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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (14)

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「どーして わるいヤツをみのがしちゃったの!?」

アイリスが声をとがらせて、アーティに迫った。

「……んうん。そりゃあ、追いかけたい気持ちはあるよ」

アーティさんも、納得のいかない表情はしていた。

「だったら!!」

「だって、奪われたポケモンにもしものことがあれば、僕たちはどうすればいいのさ?」

ベルの他にも、プラズマ団にはたくさんのポケモン達が盗まれていた。

大切な、誰かのパートナー達。

アーティの言葉に、アイリスは黙り込んでしまった。

プラズマ団のアジトとして使われているビル。

プラズマ団がいなくなったそのビルを、4人で手分けして、残されたポケモンの捜索に当たった。


出てきたり、見つかったポケモン達は10匹にも満たなかったけれど、彼らはアーティさんの手に渡り、持ち主を捜して返されることになった。

この後のビルの調査は、事件関与への証拠を捜すため、警察も含めての調査になるという。

見つかったポケモン達の数は、奪われたポケモンの数と一致しない。

何匹かは見つからないままだ。

手掛かりは、見つかるだろうか。

いなくなっているポケモン達のこと、そのトレーナーを思うと辛くなった。

捜索が終わり、ビルから出てきたというのに、気分の上がらない私たちに、ベルが言った。

「みんなありがとう!ムンちゃんとこうやって、また会えたのもみんなのおかげです!」

飾らない、ベルの温かい笑顔に、なんだかとっても癒された。

側にいるムンナも笑っている。

そうだよ。大切な友達のポケモンは取りかえせんだもの、もっと喜ばなくちゃね。

「ほんと、よかったね。ベル」

にっこりと微笑んだベルを見て、心が落ち着いた。

空気がなごむ。ありがとう、ベル。

「さてと、色々手伝ってもらって、助かったけれど、ボクはそろそろジムに戻らないとね。で、みんなはこれからどうするのさ?」

アーティさんが言った。

ビルの中の捜索にも結構時間がかかって、気がつけば空は夕暮れだ。

街には街灯がつき始めていた。

「……あたしは、ヒウンシティをいろいろ見て回りたいけど……」

ベルはそう言い出して、だんだんと語尾が小さくなった。

さっきのこともある、一人が不安なのかも知れない。

トウコが声をかけようとしたとき、アイリスが、ベルの手を握った。

「だいじょーぶ!! あたしがベルおねーちゃんのボディガード続けるから!!」

「アイリスちゃん……」

ほっとした表情を見せるベル。

ベルの手を握りしめているアイリスを見て、アーティはクスリと笑った。

「んー、いいねぇ。アイリスはとびっきりのポケモントレーナーだけど、この街は苦手みたいだし。それにほら、人もポケモンも助け合い! 助け合い!!」

笑いながら言うアーティに、アイリスは少しふくれている。

そういえば、ここにくるまでもライブキャスターで迷ったようだったし、もしかして、方向音痴なのかもしれない。

むっとしているアイリスをみて、トウコもクスリと笑ってしまった。

「あーもう!おねーちゃんまでからかわないでよ!」

「ごめん、ごめん!」

「あ、そうだ。おねーちゃん、ポケモン捜し手伝ってくれてありがと! これあげる!」

アイリスは、トウコに『ヤチェのみ』を手渡した。

「いいの?」

「うん、いっぱいあるから一つあげる!じゃあ、ベルおねーちゃんと行くところがあるから!」

アイリスはそう言って、ベルの腕を引っぱった!

どうやらベルを、ナビゲーターとして使うつもりらしい。

「あ、ちょっとお!」

強引に引っぱられ、ベルは仕方なくついていく。

「じゃあね、トウコ!また今度!」

「じゃーねー!!」

手を振る2人に、トウコも見えなくなるまで手を振った。

アイリスちゃんとは、もっと話をしてみたかったんだけれど、なんだか慌ただしい別れになってしまった。

駆けていくアイリスに連れられて、ベルの姿も見えなくなる。

そのうち、会えるといいな。

「じゃあトウコさん、ボクはジムで待ってるよ」

「あ、はい! また伺います!」

アーティさんもヒウンジムに帰っていた。

誰もいなくなったビルの前に、一人取り残される。

暗くなってきた空。

まだ明るいけれど、どこかへ行きたい気分にはならなかった。

「行こっか!タッくん」

側にいるタッくんの手を握りしめて、トウコは歩き出した。

海辺のメイン通りを歩いて、辿り着いたのはポケモンセンターだ。

センター内のホテルに、宿を取り、タッくんたちを休憩させる。

その間、夕食をとり、ポケモンセンターのラウンジで、雑誌を読んだりしていたが、どうも気分が晴れなかった。

体力の戻ったタッくん達と、今日の部屋へと行く。

真っ白なシーツの敷かれた、ベッドに横になってみても、何も感じなかった。

どこか空虚で、満たされない。

頭はなぜか働かなくて、何も考えられなかった。

ふと、背中に暖かさを感じた。

気づけば、タッくんと、ヒヤリン、テリムまで、トウコの側で体を寄せていた。

『大丈夫?トウコ』

『無理しないでよ、トウコ』

その声を聞いたとたん、ほろほろと涙がこぼれだした。

心配する3匹の心が伝わってきて、緊張が解けたようだった。

押さえ込んでいた、悲しみや、くやしさが溢れ出して、涙が止まらなかった。

「ごめん、ゴメンね…」

側にあった枕に顔を埋めた。

受け入れたくなかった。

Nが、プラズマ団だなんて…。

泣き出したトウコの側を、タッくんも、ヒヤリンも、テリムもずっと離れなかった。