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魔法戦記リリカカルなのは To be tomorrow

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 同日昼下がりの商店街
「結構買っちゃったねー、夕ご飯が楽しみ~」
 ヴィヴィオが嬉しそうだ。
「後はその辺でお茶してから帰ろうか?」
 なのはがそう答えた直後だった。
 通りの向かいの銀行から銃声がした。
なのはは、咄嗟にヴィヴィオを抱きかかえると、目の前の喫茶店に飛び込んだ。
「すません、私は管理局員です、目の前の銀行で強盗事件が発生している模様です、流れ弾の危険がありますので皆さんはここを動かないで下さい!
いい、ヴィヴィオ、ママが戻るまでここを動いちゃダメだよ、
それからお店の外にバリアとシールドを展開して、
みんなを守ってくれるかな?ヴィヴィオなら出来るよね?」
 そう言って、なのはは飛び出していった。
このとき、店に居合わせた数名の客とマスターとヴィヴィオは、これから起こる凄惨な事件の一部始終を目撃することになろうとは、思っても見なかった。
「レイジングハート、エクセリオンモードでセットアップ」
「Yes Redy」
 丁度、強盗たちが外に出てくる所だった。
「オラオラ、道を空けろ!この子みたいになりたいかー!」
 手下たちが、銀行の中や通りに向かって拳銃を乱射している。
4、5才ぐらいの男の子が背中から大型のマチェットナイフ(※)で突き刺されてぐったりしている。
ナイフは腹まで貫通している。
ナイフを手にしているのは、スキンヘッドの巨漢だった。
(※マチェットナイフ:蛮刀とも言う、刃渡り約50cm)
「シュート!」
 光弾が三つ飛んできて2発は彼らの足下で炸裂、1発は逃走用の車に命中し爆発炎上する。
更に遅れてもう1発、彼らの足下で炸裂した。
 次の瞬間、刺された子供は地面に倒れていた。
そして、スキンヘッドの巨漢が腹をストライクフレームに突き刺され天高く持ち上げられていた。
逃げ遅れた周囲の人々にも、いつの間にか保護バリアが掛けられていた。
「あなた達、強盗殺人の現行犯よ人質を解放して投降しなさい!
投降の意志がなければ、この場で処刑します」
 なのはだった、光のない冷たく座った目で彼を見上げていた。
「げふっ、お……俺にこんなことして……た……ただで………済むと………思う……なよ。」
「エクセリオンバスター」
 冷たく言い放ったその刹那、彼は光に包まれ「ドンッ」と爆発した。
爆煙が上がり、千切れた手足や頭部が路上に転がり、細切れになった内蔵やら肉片やら骨やらがボタボタと落ちてくる。
一瞬、ザァッと血の雨が降る。
血の雨に濡れた彼女の姿は、あまりに美しく、儚な気で、この世の何よりも恐ろしかった。
「てめぇ!この子を刺すぞ!」
 ワカメ頭の男が3才ぐらいの女の子にナイフを突きつけていた。
「よくも弟を……って、あれ?いない?」
「遅い!それに首がガラ空きよ」
 彼女は既に彼の後ろに駆け抜けて、レイジングハートを振り抜いていた。
エクセリオン、それは突撃槍を差す言葉、ストライクフレームは槍の穂先なのである。
通常、巨大な砲撃しかない彼女にとっての唯一の近接戦闘が出来る武器はこれしかないのだ。
そして、これこそがストライクフレームの本来の使い方である。
 ワカメ頭の首がポロリと地面に落ち、ドシューと盛大な血の噴水が上がった。
「まだやる?次は誰が死ぬのかしら?」
 冷たい殺気の籠もった視線が3人の手下たちを貫く。
手下たちは、もはや動くことが出来なかった。
下手に動いたその瞬間、首を切り落とされるか、爆死するのか、既に自分たちの命は彼女の手の中に握られていた。
 その直後、「ガシッ」突然彼らにバインドが掛けられた。
「容疑者確保に御協力頂き、ありがとうございます、ティアナ・ランスター執務官であります」
 ティアナだった。
「なのはさん、ご苦労様でした、ここからは私が引き継ぎます」
 ティアナも恐ろしかった、もし下手なことをすれば自分も殺されそうな、もの凄い殺気を身に纏ったなのはさんが目の前に立っているのだ。
冷静に装っても、膝の震えが止まらなかった。
 ティアナはタクシーで移動中だった。
空港から108部隊へ向かう途中、前方で起きた爆発に事件だと気付いてタクシーを降り走ってきたのだ。
 今、彼女に出来ることは、一生懸命になのはの目を見つめることだけだった。
 幸いにもなのはさんの方から視線を外してくれた。
 だが、その視線の先では……
「お兄ちゃん起きて」
 血まみれになった小さな女の子が、自分の兄を起こそうと体を揺さぶっていた。
慌ててなのはが駆け寄る。
 呼吸と脈を確認する。
弱々しいが、脈はまだある、自発呼吸もかすかにしている。
しかし、体が冷たくなり始めていた。
 なのはの目から大粒の涙が溢れる。
「ごめん、もう私は……あなたを助けてあげることが出来ない」
 この子を抱えて飛んだとしても、とても間に合いそうにない状態だった。
絶望しうなだれようとした瞬間、彼女の頬をひっぱたいた人影があった。
「諦めないで下さい!絶望しないで下さい!あなたが絶望したら、この子まで絶望しちゃうじゃあないですか!」
 スバルだった。
 事件の一報を聞いて全速力で走ってきたのだ。
現場からレスキュー隊の隊舎はすぐ近くだったのだ。
後ろから何台もの救急車が走ってくるのが見える。
「でも、私が飛んだとしても、もう間に合わない!助けられないよ!」
「そんな言葉口にしないで下さい、あなたが諦めてどうするんですか?
私に諦めない勇気を教えてくれたのは、あなたなんですよ!
諦めちゃったらそれで終わりだけど、信じれば奇跡は起こります!
絶対に奇跡を起こします!」
 そう言い放ったスバルの強い目の光りに、なのははこの子が助かるであろうことを確信した。
話している間に、スバルは手早く点滴を子供の腕に取り付けていた。
「なのはさん、回復魔法をお願いします、少しでも時間を稼いで下さい」
 子供の手首には茶色のカラータグ(※)が付けられている。
 スバルがモニターを開く。
「キャロ緊急事態だ!この前話したあれをやる、ぶっつけ本番だけど出来るね?」
「分かりました、でも、遠隔操作はまだ不安なので私もそちらに行きます、
隊長~緊急出動でスバルさんの所へ行ってきます!」
(え?辺境世界からここまで半日以上かかるんじゃあ?)
 そう思った直後、なのはたちの前に召喚魔法陣が輝いてキャロが飛び出してきた。
 スバルはモニターを切り替えていた。
「院長先生、この前ご相談したあれを実行します、準備はよろしいでしょうか?
ああ大丈夫だ、手術室は三つ、スタッフは4組準備を始めている、後2分もあれば完了する、状況は?」
「茶色1名、男の子5才ぐらい、背中から腹部に大型の刃物貫通、大出血意識なし、脈拍呼吸とも非常に弱い、体温も低下しています。
現在昇圧剤入りの輸液と、回復魔法で時間稼ぎをしています」
「転送、聖王病院手術室前!」
 魔法陣が輝いた。
(※カラータグ:傷や症状の度合いを色で示した物、緑は最も軽傷、黄色、オレンジ、赤、茶、黒が死亡となる)
「この子のご両親は?」
 女の子を抱きかかえてなのはが訪ねる。
父親は肩を撃たれて苦悶の表情をしていた、母親は右胸と脇腹を弾が貫通し、意識がなかった。