【銀魂】短文まとめ【銀妙】
【かわいくない女の話】2009.02.28
銀さんが大怪我をして帰ってきた。
大きい一文字の傷は、斬られたというよりもむしろえぐられたように、傷口がパックリと開いていた。
たまたま万事屋に用事があって、私がその場にいたから良いものの、もし新ちゃんだけだったら…。
応急措置の仕方も分からず、医者を呼んでくる間に、この人は死んでしまったかもしれないのだ。
「姉上、銀さんが出掛けてしまわないように、くれぐれも気をつけてくださいね。今こんな状態でまたあんなヤツと接触したらいくら銀さんでも……」
そう新ちゃんは言い残して、神楽ちゃんを探しに行くと朝早くに出掛けていった。
昨晩遅くに、新ちゃんに支えられて万事屋に戻ってきた銀さんは、ずっと眠り続けている。
しかしその寝顔は決して安らかなものではなく、「痛み」に耐えているような、そんな表情だ。
「…こんな傷を負っていても、貴方は行くんでしょうね。」
そして、そんな貴方を引き留める権利は、私にはないんでしょうね。
本当は分かっている。
新ちゃんは今、厄介なことに関わろうとしているということ。
分かっている。
今、私の目の前で眠っている男さえ歯が立たなかったような相手に、自分の弟が敵うわけがないということ。
「もう、誰も失いたくないのよ。」
唯一の肉親の新八も、妹のように可愛がっている神楽も、そして、この銀髪の男も。
「銀さん」
馬鹿な男はきっと、ボロボロになった身体を引きずってでも、戦場へと赴くのだろう。
「約束してください」
それを見てみぬフリをする女だって、十分馬鹿なんだろう。
分かっていても、私は馬鹿な女になるしかないのだ。
馬鹿で、かわいくない女に、なるしかないのだ。
「無事に帰ってきてくださいね。」
そう呟くと、なんだか涙が出そうになった。
しかし、その瞬間、男は苦しそうに呻き声を上げ、ゆっくりと目を開ける。
「あ」
不安な気持ちを圧し殺して、いつもの笑顔を作る。
「気が付きました?」
いつもの笑顔を貼り付けて
いつも通りに強気で
いつもみたいにかわいくない女
貴方も、厄介な女に惚れられたものね。
作品名:【銀魂】短文まとめ【銀妙】 作家名:千草