GANTZ Paradise Lost 田中星人篇
第四話・ヌーツがオツャカになッたぁぁぁぁぁぁ
『52:12:02』
「おぉ・・・ここが・・・」
俺が転送された先は自動車が沢山停まっている区画だった。
どうやら立体駐車場のようだ。
―――こんなとこに星人なんかいるのか―――
そう思っていると・・・
『わぁーーーたぁーーしぃーーーかぁぁらぁぁぁあーーーなぁーーーたへーーーーーー
こぉーーのうたぁーーをぉーーーとどぉーーーけよぉーーーー
ひろぉーーーいせぇーーーかぁーーいにぃーーーーたぁーーーったひとぉーーーりのぉーーー
わぁーーーたぁーーーしぃーーーのぉーーーーすぅーーーーきぃーーーなぁーーーあなぁーーーーたへーーーーー』
背後から音程の妙にずれた曲が聞こえてくる。
俺が後ろを振り向くと・・・
「・・・・・な・・・・・んだ・・・・・・?」
そこには血まみれで地面に転がされている暴走族達と、何故かラジカセを持った縞のセーターの男がいた。
しかし、俺はこの縞のセーターの男に見覚えがあった。
先ほどガンツに表示された田中星人と全く同じ姿形なのだ。
「アイツか!!」
俺は咄嗟に右足のホルスターに手をやり、ハンドガンを抜き―――
抜き―――
抜き―――
――――――抜けない。
「ッ!?」
よく見ると、俺の右手だけがまだ完全に転送されていないではないか。
―――ウッソだろ!?こりゃヤバい!!!―――
俺はまだ転送されかけの自分の右手を、その次に田中星人の方を見た。
『カァァァァァァァァッッッ!!!!』
田中星人はこっちを敵と判断したのか、大口を開く。
その大きく開かれた口の中では青白い光球が蠢き始めていた。
―――うわわ、何か分かんねーけどヤバい!!!―――
俺はもう一度右手を見る。
人差し指と薬指以外は転送されていたが、まだ完全には転送されていない。
「・・・んああ、もうっ!!」
俺はやむなくハンドガンを左手で抜き、そのまま田中星人に向けた。
ハンドガンの後部スコープサイトに射撃対象のレントゲン画像が写り、そのままロックオン画面へと移行する。
田中星人の顔面に照準を合わせ、引き金を絞る。
・・・・・ギョーン・・・・
・・・・・チュドーンッ・・・・
間抜けな銃声と共に大砲か何かの発砲音が鳴り響く。
次の瞬間、俺は力の奔流によって勢いよく吹き飛ばされた。
その衝撃でハンドガンが手から離れ、近くに駐車していた車のボンネットに弾き飛ばされてしまった。
「うわっ・・・・」
俺はそのまま地面に文字通り、“転がされ”る。
「・・・いつつつ・・・」
俺が再び立ち上がろうとすると・・・・
『ギィィィィィィィィッギィィィィィィッギィッギイイイイイイイッッッ』
田中星人が鳥のような呻き声をあげて激しく身体を痙攣させているのが目に入った。
「・・・なん・・・だ・・・?」
見ると田中星人の横には壊れたラジカセが転がっていた。
おそらく、先ほど俺が撃ったハンドガンは田中星人ではなくその横にあったラジカセへ命中したようだ。
―――まさか、アイツ・・・あのラジカセを壊されて・・・?―――
何となくそう思った、その時・・・
『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!』
田中星人が鬼のような形相でこちらへ顔を向け、口を開いた。
口の中には先ほどよりも強烈な光彩が蠢く。
それに対してこっちは完全に丸腰だ。
相手も相手で素手で戦って勝てる敵でもなさそうだ。
「クッソ・・・ここまでか・・・」
覚悟を決め、目をギュッと瞑る。
それと同時に先ほどの砲声が響く。
しかし、それは俺に向けられたモノではなかった。
何故なら、この時・・・
・・・・・チュドーンッ・・・・
「ぐわっ・・・・」
俺の横には透明化した西丈一郎がいたのだから。
作品名:GANTZ Paradise Lost 田中星人篇 作家名:プラスチッカー