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どこの組織にもマドンナという存在はいるもので、尸魂界に存在する護廷十三隊でもマドンナはいる。
それは一番隊四席黒崎一護女史だ。
その死神歴は優に１５００年以上といわれている。
一番隊には古参の死神が多いがその中でも群を抜いている死神の一人である。
黒崎四席は一番隊雀部副隊長と同様めったに戦わない。
彼女の主な任務は事務仕事の管理など内々のことが多い。
一番隊は兎に角他隊と比べて書類が多い。
一番隊の護廷での立場を考えれば当たり前かもしれない。護廷全体を束ねる総隊長は一番隊隊長も兼任する。それは護廷全部のありとあらゆる事柄が報告される。
最終的な裁可を下すのは総隊長であるが、総隊長のもとに報告する事柄や草案のまとめ等円滑に業務が行われるようにする必要がある。そうしなければあれだけの量の仕事は滞ってしまう。そうさせないようにするのが黒崎四席の仕事であった。
もちろん、副隊長や三席もそれらの仕事を行うが何分一番隊は仕事が多い。雑務に関しては一護が大まかにまとめ上司たちに相談、報告し総隊長である山本に報告するように形態化していた。
その為、黒崎四席は戦闘に参加しない事務に特化した死神と思われているが、実は卍解にまで至っているという噂もあった。
雀部副隊長に関してはそのような記述が記録に残されているが黒崎四席については見つけられたことがない。
その為、噂は出鱈目だろうというのが大半の意見だ。しかし、戦闘に参加はしないがめっぽう強いという事は鍛錬をつけてもらっている一番隊の隊士たちの証言があるので事実である。

そんな黒崎四席の容姿はもう１０００年以上も死神をやっているとは思えないほどに若々しく美しい。
美しい夕日を思わせる色をした髪は長くいつも一つに縛られていた。そして、本当に控えめな髪飾りが彼女に花をそれていた。
常にきりりと凛々しく、笑った顔は野に咲く花のように楚々として慎ましく人々を魅了した。
言葉使いは見かけによらず、乱暴なところもあるがそれもまた彼女を魅力的にしていた。

護廷に入隊した男性隊士は黒崎四席に憧れ、恋におち、そして恋敗れるのが通年行事であった。

高嶺の花。

まさにその言葉は黒崎四席のためにあるような言葉であった。


男は皆、一度は黒崎四席に憧れるものである。
それの例にもれず隊長達も黒崎四席に恋をした。男性隊長で最も古参の京楽と浮竹も黒崎四席に恋をした口の人間であった。

恋に破れたが思いを寄せるのは本人の自由。
京楽と浮竹にとって黒崎四席はあこがれの存在であった。
恋に破れたからこそ、彼女を思い焦がれて慕い続けている。手に届かぬからこそ彼女を見かけるだけで、心は甘美な疼きが走る。

京楽と浮竹は今日も仲良く隊首会議場に向かうため歩みを進めていた。
その時、京楽は一番隊に向かう渡り廊下を歩く一護を見つけた。
彼女を見つけた京楽は少年に戻ったようにはしゃいだ。

「あ!!!一護ちゃんだよ！浮竹！」
「おい、そんな呼び方大先輩にするなよ…」
「固いこと言わないでよ。だって、珍しいじゃない、一護ちゃんめったに外に出てこないから会えないし！浮竹はうれしくないのかい？」
「うれしくないわけないだろ！」
「だろ？だって、僕らの初恋だよ！？初恋！やっぱり、会えてうれしいじゃないっ」
「確かに、うれしい。だが…」
「ああ・・・うん、そうだね。苦い初恋だったねぇ…」




黒崎四席は戦わない。
それは浮竹たちが護廷に入隊した時点で有名な話であった。
浮竹と京楽は山本の弟子と言う事で入隊当初から一護と面識を得ていた。
その為、一護が戦わない理由を聞く機会があった。
それを聞いたのが誰であったのか今では定かではないが、ある時誰かが一護に聞いたのだ。「どうして戦闘に参加しないんですか」と。
その時、黒崎四席は困った顔をして、俺の戦い方は汚いからっと言った。
だって…とそのあとに続いた言葉は、初恋という本当に小さな芽を抱いた若い浮竹と京楽を奈落の底へと落すのは容易なものであった。


そんな当時を思い出し浮竹と京楽は苦い顔をしながら、隊首会議場に足を向けた。
心なしかその足は鈍くなっっているようだった。