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少しの間

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「え?」

織姫は自宅の部屋で一瞬近しい人の気配の変化を感じベランダを振り返り外の様子をうかがった。

一瞬、一護の霊圧が変化したような気がしたのだ。
ぷつりと、まるで消えてしまったかのように感じた。

しかし、すぐに一護の気配を感じることができた。
気のせいだったのだろう。
外は日が沈み、星々が瞬いていた。

少しの間織姫は外をすっと見つめ様子をうかがったが何も変化がなかった。

やはり、気のせいだったのだろうと心配性な自分に苦笑しながら少し首を振り、勉強でもしようと机に向かった。






しばらく織姫は机に向かっているとはじかれる様に顔を上げた。

一護の霊圧がすぐそばに感じたからだ。

織姫は急いで立ち上がり、ベランダに向かった。

勢いよくカーテンを開けるとちょうど一護がベランダに降り立ったところであった。

その姿は死覇装であった。

どうしたのだろうか?

織姫は一護の様子が普段と違う気がし胸騒ぎがしたがいつものように明るく話しかけた。

「こんばんは!どうかしたの?一護くん」

一護はそんな織姫の様子に少し口元笑みを作った。

そんな一護の様子に織姫は不安を覚えた

「なにかあったの?死神化してるけど…」

「ああ…」

「…一護くん…?」

「あのな、織姫」

「うん?」

一護は首を傾げる織姫を見つめながら告げた。


「俺、死んだんだ」





「え…?」



織姫は自分の心臓が止まってしまったのではないかとおもった。






一護はあまりの衝撃に言葉もない様子の織姫に妹たちを庇って自分が死んだことを告げた。



言葉もない織姫に別れを告げる一護。
織姫は一護の言っていることが意味が分からなかった。
いや、わかりたくなかった。

しかし、一護の静かな目に見つけられ、じわじわと現実味をおじてきてカタカタと体が震えてきた。

織姫の瞳から無意識に涙がこぼれる。
イヤ、イヤと首を振る。

さっきまた明日って分かれたばかりなのに、今までの生活が出来ないなんて理解できなかった。

二人の間に明確な言葉をつけられるものはなかった。
織姫は一護が好きだ、誰よりも、自分の世界だと思っている。
一護は織姫の気持ちに少なからずも気がついていた、別にいい加減な気持ちでいたわけではない。
織姫を大切に思う気持ちに偽りはない。
まだ先があると思っていたし、これからもずっと同じ生活が続くと思っていた。

傍にいて当たり前に思っていた。

まさか、こんな事になると思っていなかった。

こんな形で自分の気持ちを再確認するとは予想もしていなかった。


泣き崩れて、言葉もない織姫を慰め、一護は織姫に語りかけた。

「ごめんな、泣かないでくれよ」
「っ・・・うっ・・・無理だよぉ・・・っ」
織姫は息を詰まらせながら言い返した。
「だよなぁ・・」
なにかその様子が可愛くて思わず笑ってしまった。

「なんで・・・笑うのぉ・・・っ」

「ごめん」

「イヤだよぉ・・・っ・・・うっ」

「・・・・・ごめんな・・・でも、後悔してねーんだ・・・」
泣きじゃくる織姫を見つめながらはっきりといった。
「っ」
その瞳に宿る覚悟を見て息をのんだ。


「あいつらを護れた」


そんな澄んだ瞳で言われてしまえば織姫は何も言うことはできなかった。

「っう・・うっ」

自分のために涙を流してくれる織姫が愛しくて仕方がなかった。
一護はそっと織姫の頬に手を添えた。

「でも、これからが心配だ・・・あいつらもだけど、お前も・・・」
「っ?」
「これからも護っていくつもりだったんだ・・・」

涙を流す織姫を見て一護は自分の心配が憂慮ではないと思った。

「い、一護くん・・・?」

「うん・・・」
一護は静かに頷き、沈黙が落ちた

「?」
そん様子に織姫はくびを傾げる。

「きちんと…きちんと言葉にしておけばよかったと、思ってる。」
「なにを?」
「自分の気持ちを。・・・・・織姫・・・お前もずっと護っていきたかったんだ」


一護は生前に口にしなかった思いを静かに告げる。


「一護くんっ!」
「ごめんな、織姫・・・お前の未来にいたかった」

一護からの言葉に織姫の心は震えた。
誰よりも大好きな言葉に心は歓喜し、これから同じ時を歩めない事実に心が張り裂けそうだった。
そして、そんな切なそうな瞳をする一護を見ていられなくて
自分を責めるような目をしてもらいたくなくて、織姫も己の思いを一生懸命告げる。

「っ!・・・うっ・・・わ、私も、ずっと、一護くんの隣にいたかったよっ」

そんな織姫が愛しくて、その頬を撫でながらその大きな瞳から流れる涙をぬぐう。
いくら拭っても拭っても止まらない涙が美しいと思った。
それと同時にこのかわいらしい女を泣かせているのが自分であることが、どうしようもなく狂おしかった。
妹たちを護りためにこの命を落としたことに後悔はなかった。
この気持ちに偽りはない。

本当なら生きて守り続けたかったが…
あいつ等も泣いていた。

護りたかったあいつらを泣かせる結果になったのは皮肉なものだ。
未だに涙が止まらない織姫の瞳を覗き込んで一護は言う。


「なぁ、頼まれてくれるか?」
「?」
「夏梨と遊子のこと。親父もいるけど、やっぱり女の子だからな」
「も、勿論だよ!わ、私も心配だものっ」
「ああ、有難う、織姫・・・」
「うんっ」
織姫は涙を浮かべながらも笑って言ってくれた。
やっぱり、織姫は笑顔が似合うと思う。


「お前も困った事あればうちを頼れよ、親父はあんなんだけど、頼りになるし、遊子も夏梨もお前の事を姉のように思ってる。」
「・・・うん。変だね、こんな時でも私の心配?」
そういいながら、えへへと笑う。
「こんな時だからだろ?」
「そっか、そうだね・・・でも、大丈夫だよ・・・私、頑張る」
「っ!だから、一人でがんばるんじゃねーぞ?!」
「うん、一護くんの周りの人は皆優しいもの・・・きっと私を一人になんてしようとしないよ、一護くんみたいに。」
織姫は小さく口元だけで笑う。
その笑みが寂しそうだったが、とても綺麗だった。
「・・・織姫」

そのとき織姫は窓の方に視線をやった。
そして一護もそちらを向く。
「もう・・・時間かな?」
「そう、だな・・・」
二人はもうすぐ別れが訪れることが分かった。

「この霊圧、朽木さん・・・だね。恋次くんも来てるみたい」
「迎えにふたりか・・・あっちも暇なのか」
一護は呆れたようにいう。
そんな様子に織姫はくすりと笑った。
「違うよー・・・一護くんだからだよ。」
「?」
一護は心底わからないというように首を傾けた。
そんな様子に織姫はくすくす笑う。
その瞳はまだ涙に濡れていたが、おかしいというようにくすくす笑う。
織姫は本当に自分がどれほど愛されているか自覚がなのだなーっと思ってしまう。

ひとしきり笑うと織姫は一護と視線を合わせ、自分から別れを告げる。

「元気でね・・怪我しないでね・・・」
寂し気な様子で気丈にも微笑みながら言う。
作品名:少しの間 作家名:アズ