灰色
近づけない距離
パチパチと音がする花火
赤に青、黄色に緑に紫に白
色とりどりに変化するそれに川島さんは目を細めて笑った。
「なに、笑ってんの?」
彼女の隣を陣取って、彼女の花火にまだ点火していない自分の花火を近づける。
移る火の粉で俺の持つ花火もすぐ点火。
もう少しだけ近くに居たかったと思うのは、多分さっき自分の気持ちに気づいてしまったから。
「感情みたいだな、て思って」
「赤」
「愛情」
「青」
「最強」
「黄色」
「努力」
「緑」
「真剣」
「紫」
「休憩」
「白」
「不思議」
「何だそれ、感情ぜんぜんカンケーねえじゃん」
俺が笑えば川島さんも笑った。
川島さんの花火が明るさを失う。
それはもう終わりを告げる合図で、川島さんはポイッとバケツに花火を放った。
そして花火が入った袋から線香花火を取り出して俺ので点火する。
小さくて、儚くて綺麗な線香花火
川島さんは花火を持っていない右手で髪の毛を耳にかけた。
見惚れてしまうほどに、彼女は綺麗で
手が届きそうなほどに、近くて。
近づきたい
近づきたい
「なにをいているのだよ」
「慎太郎」
・・・近づけない。