夢轍[5] 執着、或いは繰り返す過去に囚われた鉄
これは、殆ど破格の条件に等しい。あれほど改革派を弾圧し続けた政権のその最高権威の言葉とは、にわかに信じがたかった。が、カーツが再び唖然としたからか、イワンがオイゲンの言葉を復唱する。その選択を、カーツ一人に委ねている。
オイゲンは改革派に助力したラティス商会に関しては言及しなかった――ストラタと通じているかの商会の力を奪う、これはそういう意味でのチャンスだったということか。改革派に助力したという証拠さえあれば、かの国の協力者(それはともすれば大統領府である可能性もある)を牽制できる。この国に手を出すな、そういう事を武力を使わずに出来るのだ。そういう手段も、オイゲンは考えていたのか。
カーツは、考えた。考え、そして、既に出ていた結論を――それこそ、完全に道が閉ざされたと感じても尚、諦めることのなかった自分の中に在る確かな熱を、受け入れることにした。
作品名:夢轍[5] 執着、或いは繰り返す過去に囚われた鉄 作家名:ひの