灰色
あの人
誠凛に通う、川島さん。
驚くとかそういう感情よりも先に自分の顔に青筋が立ったのが分かった。
なんて最悪な組み合わせ・・・!
何となく真ちゃんが学校名を明かさなかった訳がわかる気するわ。
「えーっ・・・と。川島さん部活入ってんの?」
川島さんの通う学校が分かってからずっと沈黙が続いていたが、その沈黙を俺が破る。
真ちゃんは不貞腐れてるし。
つーかどんだけ子供だよ真ちゃん!
彼女は一瞬だけ視線を真ちゃんによこし、そして軽く溜息を吐いて俺を見た。
不覚にもどきっとしてしまう俺って案外、人妻好きなのかもしれない。
ま、2人が結婚してるわけじゃねーけどさ。
「日舞部」
「にちまいぶ?」
「日本舞踊、てこと。」
「硬っ苦しそうな部活に入ってんだなー」
「そんな事ないよ」
クスクスと川島さんが笑う
う、わ・・・やっぱ美人が笑うと周りに花咲く気がするわ。
日本舞踊なんて、俺には馴染みがないからどんなものかと聞いたら分かりやすく説明してくれた。
ちょっとだけ舞ってくれたりもして、川島さんの髪がなびく度にドキドキとして。
自然と打ち解けたのか、まあそれは俺自身の勝手な自己解釈だけどメアドなんかもゲットしたりした。
「じゃ、帰ったらメールするわ」
「あ、うん」
そこで俺と川島さんは重要なことに気がつく。
・・・真ちゃんちょー放ったらかしにしてた。
真ちゃんがいたリアカーの後ろには既にその姿はなく、ただ虚しく風が吹いた。
「怒らせたかなー」なんてちょっとおどけて川島さんを見れば、焦ったように携帯を耳に当てて
なんか、がっかりしてる自分がいることに気付かされた。