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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (14)

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アイリスに引っぱられるようにして、ベルが泣き言を言いながらビルの中へ入っていった。

なんか大きな子供みたいだ。

くすりと笑いながら、その後ろに続いて、トウコもタッくんと共にビルに突入した!

ビルに入った瞬間、1階のエントランスで待ち受けていたのは、大勢のプラズマ団だった。

先に突入したアーティさん、アイリスちゃん、ベルと共に睨み合う。

さっき倒したしたっぱや、ベルのポケモンを盗んだ団員も並んでこちらを見ている。

よくみると、右端の女が持つ小さな檻の中に、ムンナの姿があった。

その団員達の中央で堂々としているのは、どこかでみた七賢人だと名乗っているご老人幹部の2人と、カラクサタウンの演説で見かけた、ゲーチスという男だった。

皆さん、ご丁寧に揃ってお出迎えといったかんじだ。

「これは これはジムリーダーのアーティさん」

まるでこちらを歓迎しているかのような、穏やかな口調でゲーチスは言った。

自分は悪いことなど、何もしていないかのように微笑んでいるのが、余計にあくどくみえた。

その様子に、アーティが眉をひそめる。

「プラズマ団って人が持っているものが欲しくなると、盗っちゃう人達?」

アーティの言葉に、七賢人の一人が笑いはじめた。

ゲーチスの左側に立つ、青いローブを羽織った男だった。

「ポケモンジムの目の前に、隠れ家を用意するのもおもしろいと思いましたが、意外に早くばれましたな」

くつくつと笑う男。

何が面白いのかさっぱりわからない。不快感が募った。

「確かに……スムラさんの提案はおもしろいとは思ったのですが……。まぁ、ワタクシたちの素晴らしきアジトは、すでにありますからね」

ゲーチスがくつりと喉を鳴らす。

「さて、アナタがた イッシュ地方の建国の伝説はご存じですか?」

「しってるよ!くろいドラゴンポケモンでしょ!」

アイリスが大きな声で言った。

黒いドラゴンポケモン?

そういえば、そんな話、あった気がする。

小さい頃、お母さんに聞いた伝説の話。

「そう……多くの民が争っていた世界を、どうしたらまとめられるか……? その理想を追い求めた英雄のもとに現れ、知識を授け、刃向かう者には牙をむいた黒いドラゴンポケモン……。」

アイリスの言葉に反応して、ゲーチスが声を響かせる。

相変わらずの聞き逃せない何かを持った声だった。

「英雄と、ポケモンのその姿、その力が皆の心をまとめ、イッシュをつくりあげたのです」

睨み合う私たちの表情を、1つ1つ確認するように、ゲーチスは左から右へゆっくりと長いローブを引きずり歩く。

「今一度!英雄とポケモンをこのイッシュに蘇らせ、人々の心を掴めば!」

近づいてきたゲーチスの声が、不気味なほど大きく響いた。

「いともたやすくワタクシの……いや、プラズマ団の望む世界にできるのです!」

そう言い放ったゲーチスと目があった。

くすんだ目。

黒い炎のような闇を見た気がして、背筋がゾッとした。

「…このヒウンには、さぁ、たっくさんの人がいるよ」

黙って話を聞いていた、アーティが静かに言った。

その視線の先は、ゲーチス。

睨み付けるわけでもなく、軽蔑するわけでもなく、ただまっすぐに。

「それぞれの考え、ライフスタイル、ほんっとバラバラ……。正直、何を言っているかわからないこともあるんだよねぇ」

真摯な態度で、前を見据えて話すアーティの姿を、トウコは見つめた。

ベルも、アイリスちゃんも、同じようにアーティさんを見つめていた。

「はて?」

「なにを?」

突然話し始めたアーティの言葉に、団員達は動揺しながら、お互いの顔を見合わせた。

首をかしげてざわつきはじめる。

アーティは、かまわず続けた。

「だけど、ポケモンを大事にしているのは、みんな同じなんだよね。はじめて出会う人とも、ポケモンを通じて話すんだ! 勝負したり、交換したり、ね」

アーティさんの言いたいこと、その思いがなんとなくわかってきた。

「カラクサの演説だっけ?ポケモンとの付き合い方を考え直すきっかけをくれて、感謝しているんだよ」

アーティはそう言って、目の前にいるプラズマ団を見据えた。

「そして誓ったね……!もっと、もっと、ポケモンと真剣に向き合おうってね! あなた達のやっていることは、このようにポケモンと、人の、結びつきを強めるんじゃないの?」

アーティの投げかけた言葉に、フロア全体が静かになった。

黙り込むプラズマ団。

団員の中には、目を泳がせる人もいる。

感動すら覚えるその言葉に、拍手したい気分だった。

何かが揺れ動きそうに感じたその静寂を、破り捨てたのはゲーチスの低い笑い声だった。

心臓に刺さるような、その不気味な笑い声にゾッとする。

「フハハハ! つかみどころがないようで、思いのほか切れ者でしたか」

高笑いするゲーチスはどこか満足げだった。

「ワタクシは、頭のいい人間が大好きでしてね。王のため、世界各国から知識をもつ人間を集め、七賢人を名乗っているほどです。 よろしい!ここはアナタの威厳に免じ引き上げましょう」

ゲーチスが話し出し、プラズマ団にわずかにみえた動揺は消えていた。

複雑な表情を浮かべているアーティをよそに、ゲーチスはトウコの側にいるベルをみた。

「そこの娘……」

視線があったとたん、ベルはビクリと身体を震わせた。

「ポケモンは返してやろう」

ゲーチスはそう言うと、後ろに控えているプラズマ団の女に顎で指示した。

女が指示に従い、檻のカギを開く。解き放たれた扉をみて、ムンナは急いでベルの元へと駆け寄った。

「ムムゥン!!」

「ムンちゃん!」

飛びついてきたムンナを、ベルがぎゅっと抱きしめた。

「ありがとう!! よかったムンちゃん、おかえり!」

「おねーちゃん!!こいつら ひとのだいじなポケモンとっちゃった わるものなんだよ!?」

さらりとお礼を言っているベルに、アイリスがつっこんだ。

「そうだよ。お礼なんて言う必要ないのに…」

「で、でもお……。ムンナが無事でうれしくってぇ……」

毎度ながら、ベルの天然さというか、ずれているところにはびっくりさせられる。

でもまぁ、とりあえずはポケモンを取り返せたことだし、いいのかもしれないけれど…。

……パチ、パチ、パチ。

乾いた音が聞こえた方を見ると、ゲーチスが拍手を送っていた。

「これは麗しいポケモンと人の友情!」

わざとらしい、笑顔。

感情が入っているとは思えない声だった。

「ですが、ポケモンを愚かな人間から自由にする。そのために伝説を再現し、人の心を操りますよ……。では……」

とたんに、部屋が真っ暗になった。

博物館の時を思い出す。

「ごきげんよう…」

ゲーチスの声が響いて消える。

まずい!逃げられる!!

せっかく追いつめたというのに!

「アーティさん!」

思わず叫んだが、アーティから指示は来ない。

そうしている間に、部屋が明るくなり、プラズマ団の姿はどこにもなくなっていた。

また、逃げられた。

結局何もできていないくやしさが溢れてくる。