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なんだってお前またこんなところで

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 まだぐずってる秋葉を俺がなんだかんだ宥めながら、15分ほど歩いて辿り着いた本屋は、夕方という事もあってか仕事帰りのサラリーマン風の人たちで結構賑わっていた。立ち読みしてる人々を掻き分け、レジの横に置かれた週刊プレイボーイの『本日発売!』という文字を横目で見ながら漫画コーナーへと向かう。
「…」
「…なあ、お前が言ってた漫画ってもしかしてこれ、か?」
「おお…おおおお!!!」
「声デカいって!」
 何事だ、とばかりに店員から鋭い視線を投げかけられて愛想笑いで返す。秋葉の目はずらーっと並んだ単行本に釘付けだ。さっきまで死にそうな顔してたのに、これはちょっと現金すぎるってもんだろう。
「で、これで良いのか?」
「いっ、良いも何も!限定版・特装版のどちらとも揃ってるじゃないか!!」
 恐る恐る、といった感じでコミックスに手を伸ばす秋葉。それを、なんだかよく分からん、と思いながら見てる俺。そして、そんな俺たちを訝しがるような目で見てる店員。秋葉は手に取った漫画の表紙やら、時には裏返してみたりして、しきりに何かを確認している。そして満足そうに、「うん!これは正真正銘、おまけ小冊子付き限定版だ!!」と言った。ああ、そういやそんな話だったっけ。
「…ははあ、僕らのようなオタクはこぞって専門店で購入しようとするからすぐに売り切れるのであって、こういういかにも町の本屋さん的な所に来れば、まだまだ平積みされているという訳か。なるほど、すっかり視野が狭まっていたな。これは盲点だった」
「真面目に分析すんなよ」
 大体それってお前、ただの殴られ損じゃないかと思わない事はなかったけど、秋葉があまりにも嬉しそうに「御厨ありがとう、本当にありがとう。お前良い奴だなあ、知ってたけど。でもお前、本当に良い奴だよ。もっと自信持てよ!」と言うので、俺はなんだか生温かい気持ちが湧き出てくるのと、店内にいる人々のこれまた生温かい視線に気付かない振りをして、あははと情けなく笑った。秋葉は笑顔全開の癖に、その顔には拭い損ねた鼻血と涙の跡が残っていて、これまた随分と情けなかった。