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いつか宇宙人とバスケ、テレフォン、インタビュー

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 ところで、来客があったらとりあえずお湯を沸かすっていうのは、おれの悪癖だ。
「なにのむ?」
「のまねえ」
「沸かしちゃったんスけど……」
「コーヒー」
 うわ、やさしい、とか。ないだろ。そんなんじゃなかっただろ。あっ、でも、前からちょいちょいやさしかったよね。体冷えるぞ、とか。てことは、変わってない、のか?
 青峰っちはどかっとソファーに座って、首だけがぐるっとこっちにむいた。中学のころとおんなじ、鋭いまなざしがなつかしい。おれが、一番かっこいいと思ってるところ。
 けれど、おれがコーヒーのマジックカットに手間取ってるのを――なにが、どこからでも切れます。だ。どこからも切れないんですけど――たっぷり5秒は見つめたあと、青峰っちは放り投げてよこすみたいな口調でこうのたまった。
「1on1しねえ?」
「え」
「おまえ大好きだったろ。付き合ってやるっつってんだ」
 いつの間におれ、流れ星だか彦星と織姫だかに、お願いしたんだろうか。じゃなきゃおかしい。いや、たしかに大好きですよ。はい、大好きです。とってもしたいです。でも。
「……おれ、宇宙人じゃないっスけど」
「はあ?」
 なに言ってんだって青峰っちが眉根を寄せた。心底いぶかしげに。
 いいんスか。おれ、手も足も二本しかないし、背はまぁ、高いけど、銀色でも黒目がちでもないですけど。それどころか、うすくもアメリカ帰りでもないですけど。
 青峰っちは、呆然と立ち尽くすおれのところまで寄ってくると、コーヒーの袋を軽く奪ってぴっと破いた。きれいに切れたマジックカットが、おれに返ってくる。それはまるで、なんでもないみたいな手つきで、口調だった。
「なに言ってっかしらねーけど、おれからすりゃ、おまえなんて宇宙人みてーなもんだろ」
 昔っから、へんなテレパシーばっか使いやがって。
 青峰っちが、語尾をひきずってけらけら笑った。昔となんにも変わってないみたいに。
――ああ、そういうこと。
 コーヒーの袋を持ったまま、ばかみたいに突っ立って、おれはふいにはっきり理解した。
 おれが。
 おれが、もし、宇宙人だったとしたらってことを、おれは一回も考えてなかったけれど。でも、たとえば、もしそうだったら。
 青峰っちがぎょっとしている。
「はあ?なにおまえ、泣いてんの?」
「泣いてない、いや、うそ、泣いてるっスね……」
「見りゃわかるっつの。あーもー、おまえのそういうの、ひさびさすぎてわっけわかんねえ。なんだってんだ」
「ちょっと、宇宙の大きさに、打ちのめされてて」
「わかんねーよ……」
 青峰っちはがしがしあたまをかきまぜて、不器用まるだしの手つきでおれに触った。金髪をぐしゃぐしゃかき混ぜて、困ったようにおれを見る。
 そのまなざしが、ほんとうに、宇宙の神秘みたいなレベルでやさしくて、おれは、おれはもう、打ちひしがれちゃってなにも言えない。ただ、感じ入るみたいにして、ぼろぼろ泣きながら呟いた。
「宇宙なんか、行かなくたって、なんとかなるもんなんスねえ……」
「あーはいはい、そうっスねえ」
 青峰っちが、いかにももうお手上げですっていう声音で言うから、地球には青峰っちの手に負えないものがまだこんなにあって、そのひとつがおれで、じゃあ当面は宇宙なんて行けなさそうだね。あー、よかった。