灰色
突き放せない
それは甘くて
でも切なくて
まるで
初恋のような、味でした。
* * *
“会いたい”と表示されたディスプレイを見て、不覚にも涙が溢れてしまった。
それは今、私の隣に肩を並べてくれる人からではない。
過去に拭い去ったはずの、初恋の相手から
どうして今更そんな事をいうの?
私は、あなたに振られたのに。
あなたが私を振ったのに。
私ね気づいたの、やっと。
高尾くんを好きな気持ち
でもいつでも瞼の裏から消えない人は
慎太郎なんだよ。
高尾くんを好きな気持ちに気づけたのに、慎太郎を忘れられない自分に嫌気が差した。
私の“すき”が彼を不安にさせていると知っている。
紙に貼り付けたようなその言葉に彼がどれだけ顔を歪めたか。
心から伝えても伝えても
届かない
届いてくれない
すきよ、高尾くん。
でも
私には、慎太郎を突き放すことも
できないの。