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剣ノ一声

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「ほえぇ!可愛い女の子やない?こんな子と一緒に仕事が出来てうれしいわ?それと、まぁ一夏っちゅうもんはニュースで見たからわかるで?そうか、あんたも戦空士か?頼もしい身体やな、今後ともよろしゅう!……ところで、わい席は?」

「ああ、それなら俺が持ってくるよ?一斉、倉庫ってどこだっけ?」

と、清二。

「ああ、それなら俺も行くよ?これからもよろしくな?赤城」

「わての事は良治って呼んでくれ?」

「じゃあ、俺の事は一斉って呼んでくれよ」

「俺の事も清二でいいよ?さて、机と椅子を用意しに行きますか?」

「ええんか!?いやぁ、ホンマおおきに!わても手伝うさかい一緒に連れて行ってや?」

「ああ、じゃあ付いて来いよ?」

さらに大はしゃぎで三人はいきなり親しくなって教室を堂々と出て行った。三人が居なくたっても授業は問題なく進み、授業が終わった頃に丁度三人が机と椅子を抱えて戻ってきたのである。

「いやぁ、真っ先にお世話になってスンマセンな?」

ようやく自分の席が手に入った事で良治は深々と二人に礼を言った。

「気にすんなって?今は戦力と男のダチが不足してんだ」

「ほうか……アンさんらも案外苦労しとるんやな?」

「そうだな?本当にこの視線はキツイよ」

一斉が振り返ると、そこには新たな転校生こと赤城良治の噂をヒソヒソと話し合う女子達の姿が多く見受けられた。確かにこの視線は精神的にキツイ。男子が居てくれたことが唯一の救

いであった。

さて、一時間目が終えて休憩に入った。生徒達は代表生徒となった一夏を囲って今後のクラス代表戦についてを話し合っていた。

「はい、皆さんはもう知っていると思いますが、一年一組の代表は織斑君に決定しました!専用機持ちは四組以外誰も居ないよね?」

「そういえば織斑君聞いた?隣のクラスに転校生が来たって事」

「いや、知らないな?」

「ま、別にこっちのクラスとかかわりが無いから関係ないんだけどね?」

そんな会話をしている一方、一斉達も新たに加わった良治という戦空士へいろいろと質問を投げかけていた。

「ところで、良治の戦空士は誰だ?」

一斉は自分の軍刀「竜蔵」を見せた。すると、竜蔵もまた反応を示す。

(む……この反応は……)

(うげっ、もしかしてアイツ?)

竜蔵どころか紗江さえも反応してしまう。いや、二人だけではない。

(おお!この気配は師匠!?)

対魔刀の左近も反応する。彼女が師匠と呼ぶ軍刀の英霊とは?

「紹介します。こちらがわての軍刀「紫電」さんや」

すると、良治は腰から一刀の軍刀を取り出した。

(どうもー!紫電ってんだシクヨロ!)

「な、何だ?この英霊さんは?」

清二が顔をゆがめて良治の軍刀「紫電」を眺めた。

(清二?こんな奴と関わったらせっかくの男前が台無しになるわよ?)

と、紗江は紫電を嫌っているようだ。

(そんなぁ〜連れないな、紗江ちゃんは?)

(師匠!)

(お!我が一番弟子の左近ではないか?いやぁ、こんなメンコイ娘の主になったなんて師匠も鼻が高か高かだよ?)

「ところで、そろそろ聞かせてもらえないかな?」

ここで一斉が一言。

「そうですね?良治さんも私達と同じ目的でこの学園へ?」

弥生も一斉と同じ考えだ。仲間が増えた事は嬉しいのだが、今後も共に戦う絵ではその仲間の目的と情報も細かく知っておかなくてはならない。勿論良治もそれを了解して、自分が知って

いる情報全てを同業者である彼らに説明した。

「わての目的は妖魔討伐っていうのもあるけど、その前に背負わされている任務が一つあるんや?」

と、彼は人差し指を上げてその任務とやらを口にする。

「任務?」

「そうや?それは中国の代表候補生を学園から蹴り飛ばすことがわての任務なんや」

「中国の?確かに最近の中国は腹の立つ真似をしてくることが多いが……それと何か関係があるのか?」

「それは圏外やで?わてもやれ尖閣諸島やら日本海で密漁やらと色々あってうざいと思うんやけど、中国っちゅう国はもう一つ宜しゅうない真似をしとるやん?」

「それって?」

「ほら、中国は図体がでかい割りに未発展途上国やろ?」

彼のヒントで一人、清二が回答を口にした。

「もしかして、盗作行為?」

「アタリや!その中国はパクリ文化っちゅうもんがある。日本のアニメ、漫画、自動車やコンビニの名前とか、果ては芸名だって日本の文化をパクっちょる。人様の文化を物まねするこ

なんてふてぇ連中や。わても尊敬するお笑い芸人の名前をパクられて苛立っとるんや!芸名とネタをパクるなんて関西人として許しがたい事実や!!」

けっこう興奮してしまっているところだが、ここで一斉に自己発言を止められてしまう。

「興奮しているところすまねぇが……どうしてそのパクリと代表候補が関係しているかを教えてくれねぇか?」

「あ、スマン……わて、興奮するとついやってまうんよ。えっと、代表候補やったな?確か、中国は日本のIS技術をパクって専用機を作ったんや。それを今日転向してくる中国はんに

備え付けたって訳や?」

「でも、それって妖魔とは無関係じゃないか?」

と、清二。確かに良治の説明論に妖魔という単語は一言も出てきていなかった。

「確かに、これはイスルギからの任務ではなく、むしろ日本政府からの命令みたいですね?」

弥生も流石に突っ込んだ。イスルギの任務は妖魔かそれに関連する騒動沙汰など、もしISに妖魔が絡んでいるとしたのなら、それは勿論戦空士である彼らの役目だ。

「弥生ちゃんの言うとおり、政府はイスルギにこういった仕事を投げつけてきたんや。まったく、イスルギは極秘機関やっていうだけで管轄外の仕事を投げつけてきおってからに!」

「良治さんも苦労なさっているようですね?」

弥生はイスルギの隊員全般が苦労している事がわかってきた。それに比べたら自分達はまだ楽な方かもしれない。自分達には関わりの無い学校へ行って勉強し、食事を取って、また勉強し、

最後はフカフカの寝床で睡眠を取る。こんな充実した仕事を新人の自分達が行っていいのかとやや考えさせられる。

「その情報古いよ?」

「?」

すると、一夏たちがいる扉側にてとある少女の声が聞こえた。ツインテールに小柄な少女が堂々とした態度で教室へ入ってきた。

「あれ?凰?」

一夏が呟いた。少女の名は凰鈴音、中国代表候補生であって一夏の幼馴染の一人でもある。

「一夏!どういうことだ!?」

当然同じ幼馴染の箒は苛立っている。箒はそれほど一夏と長く過ごしたことは無いため、小学校からの馴染みが長い凰へ嫉妬している。

「あいつが、わてのターゲットや?」

隅から良治が一斉達に囁いた。

「あいつが?何だ、思った以上に背がちっちゃいな?本当に高校生か?」

「もしかして、小学生にして飛び級?」

一斉と清二が自分らの理論を飛ばしあっている中、良治は一人席を抜けてそのターゲットの元へ忍び寄っていく。先ほどの愛称抜群の瞳はどこかへ消え去り、獲物を捕らえる残忍な獣の

瞳孔へと変わっていた。そして、軍刀を鞘から抜いて。
作品名:剣ノ一声 作家名:伊波鷹元