東方南十字星 the SouthernCross Wars七
一見簡単な方法だが、回避には見る事がとても重要、逆に言えばそれ以外への対処に若干の狂いまたは遅れが出てしまう。そこへ銃弾と言う秒速約300mの飛翔体が突っ込んでくれば、避けるのは難しい。
よって、
「痛っ!?」
左脇腹に直撃する。
そして当たった箇所を強めに擦りつつ降りてくる。
余談だが、実弾と訓練弾、ダメージは当然実弾の方が上。ただし、撃たれた瞬間の痛みはと言うと、
「痛いじゃないの!!もう少し加減しなさいよ!!」
痛みによる涙を浮かべながら霊夢が文句を言う程痛い。要は実弾よりも上。
「そんなこと言われましても・・・・・・」
銃はそこまで万能ではない。
さすがに三人も彼の行動には少し驚いたようだ。
そこで霊夢は擦るのを止め、つい最近来たばかりの四人にとっては初めてであり、幻想郷の妖怪達、特に霊夢の知り合いにとっては彼女の代名詞ともなる大技、スペルカードを放った。
「霊符『夢想封印』!」
「「「え?」」」
「なんや?ってうぉあ!?」
吉本の目線の先、とはいえ全員が向いている方向だが。
そこには、霊夢が光る球状のエネルギー弾を従えた、かと思いきや羽田へ向けて連続発射した。
ギュン!ギュギュン!
ギュゥゥン!!
合計8の光弾が殺到する。
「ちょ―――――!?」」
ドーン!ドーン!
ドカーン!!
ドガガーン!!
巨大で高速、そして誘導性も高い光には、ここまで粘ってきた彼にも札の時のように対処出来ずに、小さいが強力な爆風を浴びてしまう。
ここまで暴れておいて境内がまだ無傷に等しいのは、あらかじめ保護のための札を霊夢がばら撒いて置いたからである。
ようやく光と粉塵が晴れた所には、ボロボロになった迷彩を着、ヘルメットを脱ぎ捨てている男がいた。
当然ながら羽田である。所々負傷し息も切らしているが、表情だけはまだまだ余裕そうだ。
ここでようやく、彼の本領が発揮される。
「今度はこっちの番ですよ!」
それを聞いた霊夢はすかさず身構えるが、時既に遅し。
「ぽちっとな」
某アニメの敵キャラクターの真似なのかは不明だが、内ポケットの中に仕舞ってあったお手製のリモコンのボタン・・・・・・・・・ではなくレバーをカチッと下に入れる。
次の瞬間、
バババン!!
バーン!バンバン!
ババン!バーン!!
周りに仕掛けてあった箱、もとい指向性地雷Y10インパルスが破裂し、内部に入っていた小さい球体による弾幕が形成される。
しかもそれは霊夢がほぼ中心に来るよう向けてあり、前後左右から殺到する弾幕により袋叩きにされた。
これが今の羽田にとって最後の隠し玉である。
「あがっ――――――!!?ぐっ・・・・・・・!!」
一瞬の出来事であった。
Y10が破裂した直後に体中に小さく、それでも鋭い衝撃が駆け巡る。
出血していないのは、弾幕ごっこ用(正式には訓練用)にあらかじめ改造しておいたからだ。
仮に実戦と同じ物を使えば、文字通り蜂の巣になる。
それは仕掛けた本人である羽田も、伏せなければもろに食らってしまう。
ほんの一秒程ではあるが、高密度の弾幕は霊夢と言う人間には十分に効いた。跪くような体制になりながらも、まだ動き出そうとしている。が、呼吸も大分乱れており、とても歩けそうに無い。
羽田はそんな霊夢のそばに歩み寄りながら9mm拳銃を取り出し、頭に突き付け、決め台詞のような事を言う。
「チェックメイトです」
それを聞いた瞬間、霊夢は負けを認めガクッと項垂れた。
そのころ、上空では・・・・・・・・。
試合終了の合図も掛けずに吉本とPSPで遊んでいる岡島がいた。
その二人の飛行ユニットを、井野村は遠隔操作で停止させて森へ落とした。
「「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・!!?」」
悲鳴が聞こえなくなった後、井野村は二人のそばへ紫と一緒に降りてくる。
「お前の勝ちだ。なかなかの戦いぶりだった」
「ありがとうございます。でも、さすがにやりすぎましたかねぇ?」
褒め言葉を掛けてくる井野村に対し質問を投げかける。
返答は、彼の代わりに治療の札を霊夢に貼っている紫が答えた。
「どの道、あなたは勝った。それには変わりないわ」
相変わらず扇子を手にしている紫は微笑んでいる。
「お前が闘っていた時、多少ではあるが彼女の実力について紫から聞いていた。この幻想郷の中では事実上最強の人間らしい」
「現に私もやられたわ。にしても、あの夢想封印を食らっておきながらよく平気ねぇ・・・・・?」
紫は、羽田の着用している迷彩服に興味を示したが、羽田は、
「これに防御効果なんてほとんどありませんよ。まぁ、一番の理由は陸自の頃から訓練していたからでしょうね」
羽田は軽く笑みを返し、自分の仕掛けたトラップの回収作業に入った。