
なぜ自分だけ死に損ねたのか?
いくら聞いても、いくら悔いても、答えなんて分からないし、過去はもう元には戻らない。

彼女はまだ幼かった。
大人たちの心ない言葉ひとつひとつがナイフのように彼女に突き刺さった。
だから彼女は逃げたくなって、何もかも捨てたくたくなって、
遠い異国に降り立ったのだ。

@               

           

異国の地で水野は氷の像を作った。
きれいなものや美しいもの、時には醜いものまで彼女は注文通りに彫った。
そしてそれはホンモノだと認められてスターや国会議員、貴族の血筋を引く人々にまで高価な値で頼まれた。
はじめはこの美しい像をみて元気を出してもらうことが、本当にうれしかった。
しかしそれはだんだん【豊かさの象徴】としか見られなくなった。
自分で金を稼いで、一般的な会社員の何倍もの年収を手に入れた今、どうしてこの地いる必要があるのだろうか?
だったら、もう一度やりなおしに帰ろう。
帰って、またあらたな道を歩もう。
私の故郷
ふるさと
に―――。

彼女は『教育』というものを受けたことがなかった。
だから一般的に必要な勉学の知識を知らない。
だったら日本の学校に通うためには知識が要る!
水野は日本語を学び、義務教育の過程でいままでの自分が学ぶべき知識と、それ以上のものを、頭の中に叩き込んで、そうして日本に戻ってきた。

そして完璧だと思って日本のエライヒトと連絡を取ったときに、驚いた。
「学園都市?」


    
『あなたは超能力を使えますか?』
電話をして、日本に戻りますから手続きをお願いしただけ、のはず。
『もう一度聞きます。あなたは超能力を使えますか?』

『はっ?ちょう、の・・・なんですか、それ?」』
『はぁ。』
電話口で相手がため息をついた。

『FAXでデータを送っておきますから読んでください。まあ無能力者
レベルゼロ
でも大丈夫ですけどね。でもあなたは帰国して、学園都市で教育を受けることは出来ますから。では』
切れた。

「はぁ?超能力だって?」
馬鹿にするな。
そんな非科学的なもの、あるわけけない。
でも冗談にしてはナンセンス。
ありえない。

水野ははっとした。
もしかしたら私のこの力を超能力と呼ぶんじゃ・・・。
少女はあたりに水をぶちまけた。
そして、手をかざす。
小さくてかわいいリスを想像してして、意識を集中した。
水が徐々に浮き上がり、ゆれて形を造る。
そして自分のイメージ通りの動く水の【像】が現れた。
きっとこれが、超能力。
水野は確信した。
さっきの電話をリダイアルして、ひとことだけ告げる。
『超能力、使えるよ。』
電話を切った。

「上等じゃんか。」
彼女の新しい【道】が見えた。