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僕らのサマーウォーズ

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それは、塵でしかなかった。
過去に戦いに敗れ、塵となったデータは、ただただネットワークの海を漂う事しかできなかった。本当ならデータはこのまま漂い続け、そしていずれは人知れず消えていくことになるのだろう。
データの塵は、ただただネットワークの海を漂い続ける。
ずっと。永遠に。
しかし、それが終わりを告げる時が来る。データの塵は、もう一つのデータの塵と出会った。
それは、まさに最悪としか表現できない出会いだった。
二つのデータの塵は互いに交わり、一つになった。
それはもう、ただのデータの塵ではなくなったことを意味する。


「皆さん、お久しぶりです。」
長野県上田市。小高い丘に立っている一際古風で一際大きな屋敷の玄関に、大人しげな声が響く。
「みんな。ただいま!」
あの事件から明日でちょうど一年。小磯健二と篠原夏希の両名は、久しぶりに陣内家の門をまたいだ。
さて、一年前の事件。ラブマシーン騒動後、健二と陣内家では色々と慌ただしい空気が流れた。
健二は騒動の際に、あの暗号をわずか七分間で三問も解く(しかも内一問は暗算)という驚異的な計算力を見せつけ、どこからかその話を聞きつけた大学や数学者から注目の視線を浴びることとなった。その結果、高校三年現在の時点で国内外問わず様々な大学から入学してくれとの熱烈オファーが届いている。この状況に、学校中から畏敬の念が送られたが、健二自身はどうすればいいか分からず、おたおたしている。ただ外国語とか分かんないので、海外に行くつもりはないらしい。まあ、一部の人間からは海外に行かない理由はそれだけではないだろうという話もあがっているが。
夏希は高校卒業後、大学に入学し剣道部に入部した。こちらでも明るさとノリの良さと天然ボケっぷりが受けて部内のアイドル的存在になっている。あと、あの花札対決が評判になって、某大手花札屋兼ゲーム会社から何やら美味しい話が来ていたようだ。ただ、本人は丁重に断ったようであるが。
池沢佳主馬ことキングカズマは、ラブマシーンを倒しOZの世界を救った立役者として、もはや神格化された存在になっている。最も、本人はそんなことには特に興味ないようだが。あとは相変わらずOZチャンピオンシップの不動のチャンピオンとして君臨している。
陣内侘助は、自らの罪(といっても本人は犯罪の目的などなく、ただ開発しただけなのでさほど罪は大きくなかったが)を償いつつ、現在は日本の企業でシステムエンジニアをしている。家に顔を出さないのは相変わらずだ。
後は勝手に持ち出したスーパーコンピュータやら借用した自衛隊のミリ波回線の電波車やらが人工衛星の墜落により全てお釈迦になってしまったため、それぞれのところで色々とゴタゴタはあったようだ。陣内家そのものも、騒動後はメディアに引っ張りだこだった。
あ、そうそう。騒動収束の影の功労者である佐久間敬君は、特に大きなところから大きな賞賛とかは浴びなかった。が、学校内では噂が広がり、しばらくは祀り上げられた。本人はそれでご満悦している。そしてそれがきっかけで彼女ができたとかできなかったとか。
さて、ここまで長々と人物紹介をしてきたが、そろそろ話に戻ろう。
健二が一年ぶりに陣内家に顔を出したのは、明日が八月一日で、つまり陣内栄お祖母ちゃんの一回忌兼八一歳の誕生日祝いのためで、今日はその前祝いというか、前夜祭というか、まあ明日大勢親族が集まる前に、一族で盛り上がろうということで集まったのだった。
「あら、夏希ちゃん。健二くん。久しぶりね。」
「理香おばさん!久しぶり。」
「お久しぶりです。」
二人は家の中に入る。改修工事も終了しているため、健二が初めてこの家に来た時と変わらない姿がそこにはあった。そして、
「あらあ、ケンジ君じゃない、元気してたー?どう?夏希とはうまくいってる?」
「夏希ちゃん、健二くん。いらっしゃい。」
「君の噂は時折聞いているよ。なんでも有名な大学への入学が決まってるんだって?」
「え?そうなの?すごいじゃん!」
こちらも変わっていない陣内家の賑やかな一族は、一年ぶりの訪問者を快く受け入れた。いや、一人だけ。
「ったく、なんでこいつがまた家にいるんだよ。」
「あんたねえ、まだそんなひねくれたこと言ってんの?」
「あのな、俺は夏希がこんなに小さk・・・」
「はいはい、もう聞き飽きたわよ、その話。全く、夏希ももう大学生だってのに、いつまで子ども扱いしてんだか。」
「夏希がいくつになろうと、俺にとっては子どもなんだよ!」
「はいはい、わかったわかった。じゃまだからそこどいて。」
そう言われてどかされると、陣内翔太は健二をにらんでチッと舌打ちしつつ去っていった。
「相変わらずなんだね。翔太兄は。」
「そうですね。」
健二と夏希は挨拶を回りをした。もちろん陣内家十六代目当主、陣内栄おばあちゃんにも。
一通り挨拶し終えると、OZチャンピオンの姿が見えないことに気付いた。
「ああ、佳主馬はいつもの部屋じゃない。」
そう言われ、健二が初めて佳主馬と出会ったあの部屋に向かってみた。予想通り、そこにいた。目の前の世界に没頭していて、訪問者が来たことに気付いていない。
「やあカズマくん。久しぶりだね。」
そう声をかけられて、初めて部屋の主は振り返った。
「久しぶり。」
これで会話は終了。あとが続かない。なんとか先ほど小耳にはさんだことを話してみる。
「妹、生まれたんだってね。」
「その話、誰から聞いた?」
「え?えっと、夏希先輩から。」
「ふーん。」
「どう?妹は可愛い?」
「まあ。」
「キングカズマの調子はどう?」
「まあ。」
ここでネタが尽きた。折れた健二が部屋を出ようとすると、向こうが声をかけてきた。
「ねえ、一つ聞いてもいい?」
「なに?」
「夏希姉さんのこと、まだ先輩って呼んでるの?」
「えっ?」
「もう付き合ってるんでしょ?それにもう卒業したんだから先輩でもないのに。」
「え、いや、あ、えーっと、その。」
「なんだ、まだそういうのに弱いのか。」
そういうと、カズマは再びネットの世界に没頭する。健二は今度こそ部屋からすごすごと退散した。
夕方になり、宴が始まった。
酒が入ると、一族はより一層にぎやかになった。そして、あの男のエロおやじモードも発動する。
「どうだい、健二くん。夏希ちゃんの具合はどうだった?」
「えっ!?」
「まーた始まったよ。このエロおやじは。」
「ホント止めてちょうだいよ。」
「いいじゃないか。陣内家の跡取りはそうやって生まれてくるんだから。」
「おいじじい。なんでこいつから陣内家の跡取りが生まれることになってんだよ!?」
「父親に対してジジイとはなんだ!」
「はいはい、喧嘩しない。本当に成長しないわね、この二人は。」
「で?どうなの?ホントに結婚しちゃうの?」
「え、あ、う、ぼ、えと。」
「結婚するつったら即逮捕してやる!」
「私はそのつもりだけどね。」
「!!?」
その言葉に、拍手喝さいが巻き起こる。
「おおおおおぉぉ!いいねぇ!」
「で?どうなんだい?返事の方は?」
「え、、、、ぼぼぼぼぼぼぼぼbbbっぼくは・・・」
すでに限界である。
「もういい加減にしなさい。健二くんまた鼻血出して気絶しちゃうわよ。」
作品名:僕らのサマーウォーズ 作家名:平内 丈