灰色
走り出す
川島さんは、緑間の名前を愛おしそうに呼ぶ。
ずくずくと疼くこの俺の気持ちに彼女が気づくはずもないのに
悲しくて辛くて、どうしても気づいて欲しいと本心じゃ思ってる。
でも川島さんは真ちゃんの彼女だ。
俺が一番好きになっちゃいけない人で、一番最悪な恋。
気づかなければよかった。
出逢わなければよかった。
あの日、喫茶店で好奇心で近づいたりしなければこんな気持ちにだってならなかっただろう。
軽はずみな自分を後悔しても既に遅し。
わかってる。理解してる。
でも苦しいのは仕方ないだろーが、ちくしょう。
「じゃ、真ちゃん来た事だし邪魔者は退散するわ」
急に立ち上がった俺に川島さんの視線はすぐ俺へと映り変わる
「高尾くん、」
行かないで
そんな風に、服の裾をぎゅっと掴まれた。
すがるような目をされた。
え?
咄嗟に緑間を見るが、そんな緑間も川島さんの行動に驚いたような顔をして硬直していただけ
どうしていいか分からずに俺は服を掴む川島さんの手を取ってみる。
このまま、川島さんとどこか遠い場所に行けたら。
いやそんな事したら駄目だと分かってはいる。だけど
気づいたら、走ってた。
俺の右手にはしっかりと川島さんの細い腕があって
ごめん。
俺、サイテーでごめん。真ちゃん。
今だけ川島さん、貸してくれよ