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友人マリオと夏合宿

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黒子は苦笑した。それが思いの外、柔らかになっただろうことを自覚しながら。
緑間に新たな友人が、それも互いを理解しあわないままで側にいるのが自然体になるタイプができたのは、嬉しいと共に、ほんの少しだけ淋しさを感じる。
理解しあえない者は相容れない、そういうタイプだとどこかで思っていたので。
と述懐する、そんなセンチメンタルな気分は身体を起こした高尾によって払拭された。
「やりこんだ、ってことは真ちゃん絶対ROM持ってるよなーっ!うちでもコレ流行らせちゃろ、絶対!」
キャラキャラと愉快そうに笑う高尾の眼が物騒に光っている気がするが、気のせいでは無いだろう。何故なら相田は頬をひきつらせている。
高尾はどうやら、話をそこに持っていきたかったらしい。
先ほど性格が悪いなどと評された黒子は、ポイントガードをやる人間ほど自分の性格は悪くない、と信じている。
ああ、なんだか近所の独居老人へオレオレ詐欺の電話が掛かっているところに居合わせた気分だ。純真無垢なきらいのある、寧ろそこだけが長所だろう緑間が傷つかないことを祈りたい気分だ。
「…一応、お願いするけど、それ、秀徳の監督には見せないでくれない?」
相田はひきつった頬をそのままに、初めて高尾を正面から見てお願いを告げる。つまり、相田はそれまでゲーム画面から一度も目を離さなかったのだ。が、高尾はカラリと笑って、嫌っすね、と肩を竦めた。
「こーんな選手の能力測定に向いたもん、監督に内緒とかあり得ないっしょ。そもそも今はこっちがあんたたちを追っかける立場なんだし?」
ニヤリ、持ち上がった口角に、日向は嫌になるほとゾクリとする。それは手強い相手への悪寒と愉悦のどちらがより強いのか。
と、また高尾が空気を一変させ、にぱ、と歳より幼く破願した。
表情だけで相手を振り回す男である。
「待って真ちゃん、こっちこっちー!あー探させてゴメンそんな顔しないでって。そっか消灯?先輩たちに怒られちゃった?」
見れば襖が細く開いていて、その隙間から緑間を見つけたらしい。
先輩方がお前を探してこいと言ったのだよ、と言って襖を開けた緑間は、そこが誠凛の部屋とは思っていなかったのだろう。一度だけ目を丸くして、眼鏡を押さえると、
「何をしているんだお前は。他校に迷惑を掛けるものではないのだよ。」
と大袈裟に長く息を吐く。
黒子は純粋に、高尾が迷惑をかけた側だろうと判じられてしまう仲の良さにムズムズとした。
「ゲーム大会をしてたんです。懐かしいでしょう。緑間くんもやっていきませんか?」
黒子が見上げる姿勢で朴柮に告げれば、緑間は闖入者に視線をやる誠凛メンバーと視線を一度合わせ、それからゲーム画面を眺めて、それが何かわかったらしく顔を強張らせる。
見開いた瞳で声を出そうとしたとき、緑間と黒子の間を遮るように高尾が立ち上がった。
「あーはいはい消灯だっつったでしょ、早く戻らねーと先輩に轢かれんの!勘弁して。」
エースの情報漏洩阻止、と言わんばかりに立ち塞がる高尾の肩越し、緑間に、他意もなさげに黒子は告げる。
「なら今度、時間があるときに桃鉄しましょう。」
言うだけ言って黒子がふいっと顔を背けると、緑間はテーピングのされた指で眼鏡を押しやり、時間があればな、と小さな声で答えて部屋を出た。
「…うわ、緑間がデレた。同中ずりーの。」
半ば呆然とその後ろ姿を見る高尾に、黒子は
「単に緑間くんが得意なだけです。運要素があるゲームは最強ですよ。」
と言った。高尾は軽く吹き出しつつも、少し強い語調で廊下から呼ばれる声に、はいはい、と返事を返し
「それじゃ、誠凛の皆さん、お邪魔しました!今度は純粋に遊ぼうな、おやすみ〜。」
とウィンクして、退室する。
騒々しい存在感と裏腹に静かに襖が閉じられる瞬間、
「鷹の目くんは手強いなあ。」
と、木吉が呟いた声は夜にきれいに溶けた。
手強い、という評価に、日向はあっさり緑間の能力測定を阻止した手腕のことを思い、黒子は純粋に緑間を構いたかったことを指摘された気分になり、そのどちらをも指したんだろうと察した相田は、ゲーム画面を見つめながら唸る火神を見やって、早くこれくらい腹芸できるようになってくれないかしら、と思ってみたが、その実現不可能性に深い溜め息をついた。
作品名:友人マリオと夏合宿 作家名:八十草子