指切り
「あーあ、指切りまでして約束したのに」
ジュダルが白龍の肩に回そうとした腕は、白龍自身によって素早く振り落された。
それを特に気にした様子も見せず、ジュダルは話を続ける。
「なあなあ、本当に覚えてないのかよ。桃の木の約束」
「覚えてませんね。仮に覚えていたとしても、迷宮の何たるかも知らなかった幼いときの約束を守る気はありません。あのときと今では状況が違いすぎる」
「そうか? 少なくとも、『強くなりたい』って気持ちは同じだろ?」
一瞬、白龍の肩がピクリと動いたように見えたが、顔はいつもの無表情のままでジュダルを見ていた。
「それでも、俺は神官殿の力を借りるつもりはありません。俺は俺のやり方で強くなる。これ以上用がないなら失礼」
くるりと後ろを振り向き、白龍はジュダルを置いてスタスタと歩いて行った。
(相変わらず愛想のない奴……)
そう思いながらも、ジュダルはどこか満足気に薄らと笑いを浮かべる。
どんなに嫌悪しようと、拒絶しようと、いつの日か白龍は自分からジュダルの手を取るだろう。
真っ直ぐなルフたちの中に僅かに混ざる黒いルフを見ながら、ジュダルは自分の予感が当たる日が来るのを待ち遠しく思った。