東方南十字星 the SouthernCross Wars七
第七戦:紅白の巫女と緑の工作兵
神社で待機していた霊夢と、新たに対戦相手に選ばれた羽田が鳥居の奥、つまり境内で向かい合って
いる。他の者は全員遠くから見下ろすような形で岡島の合図を待つ。
「改めて、羽田総四郎です」
「博麗霊夢よ」
火花を散らす程ではないものの、お互い若干警戒気味だろうか。
見つめ合ったまま一歩たりとも動かない。まあ、何より岡島がもったいぶっているだけなのだが。
「う~し、んじゃ・・・・・・・・・・・・・・・・・・始め!!」
どこから取り出したのか、彼自作のメガホンで開始を宣言する。
まず先手を切ったのは霊夢。
何やら札の形をした弾幕を高速で展開しつつ羽田を中心に左へ回る。
対する羽田も右へ斜め後ろに飛んでかわす。が、
ヒュンッ――――――――――
「えっ―――――――?」
一発羽田の頭を掠めた。
ヒュンッ、ヒュヒュンッ
その札の形をしたショット(仮称)は、避けた羽田へ向かって方向転換した。
要するに誘導弾、いわゆるホーミング弾を霊夢は放ったということになる。
「ちょ、いきなりホーミング弾飛ばすのってありですか!?」
避けつつ無駄口を叩く羽田。
「よそ見してると当たるわよ!?」
さらに追い討ちをかけるようにもう一度同じショットを放つ。
先ほどと全く同じ弾だと認識した羽田は、
「二度も同じ手には乗りませんよ!」
次は羽田が霊夢を中心にして回りだした。
大周りにできるだけ速く走る羽田に対し、進行方向を予測し次は霊力で創り出した針を飛ばすが、
先ほどと違い直進するショットを放ったため斜め前への滑り込みの伏せですべてかわされる。
だがそのほんのわずかな時間に、速度とホーミング性能が高い札弾幕(仮称)は、伏せた羽田の頭上を
通り越し
バシバシバシ―――――!
「痛ッ!?」
突然の伏せにより、ロックオンしていた羽田という目標を見失った青い札は撃った本人である霊夢へと
直撃した。
「・・・・・・・・・まさか本当に引っ掛かるとは思いませんでしたよ、霊夢さん」
その様子を見ていた上空の観客たちは、
「なんだ?あいつ、今何した?」
「へっ・・・・・・・・・羽田もやるようになったやないか」
「何があったんだ?」
井野村も羽田や霊夢を交互に見ていただけのため、銃弾の一発も撃っていない羽田がどのようにして
攻撃したのかは分からなかった。
「アイツにはな、以前オレが空軍に所属しとったころの話を何度がした。んでそのうち、オレ流の
ミサイル回避のススメを伝授したんや。ヤツはそれを実行しただけや」
「アンタ、一体何を――――――!?」
霊夢も同じ事を聞いているようだ。
「簡単です。あなたが放った弾幕・・・・・・・・・え~と、名前はなんと?「『ホーミングアミュ
レット』よ」そうですか、そのホーミングアミュレットは、速さ、誘導性、共に優秀です。ですが、
その性能が裏目に出てしまった、と言えば分りますか?」
「具体的にはな、戦闘機のミサイルっちゅうモンは、速度とホーミングがかなりキツイんや。
だが、機敏性が高い機体を使えば回避は容易。(あくまで吉本だから簡単なので、実際はそうとは
限らない説明が多いです)当たる直前にクイッと動けばあとは真っ直ぐ飛んでく、かと思いきや、
当たる直前まで誘導しとったミサイルは、右旋回してれば右に、左旋回してれば左に飛んでく。
それはどうやら、QAAMでも同じみてぇだ。いつもどーりに避けることで一難回避できる。
ただ、誘導性がハンパないからのう。後ろに回り込んでもまた追尾しなおしてくるぐらいやから、
その分航続距離も若干長いし厄介。そこで、今回の羽田の戦法が登場する」
吉本が説明を一旦区切ると、岡島は下を見つめ直す。相変わらず吉本と同じくらいに舌が回る羽田は
まだ説明し、霊夢は聞いているのか考えているのか分からない表情だ。
「再度避け直すんですよ。貴女自身と、貴女の放った誘導弾で僕を挟み込むようにして。
僕を見失った札は、再度索敵するまで多少のラグが生じます。その直進時間を利用し、ほとんど動いていない貴女に向かわせました」
「・・・・・・・・アンタが初めてよ。弾幕ごっこで撃ったモノを返すなんてね」
「それはどうも。ですが、貴女もまさか、これで終わりなんて言いませんよね?」
「あたり前じゃない」
挑発気味に言う羽田に対し、まだまだ余裕ありげな霊夢。
上の見物人たちはというと、吉本の説明を聞き終えて再び見下ろす。
すぐに再戦が始まったようだ。
「せいっ!!」
羽田はまず米軍が採用しているM67破片手榴弾を3個投げつける。
霊夢はまず結界を張り、念には念を押してすべてかわす。
彼女も羽田の手榴弾の威力は、つい最近羽田本人から聞いていたし、実物による検証もしていたため、
爆発範囲はある程度は把握している。それで油断したのか、わずかに避けた(グレイズした)だけ
なのが裏目に出、
ズド――ン!!
ズドド――ン!!
「きゃっ!?」
結界を張っていたため無傷では済んだものの、つい声を上げてよろける。
M67破片手榴弾。それは、名前の通り中に硬質鉄線が仕組まれているため、爆発すれば半径5m内に
いる人間は致命傷を負い、細かい破片は約230メートル先まで飛ぶこともある程の強力な爆弾であった。
幸い彼が使った物は特別仕様で威力は抑えてあるため、相当な至近距離でなければ大きな痛手を負う事
はない。だが、爆弾を知らない大半の幻想郷住民たちには物騒極まりない。霊夢自身、結界を張りつつ
回避行動を取った事で無傷で済んだのだ。
爆発の影響で多少粉塵が上がるが、霊夢の放つ針「パスウェイジョンニードル」は羽田目掛けて一直線で
向かってくる。多少掠めたが全てかわし、そこへ9mm弾を撃ち込む。
すると霊夢は上空へと飛び上がった。
「て貴女も飛ぶんですか!?」
「幻想郷(ここ)では当たり前よ!」
語尾を若干強く発音し数枚の札を高速で飛ばす。羽田はバックステップで避けるが、今度は最後の一枚が命中したようだ。
その後も霊夢は同じような攻撃を繰り返し、羽田は避け、そして撃つ。だが確実に彼のスタミナも徐々に減ってきていた。
「なら・・・・」
誰に聞かせるでもなく彼は呟き、またどこから取り出したのか、小さい箱のような物を幾つか手早く設置する。上の見物人は何か思い浮かんだかなどと考えていた。その内三人は、次の羽田の行動などたかが知れていた。
「でや!」
今さっき仕掛けた物は一体何だったのか、間抜けそうな声を出して上空へ多めに投げたのはまだ安全ピンを抜き、ある程度手中にとどめておいたM26A1。
これは今でも自衛隊が使用し続けているため、羽田が陸自時代の時の名残であろう。
だが、手榴弾は空中の敵に対して使用する事を視野に入れていない。あくまで地上の標的を狙うのが本来
の役目である。
それを実証するかのように霊夢はとても余裕そうに避けるが、羽田はそれが狙いだった。
上に投げたM26が爆発し、霊夢がそちらに注意を逸らすとほぼ同時に9mm弾を撃ち込む。
神社で待機していた霊夢と、新たに対戦相手に選ばれた羽田が鳥居の奥、つまり境内で向かい合って
いる。他の者は全員遠くから見下ろすような形で岡島の合図を待つ。
「改めて、羽田総四郎です」
「博麗霊夢よ」
火花を散らす程ではないものの、お互い若干警戒気味だろうか。
見つめ合ったまま一歩たりとも動かない。まあ、何より岡島がもったいぶっているだけなのだが。
「う~し、んじゃ・・・・・・・・・・・・・・・・・・始め!!」
どこから取り出したのか、彼自作のメガホンで開始を宣言する。
まず先手を切ったのは霊夢。
何やら札の形をした弾幕を高速で展開しつつ羽田を中心に左へ回る。
対する羽田も右へ斜め後ろに飛んでかわす。が、
ヒュンッ――――――――――
「えっ―――――――?」
一発羽田の頭を掠めた。
ヒュンッ、ヒュヒュンッ
その札の形をしたショット(仮称)は、避けた羽田へ向かって方向転換した。
要するに誘導弾、いわゆるホーミング弾を霊夢は放ったということになる。
「ちょ、いきなりホーミング弾飛ばすのってありですか!?」
避けつつ無駄口を叩く羽田。
「よそ見してると当たるわよ!?」
さらに追い討ちをかけるようにもう一度同じショットを放つ。
先ほどと全く同じ弾だと認識した羽田は、
「二度も同じ手には乗りませんよ!」
次は羽田が霊夢を中心にして回りだした。
大周りにできるだけ速く走る羽田に対し、進行方向を予測し次は霊力で創り出した針を飛ばすが、
先ほどと違い直進するショットを放ったため斜め前への滑り込みの伏せですべてかわされる。
だがそのほんのわずかな時間に、速度とホーミング性能が高い札弾幕(仮称)は、伏せた羽田の頭上を
通り越し
バシバシバシ―――――!
「痛ッ!?」
突然の伏せにより、ロックオンしていた羽田という目標を見失った青い札は撃った本人である霊夢へと
直撃した。
「・・・・・・・・・まさか本当に引っ掛かるとは思いませんでしたよ、霊夢さん」
その様子を見ていた上空の観客たちは、
「なんだ?あいつ、今何した?」
「へっ・・・・・・・・・羽田もやるようになったやないか」
「何があったんだ?」
井野村も羽田や霊夢を交互に見ていただけのため、銃弾の一発も撃っていない羽田がどのようにして
攻撃したのかは分からなかった。
「アイツにはな、以前オレが空軍に所属しとったころの話を何度がした。んでそのうち、オレ流の
ミサイル回避のススメを伝授したんや。ヤツはそれを実行しただけや」
「アンタ、一体何を――――――!?」
霊夢も同じ事を聞いているようだ。
「簡単です。あなたが放った弾幕・・・・・・・・・え~と、名前はなんと?「『ホーミングアミュ
レット』よ」そうですか、そのホーミングアミュレットは、速さ、誘導性、共に優秀です。ですが、
その性能が裏目に出てしまった、と言えば分りますか?」
「具体的にはな、戦闘機のミサイルっちゅうモンは、速度とホーミングがかなりキツイんや。
だが、機敏性が高い機体を使えば回避は容易。(あくまで吉本だから簡単なので、実際はそうとは
限らない説明が多いです)当たる直前にクイッと動けばあとは真っ直ぐ飛んでく、かと思いきや、
当たる直前まで誘導しとったミサイルは、右旋回してれば右に、左旋回してれば左に飛んでく。
それはどうやら、QAAMでも同じみてぇだ。いつもどーりに避けることで一難回避できる。
ただ、誘導性がハンパないからのう。後ろに回り込んでもまた追尾しなおしてくるぐらいやから、
その分航続距離も若干長いし厄介。そこで、今回の羽田の戦法が登場する」
吉本が説明を一旦区切ると、岡島は下を見つめ直す。相変わらず吉本と同じくらいに舌が回る羽田は
まだ説明し、霊夢は聞いているのか考えているのか分からない表情だ。
「再度避け直すんですよ。貴女自身と、貴女の放った誘導弾で僕を挟み込むようにして。
僕を見失った札は、再度索敵するまで多少のラグが生じます。その直進時間を利用し、ほとんど動いていない貴女に向かわせました」
「・・・・・・・・アンタが初めてよ。弾幕ごっこで撃ったモノを返すなんてね」
「それはどうも。ですが、貴女もまさか、これで終わりなんて言いませんよね?」
「あたり前じゃない」
挑発気味に言う羽田に対し、まだまだ余裕ありげな霊夢。
上の見物人たちはというと、吉本の説明を聞き終えて再び見下ろす。
すぐに再戦が始まったようだ。
「せいっ!!」
羽田はまず米軍が採用しているM67破片手榴弾を3個投げつける。
霊夢はまず結界を張り、念には念を押してすべてかわす。
彼女も羽田の手榴弾の威力は、つい最近羽田本人から聞いていたし、実物による検証もしていたため、
爆発範囲はある程度は把握している。それで油断したのか、わずかに避けた(グレイズした)だけ
なのが裏目に出、
ズド――ン!!
ズドド――ン!!
「きゃっ!?」
結界を張っていたため無傷では済んだものの、つい声を上げてよろける。
M67破片手榴弾。それは、名前の通り中に硬質鉄線が仕組まれているため、爆発すれば半径5m内に
いる人間は致命傷を負い、細かい破片は約230メートル先まで飛ぶこともある程の強力な爆弾であった。
幸い彼が使った物は特別仕様で威力は抑えてあるため、相当な至近距離でなければ大きな痛手を負う事
はない。だが、爆弾を知らない大半の幻想郷住民たちには物騒極まりない。霊夢自身、結界を張りつつ
回避行動を取った事で無傷で済んだのだ。
爆発の影響で多少粉塵が上がるが、霊夢の放つ針「パスウェイジョンニードル」は羽田目掛けて一直線で
向かってくる。多少掠めたが全てかわし、そこへ9mm弾を撃ち込む。
すると霊夢は上空へと飛び上がった。
「て貴女も飛ぶんですか!?」
「幻想郷(ここ)では当たり前よ!」
語尾を若干強く発音し数枚の札を高速で飛ばす。羽田はバックステップで避けるが、今度は最後の一枚が命中したようだ。
その後も霊夢は同じような攻撃を繰り返し、羽田は避け、そして撃つ。だが確実に彼のスタミナも徐々に減ってきていた。
「なら・・・・」
誰に聞かせるでもなく彼は呟き、またどこから取り出したのか、小さい箱のような物を幾つか手早く設置する。上の見物人は何か思い浮かんだかなどと考えていた。その内三人は、次の羽田の行動などたかが知れていた。
「でや!」
今さっき仕掛けた物は一体何だったのか、間抜けそうな声を出して上空へ多めに投げたのはまだ安全ピンを抜き、ある程度手中にとどめておいたM26A1。
これは今でも自衛隊が使用し続けているため、羽田が陸自時代の時の名残であろう。
だが、手榴弾は空中の敵に対して使用する事を視野に入れていない。あくまで地上の標的を狙うのが本来
の役目である。
それを実証するかのように霊夢はとても余裕そうに避けるが、羽田はそれが狙いだった。
上に投げたM26が爆発し、霊夢がそちらに注意を逸らすとほぼ同時に9mm弾を撃ち込む。