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新生勇者戦記 ブレイヴ・サーガ・ディザスター 第85話

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  第85話 「律のトラブル」


  桜高軽音部の部室に放課後ティータイムのメロディーが鳴り響く。澪の歌うトキメキシュガーだ。

  来月の本番に向けて彼女たちの練習の日々は続く。澪の歌声が教室を包み込んでいた。演奏が終わると、今の感じを確認し次にやる曲を考える。

  澪 「ふー・・・いい感じだっ!」

  梓 「そうですよね!なんだかここの所、全体的にいい感じですよ!」

  俊と付き合えるようになった為か、梓は一層イキイキしていた。

  律 「それじゃ次は〜・・・なにやろっかなぁー?」

  唯がここぞとばかりに手を上げて主張する。

  唯 「はいはーいっ!!U&Iやりたい!!」

  澪 「んー・・・じゃあ、それでいこっか!」

  紬 「そうね!そうしましょ!」

  律がスティックで曲の出だしのリズムをならし、演奏がスタートする。憂が体調を崩した出来事と、勇とエクスカイザーの存在あって生まれた曲だ。練習でも唯は想いを籠めて歌う。

  その後も、ぴゅあぴゅあハート、DearMyKeys〜鍵盤の魔法〜と続けて練習する。新たに生み出された曲達は、律の思い切ったスケジュール案もあって完成の域にほぼ達していた。これも彼女達の才能のなせる業か・・・だが、それ以外にも強力なバックアッパーの存在がある故に曲作りのロスが解消されていた。  

  さわ子が、香澄と密かに連携して彼女達の作った歌詞を元に曲作りをしていたのだ。無論これは二人とプロの関係者の秘密で、勇士朗も知らされていない。まさにOGタッグのバックアップだった。

  そして「NO,Thank YOU!」の練習に取りかかろうとした時、唯が電池切れを起こしてしまう。可愛くだらけていく唯。

  唯 「ふにゃにゃあ〜・・・つかれたぁ〜・・・てぃーたいむ〜・・・・。」

  律 「おいおい、電池切れか唯〜っ!」

  梓 「もう!唯先輩ったらぁ!この曲、澪先輩と勇士朗さんの愛のコラボの曲なんですよ!」

  澪 「あ、梓・・・い、言いすぎだろ・・・!」

  梓 「あ!すいません!つい・・・思い入れしてしまって・・・!」

  律 「なんで梓が思い入れするのさ?」

  梓 「なんだか、同じ境遇になると共感しちゃうって言うか・・・はっ!!」

  律 「同じ境遇?!チョット待て、梓ぁあああ!!!それはドーイウイミダー!!!」

  ぎゅおっと梓に迫る律。たじたじになる梓。追い討ち(?)をかけるようにエネルギー切れの唯がこぼす。

  唯 「そーだ、思い出した!憂から聞いたけど、あずにゃん、俊君と付き合う事が出来たんだってねー・・・おめでとー。」

  澪 「本当か?!やったな!梓!!」

  紬 「よかったわねっ!梓ちゃん!おめでとう!!」

  梓 「あ、いえその〜・・・えへへへ・・。」

  律 「何がえへへジャーっ!!私だけフリーになっちゃたじゃんかー!!まったく、私を差し置いてええ!!」

  梓 「そ、そんなコト言われましても・・・。」

  半ば梓に当り散らすようになる律。次の一言がこれまでの軽音部の調子のよさに歪を入れてしまう事となる。  

  律 「それに彼氏作ったって、いつまで続くかわからないんだぞーぅっ!先は知れてるよーっ!」

  梓 「・・・・!!!」

  この言葉は、彼氏のいる彼女達の心にズキッと食い込んだ。誰しもが心の裏側にある憂いを律は突いてしまったのだ。澪は黙っていられなかった。

  澪 「律!!その言葉はないだろう!!いくら自分がフリーだからって!!」

  律 「なーにさ!!幸せそうなのも今のうちだかんね!!!」

  澪 「律っ!!!いい加減にしろっ!!!そこまで言うんだったら今すぐ蓮君に告白して来ればいいだろ!!?」

  律 「な、なに言ってんだ!!かんけーねーだろ?!!」

  顔を赤くして更に反発する律。さっきまでにあるはずがなかった重い空気が部室に流れる。

  澪 「カンケーある!!ガキじゃないんだから見苦しい嫉妬するなよな!!!」

  律 「きいいいい!!!澪のくせにいいぃ!!!」

  たちまちぎゃーぎゃーと取っ組み合いを始めてしまう二人。さっきまでのよかった空気が一変し、その事が哀しくて梓は半べそを浮かべる。二人を何とか止めようとするが、実にか細かった。

  梓 「あ、あのっ、二人とも落ち着きましょうよぉ〜・・・。」

  澪 「梓は下がってていいよ!!」

  律 「そーやってすぐ梓にカタを持つっ!!!」

  唯 「あわわわわ〜・・・。」

  唯もどうしていいか判らなくなってしまう。そんな二人を止めたのは紬の声だった。

  紬 「いい加減にしてよっっ!!!二人ともっ!!!」

  普段はホンワリとした紬が怒鳴った。しーんとする部室。

  紬 「今年でもう、私達は最後の文化祭のライヴになるんだよ?!それにあれから一年が経つのよ!!?今年こそは最高の思い出にしたいのに・・・今ここで争うだなんてやめて!!!」

  ヒートアップしていた空気は紬の一声で一気に冷めた。

  澪 「・・・・そう・・・だよな・・・ムギの言うとおりだ。ごめん・・・私もヒートアップし過ぎたよ。」

  梓 「澪先輩・・・。」

  律 「もういい・・・今日は帰る・・・また明日だ。こんなんじゃ練習やっても上手くいかないよ!じゃーな!!!」

  律は自分だけカバンを持ってそそくさと出て行ってしまった。

  澪 「律っ!!」

  唯 「りっちゃん!!」

  梓 「・・・・どうしましょう・・・。」

  澪 「ふぅ・・・・全く、律のヤツ!今日はあわせるの無しで、個人練習をしよう・・・。」

  梓 「はい・・・。」

  そういいながら澪はベースの練習に取り掛かり始めた。

  澪 (なんだってこんな時にこんな空気になるんだよ・・・もう・・・・。)




  その日の帰り、夕暮れの街を歩きながら、澪は勇士朗と蓮、俊に今日の出来事のことを話した。

  勇士朗 「そんなことがあったんだ・・・。」

  澪 「そうなんだ・・・ケータイも出ないし・・・・ああ、もう!!来月に文化祭があるって言うのに・・・!!!」

  蓮 「なんだかそれ聞いていたら、俺が悪いように思えてきちまった・・・」

  澪 「別に蓮君が悪いわけじゃないよ・・・でも、ずっとこの空気のまま行ってしまったらどうしよう・・・今年で最後なのに・・・バカ律っ。」

  梓 「私がのろけなければこんな事には・・・・。」

  俊 「いや、梓が悪いってわけでもないからさ・・・気にしなくていいって!」

  梓 「俊君・・・。」

  庇い合いが連鎖する。一向は夕日を見ながらそれぞれに律を想う。

  蓮 「はぁ・・・どうしようかねぇ・・・律っちゃん・・・。」

  紬 「本当に何処に行ったのかしら・・・りっちゃん・・・。」

  澪 「多分・・・今頃ふてくされて寝てるか、街の川原で想い耽っているかだなぁ・・・。」