二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

夢轍 [3]夢と幻と過去と今、開かれたもの4

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

 それは、山岳トンネルの仔細を記したものだった。一般に知られているのはベラニックへの抜け道だが、他にも古い遺跡へ向かう間道に続く細い抜け道が在る。そこまでは、フェンデル人ならばたいがい知っているものだ。が、カーツが言うのはそれとは別の、恐らくはトンネルを掘る際に使っていた抜け穴のようなものである。この情報はコンドラトからだった。カーツも、夏の間に彼と共に帝都を抜け出し赴き、確かめていた。いつか使うかもしれない。そういう漠然とした予感からの行動だったが、早々に実を結びそうである。
「その抜け道を使い、森を抜ければ穀倉庫の背後に出る」
 ザヴェート周辺の雪は、やはりその周囲に大煇石の存在を伺わせる証拠のように明らかに多かった。ザヴェート山にしても同様で、山岳トンネルを抜け名もろくに知られぬ遺跡へ向かう間道も雪深く、ゆえに人々は殆ど近づかないのだ。ベラニックでは東には血を凍らせる魔物が住まい、一歩足を踏み入れたら最後、髪の毛の先まで凍らせられてしまう、などという寓話も伝えられているのだが、恐らくは人を近づかせぬ為の理由があるのだろうとカーツは思う。そういう場所なれば、目的の穀倉庫以外にも同様のものが多く散在している可能性も考えられる。が、さておきまずは目的の穀倉庫だ。既に数日内にそちらから帝都へと物資が運ばれる、という情報がカーツの耳に入ったのは三日前。この厳戒態勢の最中でも、政府側に何らかの動きがあれば、或いはありそうな気配があるのならば必ず耳に入ってくる。そういった情報を分析、振り分けるのもカーツの仕事だったが、それらから判断するに、やはり、限界なのだ。
「ベラニック出身者を何人か募るか?」
「そうだな。あそこらの地形は複雑だから、知っている人間でなければあっという間に雪に足をとられて谷間に転落なんて事故も起きかねん」
 ベラニック出身者は少なくは無い。が、地形に明るいような人間は限られる。その上で、雪上行軍に慣れたものでなければいけない。
 先に調べていた通り、現在政府管理の穀倉庫はフェンデル中に散在しているが、山岳トンネルを東に抜けた先にあるものは規模から言えば小さい方だ。が、この時勢である。ロベリアが言う通り、厳重な警備が布かれていると考えるべきだ。そしてこれから季節は白亜の悪魔が牙をむく季節となる。
 カーツは、頷いた。マリクとロベリアも同様に首を縦に振り、マリクが集う同志を見渡す。ちらとカーツが一瞥すれば、皆それぞれに決意を固めた眼差しだ。
「よし、やろう」
 その一言で、決まりだった。