少しの間
~~~ちょっと、別視点~~~~~
我等が隊の隊長である黒崎隊長は生前から死神代行として、様々な戦いに武功をあげた人だ。
死後もそのまま死神となった人で、噂によると生前の記憶も持っているという話だ。
容姿は若くスラリと背が高い、珍しいオレンジ色の髪と茶色の瞳をしている。
少し口調が乱暴なところがあるが、真面目で正義感が強く、部下思いの自慢の隊長だ。
黒崎隊長の隊に配属されることは考え方は人それぞれかもしれないが、護挺の一般隊士にとって一種の憧れだ。
しかし、黒崎隊長は他の隊長と少し異なる点があった。
黒崎隊長は現世任務を行わない。
隊長職についてから一度も行ったことがないらしい。
それは隊長が隊長職につく条件だったという噂だ。
無期限ではないらしいが、いつまでか誰も知らないらしい。
そのため、うちの隊の現世任務は隊長が同行したことがない。
そもそも隊長が率いなければならないほどの任務は始めから振り分けられないのだ。
いつも、黒崎隊長は現世任務に赴く部下達を心配しながら見送ってくれる。
そんな隊長をみる度に我等は怪我をしないように心に誓って任務に赴くのだ。
そんな黒崎隊長がある日突然、隊舎に慌てて帰ってきたと思うと斬月を担ぎ、現世任務につく旨を告げた。
あの黒崎隊長がだ!
隊は一瞬にして混乱した。
「えっ…?!隊長?え!?現世にですか?」
「ああ、すぐに戻る。留守中頼んだぞ、副隊長どの」
「えっ!待ってください!本当に現世任務ですか?!」
「ああ」
副官たちの慌てように一護は苦笑いだ。
仕方ない、隊長職について自分は一度も現世任務をしたことがないのだから。
「わ、我々もっ」
「いや、一人で行く」
「しかしっ!」
「一人て行かせてくれ」
真剣な目に見つめられ、副官たちは口をつぐんだ。
すぐに副官たちは頭をさげ
「お気をつけて」
「ああ、行ってくる」
そういい、一護は己の地獄蝶をつれ、旋回門にむかった。
旋回門に現れた一護に旋回門番は困惑した。
今まで黒崎隊長は自隊の現世任務のおりに、見送りに訪れたことはあったが今回は黒崎隊長ただ一人だ。
黒崎隊長が現世に赴かないのは護挺における常識だ。
その黒崎隊長が一人で旋回門に訪れる理由が思い付かない。しかも、地獄蝶を連れている。
疑問符を頭に並べてながら頭を下げる門番。
「開門」
「え」
「現世に降りるんだよ(苦笑)」
「はっはい!いってらっしゃいませ!!」
「ああ、行ってくる」
そうして、一護は地獄蝶をつれて旋回門をくぐった。
一護が現世任務についている間、護挺はあの黒崎隊長が現世に降りたいう話が駆け巡った。
半世紀以上、隊長職についてから一度として現世に降りたことがないあの黒崎隊長が現世にいったとなると致し方がないのかもしれない。
隊長達はその話を聞いて、得心が言っているようで、あまり興味はないようだというよりも感慨深げである。
一般隊士たちは黒崎隊長がいくのだからどれ程強い虚が出たのだろうかなどと話はつきない。
そうな噂が駆け巡る中黒崎隊長が帰還した。
その傍らには美しい女性を連れて。
そんな姿を見てまた護挺は混乱した!
実は浮いた話がないのでも有名だった黒崎隊長。
いくら思いを寄せられようと少し申し訳なさそうな顔をして断るのだ。
遊興の場にも行かない。
呑みには行くが女性がいるような場所には赴かない。
そんな硬派な黒崎隊長が女性を連れている!
そんな回りの混乱を余所に一護は女性をつれて自隊に戻っていった。
そんな後ろ姿を見送り門番達から情報は護挺中に発信されるのだった。
隊長の帰還を聞き、隊士たちは出迎えに姿を現した。が、思わず動きを止めてしまった。
何故なら、我等が隊長の隣に美しい女性を連れていたからだ。
そんな部下達の様子に気がつかず一護は部下に女性を紹介した。
「ただいま。ああ、コイツは井上織姫だ、よろしくな」
「よろしくお願いします!」
ぺこりと女性は頭を下げた。
「は、はい」
こちらもつられて頭をさげた。
なんか元気のいい女性だなぁ
その様子を微笑みながら隊長は優しい目で見つめていた。
「じゃあ俺達は隊主室いるから」
「わ、わかりました」
そうして、二人は隊首室に消えていった。
なにやらそのあと話し合っているようだった。
間もなくすると、隊長達は一番隊に行くとまた出掛けていった。
そんな自隊の隊長の様子を目撃し、隊舎内も混乱したが、隊長の春の予感に隊は色めきだった。
まさかっ!
隊長の!?
あの?!
今日は異例づくめだ!
もう少ししたら隊長も説明してくれるだろう。
今は暖かく見守りたいというのが隊士たちの考えだ。
少しすると黒崎隊長は祝言をあげた。
勿論、相手は一護が自ら迎えに行った井上織姫嬢だ。
ずっと、隊長は彼女を待っていたらしい。
もともと硬派だったが
彼女を待っていたから尚更だったらしい。
まさに黒崎隊長らしくて笑ってしまう。
だが、どこか遠くを見つめることがあった隊長の幸せそうな姿を見れるようなって我々も嬉しい限りだ。