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【銀魂】短文まとめ【土ミツ】

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【もしも生まれ変わっても、】2008.03.20

「土方さん、姉上に会ってくだせェ…―」
雨が上がり、もうすぐ日が昇るだろう空を見上げていたら、総悟がゆっくりと歩いてきた。
「………」
「姉上はずっとアンタのことを想ってやした。アンタが姉上のことをどう思ってるかなんて知らねェ。でも―…とにかく会ってくだせェ…」
躊躇っていると、総悟が頭を下げる。
「お願い、でさァ。」

おりる度、カン、カンと鳴る階段。
触れた手摺がいやに冷たく感じた。
「……」
ミツバは、まるで眠っているように安らかな顔だった。
部屋の中に灯りはなく、月の光だけがミツバの細い身体を照らしていた。
「ミ…ツバ…」
何年ぶりだろう。この名前を呼ぶのは―
「ミツバ……すまなかった…」
ベッドの横まで歩いて行き、屈む。ミツバはかたく目を閉じたままだ。
「…ミツバ俺ァ…お前の事が…」
相手は死人だとはいえ、やはり言うのは勇気がいることで。
ごくりと唾を飲み込み、そっと触れた手にはまだ温もりが残っていて、握り返してくるような感じがした…
(…ん?握り返して…?温もり…?)
(イヤイヤ、気のせい…)
(だってあれから何時間も経ってるんだぞ…)

きっと自分の緊張のせいだ、と言い聞かせる。
(………)
でもやっぱりおかしい。
そう思い、そっと視線をミツバの顔の方に向けると、ミツバはこちらを向いて微笑んでいた。
「……気にしないで続けて?」
(いやいやいや…)
「…どうしたの?真っ青よ?十四郎さん?」
(ちょっと待て…え…)
ミツバの手に触れていたことを思いだし、急いで手を引っ込めた。
(…アイツ…)
「…しろうさん?」
「あぁっ?!」
驚きと混乱でぐちゃぐちゃになった頭で必死に今の状況の整理をしようとしていたら、返事が荒くなってしまい、ミツバが怯えたような表情を浮かべる。
「…………あの…」
「何だよ…」
照れ隠しにタバコを吸おうとポケットに手を伸ばしたが、今いるのは病院、さらに目の前には肺を患っている(筈の)人間がいることを思いだし、そのままポケットに手を突っ込んだ。
「どうしてここにいるんですか?」
お前こそ、という言葉を慌てて飲み込む。
ミツバが上半身だけ起こした。
「総悟が…」
「総ちゃんが…?」
「ミ…て…てめぇに会ってこい…と。」
さっきは呼べた名前も、相手が聞いてると分かると呼べなくなってしまう。
「そうなんですか。」
「俺ァてっきりてめぇが死…」
言ってから「しまった」と思い、慌てて手で口を抑えたが、この静かな空間だ…きっと相手に届いてしまっただろう。
数秒、気まずい時が流れ、先に口を開いたのはミツバだった。

「私、ホントに死にかけてたの…。」
「………そうなのか」
「でもね…まだ死ねないと思ったの。だって、まだまだやってないこと、たくさんあるんだもの…。」
ようやく心が落ち着いたので、ベッドの横にあったパイプ椅子に腰かける。
「まだ…三丁目のにこにこうどんの激辛うどんだって食べれてないし…、新しく出た、からい~ちょ激辛味も食べれてないし…総ちゃんもまだ結婚してないから一人になっちゃうし…………それに……」
そう言ったきり、うつむき、言葉が止まってしまった。
まさかまた発作が起きたのではないかと思い、顔を覗き込もうとしたが、顔を逸らされてしまった。
「…それに…何だ」
しびれを切らし、半ば怒ったように言うと、ミツバはそっと顔を上げた。

「それに………まだ…」
「まだ…?」
一瞬、視線が交わった。
「まだ…十四郎さんにお礼…言ってないもの…」
柔らかい風が吹き抜けた。
「は?」
お礼…―?
「先生には奇跡だ、って言われたの。」
「は…はぁ…」
ミツバは穏やかな笑顔を浮かべた。
「きっと、余程この世に未練があったんだな、って大笑いされながら言われたの…」
「そうかよ。」
なんだか恥ずかしくなってそっぽを向くと、右手が、ひんやりとしたものに包まれる。
「十四郎さん、ありがとう。」
「は?」
ひんやりとしたものの正体は、ミツバの両手だった。
(まったく…ここに来てからずっと調子を崩されっぱなしだ。)
「十四郎さん、私、十四郎さんのこと好きになってよかった。生まれてきてくれて、ありがとうございました。」
「…」
ミツバがベッドに腰掛けたまま、こちらに頭を下げてきた。
「…たとえ十四郎さんが私のことを嫌っ…」
「違っ…!!!!」
「へ?」
勢い良く立ったせいでパイプ椅子がガターンと大きな音を立てて倒れた。
(何やってんだ俺ェェェ!!!!)
「違…違うって…何が…?」
「っ…ぬぁぁぁぁ…もう気にすんな、俺ァ帰る!」
「まっ…待って!」
隊服の裾を引っ張られ、バランスを崩しそうになるがなんとか踏みとどまる。
「さっき…何て言おうとしてたの?」
「あ?さっき?」
「私が…話しかける前。『お前の事が…』とか言っていた気が…。」
「…!!!!」
一瞬にして顔に集まる熱。
「ねぇ…?」
「…気にすんな!」
「ゲホッ…ゲホッ…教えて…くれない…の…?」
ダメだ、こいつ総悟の姉だった。
「ゲホッ…いいの…ゲホッ…ゲホッ…」
「ぬぁぁぁぁ!もう言えばいいんだろ言えばァ!」
ミツバがニヤリと笑って、すぐに微笑みに変えた。
(やっぱ血は争えねぇんだな。)
「ミツ…バ、」
「ふふっ?なんですか?」
(ダメだ…やっぱ無理…イヤイヤ…ここで逃げたら…あああああ…萌…燃えろォ…俺の小宇宙萌えろォォ…)
お前はずっと分かっていただろう?
「俺ァお前の事が…

――――――

「土方さんもまだまだでィ…。」
コツ、コツと足音を立てながら、茶髪の少年はそこを立ち去った。