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隣が特等席

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「ん・・・・」
一護は目を覚ました。
しかし、己の状況が理解できない。
見覚えのない天井だ。
己は何故こんなところに寝ているんだろう。

部屋の様子からここは四番隊じゃあるまいか。
そうして自分の体を見回すと死覇装ではなく入院着に着替えさせられていた。
何故、自分はこんな格好で寝かさせているのか。
さっきまで隊首会に参加していたはずだ。
そう、そうして…。
ああ、そうだ、階段を下りていたんだ。
下りて…下りて、途中で気が遠くなったような気がする…。
そう考えると、自分は階段から落ちたのだろう。
だから、こんなところに寝かされているのか。

そう考えにいたり、一護はため息を一つはいた。
これでまた重國に文句を言われる。
そして己の副官にも…。
いやだ、気がめいる…逃げ出したい…

そんな事を鬱々と考えていると扉があく音がした。

「一護隊長、目が覚めましたか」
「ああ…」
「気分は…どうですか」
そういいながら四番隊隊長は傍に寄ってくる、とても労しげに、そしてこちらの様子を窺うように。
何かを見極めようとするようであった。
「いや、別に大したことない」

俺の答えに少し目を張り、そっと目を本当に少しふせ枕元の椅子に腰を掛けた。

「一護さんは…ご自分の体のことをご存知でしたか?」
「え」
「自分の体調不良の原因に心当たりはありますか?」
「え、いや、ただの疲れかと…」
「そうですか…」
「なん―」
「ここ最近、月のものはどうでしたか?」
「え?」
「月のものです」
一護は言われたことに一瞬思考が停止した。
月のもの?
自分は不順だ、そう、最後に来たのはいつだったか?
気にも留めなかった。
しかし、何故、そんな質問をされたのだろう。
今、そんなことが関係あるのだろうか。
自分は階段から落ちただけなのだろう?

そんなことが関係あるとは思え―…
…いや、体調不良と吐き気、月のもの…

もしや…
もしかして…
いや、まさかっ
そんなっ!!!

一護は布団を跳ね上げて起き上がった。

顔色は真っ青である。

そして、己の中で何度も同じ思考を繰り返した。
何度考えても同じ結論しか至らない。

ぐるぐる
ぐるぐる
思考は回る

ゆっくり一護は合わせられなかった四番隊隊長の目に視線をやる。

否定してほしい
否定してほしい

まさか最悪の結末ではないだろう

やめてくれ

うそだ

そんな目で見ないでくれ







ああ、喉が、乾く







「も、しかして…」

そして四番隊隊長はそっと目を伏せ小さく首を振った。

さぁっと血が引いた




「お気づきでなかったんですね…」



そっと、無意識に握りしめていた手がつつまれた。

「流れて…しまったのか…?」

「・・・・はい」

次の瞬間、知らぬ間に涙が流れていた。
次から次へと、止まらぬ涙だ。

なんてことだ、誰の子かなど決まっている。

あいつの子だ!!

あいつの!!!!!

気づいても上げられなかった!!!

あいつの子なのに!!!!

そして、生んでやれなかった!!!!

あの男の子を!!!

最強の男の子をっ!!!!


気が付いた時には体を突っ伏し慟哭を上げていた。

その間、四番隊隊長はずっと背中をさすってくれていた。

それにも気が付かず泣き続けた。


命が宿ってくれたことさえも祝ってやることができなかった。

なんてことを自分はしたのだろう。

あいつに合わす顔がない!

そうだ…重國になんといえばいいのだろう?


あいつの子を殺してしまった。

生むなとは言うまい、言ったとしても勝手に己は生んだ。


いや・・・・もう、そんなことを考えても意味がない。

己は子供を殺してしまった。

もっと早く体調不良を気遣っていれば…月のものに気が付いていれば…

またもや思考は同道めぐりだ。

己を責めることしかできない

ああ

もう

俺が消えてしまいたい・・・・・













作品名:隣が特等席 作家名:アズ