二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

隣が特等席

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 









目を開けた時もう外は暗かった。部屋も明かりは灯されていなかった。

自分はあの後気を失ってしまったらしい…

あいまいな意識の中で、誰にも言わないで欲しいと繰り返していた気がする

そんな事言う訳ないのに…

自分は何にそんなにおびえているのだろうか…

いや、そんな事わかっている…

一護は空っぽになってしまった腹を抱きしめた。

ここにいたのに…

気が付いてやることもできなかった…



少しすると、廊下に気配を感じた。
自分にもっとも馴染んだ気配だ。
どうしよう
今は会いたくない
どうしようどうしよう
でも
ああ
会わなくては…

謝らなくては…


「一護、起きているのだろう」
「重…」
「入るぞ」


重國は一護の目に浮かぶ涙に驚く。

「何があった」

重國は一護のもとに近づく。

「重國…ごめん・・・」
「なんじゃ…?」
「ごめん…ごめん」
「…何故謝る」
「俺は…」
「いうてみい」
「お前の…」
「どうした」

そこに長い沈黙が落ちた。
重國は決して急かしはしなかった
そっと、一護の傍にあった。
顔を俯けている一護の背中にそっと手を当て、時折思い出したようにさする。

そんな仕草に切なくなりながらも勇気づけられた。

「お前の…子を、流してしまった」
「・・・なに?」
「ごめん、重…お前の子を殺してしまった」
「一護」
「ごめんごめんごめんごめん…重」
「泣くな、一護、もうよい」
「お前の…お前の子を殺してしまった…っ」
「そんな言い方するでない、一護」
「ごめんな、重。ごめんごめん、お前の子なのに」


そうしてその晩、四番隊に悲しげなすすり泣きがどこからともなく響いた。






しばらくすると、一護は復帰した。
心配させたことを皆に謝り以前と変わらぬようであったが、わかる者が気が付いていた。

どこか寂しそうな顔をする事が一護は多くなっていた。
そしてどこか遠くを見るような表情であることも。




少しして一護は護艇から姿を消した。
多くのものはその理由を知らなかった。
極限られた人間にしかその真相はわからなかった。

副官は己では彼女を支えられなかったのかと唇をかんだ。
己の無力さを恨むことしかできなかった。

彼女を責めるなどしない。
理由を教えてはくれなかったことは拗ねたくもなるが教えるに足る人間ではなかったのだ。
致し方ない。
孤高の獣のような人であった。
その人が唯一懐いた人から離れ生きるとまで選択した何かがあったのだ。

彼女の生き方を己ごときがどうこう出来るなどとおこがましい。

己は彼女が戻ってきたときに少しでも頼りになるよう己を磨くのみだ。
己を磨き、仕事に万進すればよいのだ。



そして、彼女は副官が死神を引退しこの世を去るその時まで護艇にその姿を見せることはなかった…。


彼女の副官は最期まで己の隊長の心配をして、そして逝った。











彼女がどこで何をしているのか、生きているのか死んでいるのかさえ誰も知りはしなかった。



ある日彼女が突然護艇に姿を現すまでは・・・・













作品名:隣が特等席 作家名:アズ