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隣が特等席

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夜明け前、本当にごくわずかであるが夜明けの兆しが見える時間。
そんな時刻のある屋敷の一室から衣擦れの音が漏れていた。

明かりがない中ほっそりとした立ち姿の人影があった。

シュッシュ…

そんな音をさせながら身支をしているらしい横でもぞりと別の影が動いた。
「む…。」
「…ああ…起こしちまったか」
そういったのは護挺十三隊の一隊を預かる黒崎一護であった。
「なんじゃ、帰るのか…」
そうして、布団の中から現れたのは護挺十三隊の一番隊を預かる山本元柳斎重國であった。

「あぁ、もう、帰る。朝から討伐任務だったのをすっかり忘れていた。」
「なんじゃ…おぬし忘れておったのか。」
「…思い出したんだからいいじゃねぇか…」
「おぬしが隊長では部下も大変じゃ」
「うっせ!」
「…体は大丈夫か?」
「・・・・・・・・あぁ、うん、大丈夫だ。てか、そんなことを聞くな」
「だが、これから任務なのだろ」
「そうだけど…大丈夫だよ、心配すんなよ重」
「それは無理な相談じゃな、おぬしほど無鉄砲という言葉が似合う人間を知らん」
「お前なぁ・・・」

一護は袴の腰ひもを結びながら山本をにらんだ。

「くれぐれも気をつけるのだぞ」
真剣な目でそんなことを言われては起こる気も失せる。
一護は己の隊長羽織をわきに抱えて、布団に横になっている山本に顔を近づけた。
暗がりでも、相手の顔がわかるほど近づいた。
「…ああ、気を付ける…お前はもう少し、眠っとけよ」
「おぬしの言葉を鵜呑みなぞできんなぁ…」
うっせぇと小さくつぶやき、一護は立ち上がり部屋から出て行った。
山本は一護の姿が消えるまで、見送り再び眠りについた。










作品名:隣が特等席 作家名:アズ