剣ノ一声
「ん……ってうわ!おった!?」
「あんた……あたしを馬鹿にしてんの?」
「いやぁ……見下げたらホンマにおったわ」
「ったく、わざとなの……」
「蟻んこが」
「あんた殺す!!」
勢いよく野獣の如く飛び掛る凰を駆けつけた一夏に押さえつけられた。
「離しなさいよ!?一夏!!」
「一夏はん、それペットですの?」
良治が珍しそうに凰へ指先を刺す。
「は、はぁ?」
何を言っているのかわからないと一夏、しかし凰と喧嘩した事だけは確かなようだ。
「そのメス猿に首輪でもつけて手懐けておいてな?自販機の前で馬鹿みたいに立ち尽くしてたけ」
「だれがサルだぁ!?」
「凰!落ち着けって!?」
「それに……凰っていうチビ?」
そこで俺が割り込んできた。さっきからコイツのことで聞きたい事が俺もあった。しかし、良治にサルって言われた挙句俺にチビといわれれば流石に怒り狂うだろうな?
「だれがチビだぁ!?」
「……お前、何時から二組の代表になった?」
「え……?」
先ほどまで怒り狂っていた凰が一瞬にしておとなしくなり、額に汗を浮かべていた。
「確か、二組の代表はもう決まっていたはずだよな?」
一夏までも疑問に考え出した。一斉達ならともかく幼馴染の一夏には嘘を突き通したくないため、白状して本音を吐いた。
「か、変わってもらったのよ!……専用機持ちの方が戦力になるって…・・・」
「変わってもらった?それは変わらせたの間違いちゃうん?」
良治である。彼はそこでどす黒い殺気を漂わせてゆっくりと凰へ歩み寄ってきた。
「な、何よ……?」
「中国さん、一つええか?あんた人の座を奪い取って心が痛まない?」
「急にどうしたのよ?別にあんたの知った事じゃないでしょ!?」
「それがどっこい、聞いてもうたんやで?憎みの元代表から事情をな?」
「そ、それがどうしたっていうの!?」
「すぐに謝って土下座してきぃ!!」
良治の怒号が食堂中に響き渡り、全校生徒の視線が彼に注目した。
「はぁ!?」
「お前は人の努力を踏み消したんやで!?あの子、泣きながら自殺しそうになったんや。わてが止めたけど……」
「降ろされたからって死のうとするなんて馬鹿みたい……」
「才能や専用機っちゅうもんでズルしてのし上がれるもんと、初めっから何も無いステータスから始めた奴とは努力と苦労の差が違うんやで?」
「あ、あんたね……!」
凰も良治の口に対して激怒寸前であった。しかし、良治が戸惑わず次々と彼女を挑発へ導く。
「一夏と代表戦でバトルしたくて座を奪ったんだろ?」
と、俺が凰へ推測を発した。俺の推理は当たり、彼女はそうだと頷いた。しかし、だからといって代表生の座を奪ってでも戦いたいだのと考えたら一夏でさえも気分を悪くする。
「なぁ凰、気持ちは嬉しいんだけど……良治たちの言うように謝ってきたらどうだ?」
「い、一夏が言うなら仕方がないわね……わかったわよ、すぐに謝ってくるから」
そういうと彼女は速食堂を後にした。あの調子だとそれほど反省の面影が無いような気がする。
「何やあいつ……反省しとらんぞ?」
良治は益々、あの凰に苛立ってきた。もう任務の事など関係ない。自分の意思で徹底的に凰鈴音をぶちのめすと決めたのである。決意を胸に良治は一夏へと振り返った。
「一夏はん?今度、あのチビと対戦するんやってな?」
「チビって……凰のことか?」
「ああ、その凰とやりあうのはホンマか?」
「まぁ……そうらしいけど?」
「そんなら……あとで一つ頼みがあるんやけど、聞いてくれる?」
「え?」
一体、良治は何を考えているのだろうか……?