二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【朝菊(♀)/海賊パロ】 南セントレアの猟犬

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 


船長室に向かった3人の男が、豪快に船長室の扉を開けた。
無人だと思われたその部屋には、東洋人の女が1人この戦乱のさなか我関せずと
優雅に本を読んでいた。赤い着物には黄色い菊の花の刺繍が施され、袖は椅子の肘掛から
床に向かって垂れている。その場違いな佇まいに男たちは一瞬動きを止めた。

「何ですか、貴方達は。」

椅子に座って悠々と本を読んでいた菊は、本から目を離さないまま無機質な声で問う。
菊の声に我に返った男達は、相手が女だと知って気が緩んだのかニヤニヤと笑いながら
部屋に入り扉を閉めた。

「へへっ、俺達ぁちょっくらこの船の金になりそうなものを頂戴しようとしたのさ。
船長室とくらぁ高価な金品がたくさんあるだろうと思ってな。
そしたら、期待以上の上物があるときた。どうだ、俺達と遊ばないか?」
「遊びたいなら外でやってください。外の者達の方が私なんかより楽しく
遊んでくれますよ。」
「そうケチケチすんなよ嬢ちゃん。どうせ、ここの船長とも毎晩よろしく
やってんだろう?俺達も楽しませてくれや。」

そこでようやく、菊は本から顔をあげると男達を見据える。

「生憎、私には貴方達のような虫けらを相手にしている時間などありませんので。」

そういって、優美に冷笑した。

「な、バカにしやがって!!」

3人のうち1人が菊に斬りかかる。
だが、そのその剣は鉄扇によって流され、男はバランスを崩す。
寸分の隙も与えず足払いをかけた菊は、転倒した男に乗り膝で胸を圧する。
鉄扇をシャッという音とともに広げ、口元を隠すと菊は目を細めた。

「もう一度だけ言います。今すぐここから出て行って下さい。
この部屋の主人は部屋を荒らされるのが嫌いなので。」
「っにゃろう!」

ガタガタッ!
騒ぎを聞きつけた、男たちの仲間が部屋へ駆けつける。

「あらまあ、女1人に随分とたくさんお出でになさって…。
ざっと7〜8人というところでしょうか。まったく、あの人は何をやって
おられるのやら。」
「ぐぇ!!」

更に菊に胸を圧しかけられ、男が声をあげる。鉄扇をシャンッと閉じた音とともに
2人の男が同時に飛び掛かる。鉄扇を袖にしまい菊は刀を抜き膝下の男にとどめを刺すと
それを抜く勢いで飛び掛かってきた男達に斬りかかる。
一瞬で血を吹き出し倒れた彼らのことなど見向きもせず、次々に斬りかかってくる
男達を切り倒していった。
その刀は舞うように流れ、洗礼された軌跡を残していく。
真っ赤な着物の袖が、菊が刀を振るうたびに靡(なび)き彼女の存在をよりいっそう
幻想的にさせていた。

「お、お前、まさか『南セントレアの猟犬』か!?」

菊は顔についた返り血を手で拭い、ゆっくりと最後の1人となった男に視線をやった。

「く、来るなぁ!」

最初に部屋に入ってきた3人のうちの1人だった男は銃をかまえ、叫ぶ。
男の身体は震えあがり、銃がカチャカチャと音をたてていた。
そして尚も微動だにせずこちらを見据える、菊の全てを呑み込むような漆黒の瞳に
恐れをなして、男は銃の引き金に力を入れる。

バンッ!

瞬間、菊は弾を避け男との距離を急速に縮め男の肩に刀を突き刺す。

「ぐぁっ!」

壁に縫い付けられた男が悲鳴をあげた。

「残念ながら、私は貴方達のような低能な生き物を甚振って愉しむ趣味はございません。
そこの入り口に立っている方なら、もっと長く遊んでくれていたかもしれませんが。」
「何だ、気づいてたのか。」

ニヤニヤと楽しそうに、アーサーは入り口の壁に体重をかける。

ザシュッ!

菊が男にとどめを刺し、男は倒れ床を血で染めあげた。

「よくまあ派手にやってくれたなぁ。」
「こんな所にあの虫けらがわいてきたのは、貴方の注意不足です。
私はただあなたに言われた通り、留守番をしたに過ぎません。
むしろ、読書の時間をつぶした貴方には感謝して欲しいくらいです。」

懐から懐紙を取り出し、刀を拭いながら淡々と答える菊にアーサーは喉奥で嗤う。
そして菊に近づき、腰に手をまわして引き寄せた。

「それにしては、口元が愉しそうに上がってたぜ?『南セントレアの猟犬』さんよぉ?」

そう言ってアーサーは拭いきれなかった菊の頬についた血を舐める。

「貴方みたいな悪趣味な人に言われたくないです。とりあえず、離してください。
服がべたついて気持ち悪いです。この部屋も自分で何とかして下さいね。
こんな汚れた部屋で寝るなんて、我慢できません。もし、今日中に何とか
出来ないのでしたら、私は今日フランシスさんの部屋で寝ますので。」
「おいっ!」

そう言って、アーサーを払うと菊は部屋を出て行った。

「フッ…。」

アーサーはその後ろ姿を見送りながら、先ほどの艶やかな菊の舞を思い出し片方の口唇を上げる。
彼女は絶対自分から離れない。むしろ離さない。
このがんじがらめになった鎖から逃れることなど出来ないのだ。
もし、逃れたとしても全力で捕まえて、翼を?いでこの籠のなかに戻すだろう。




さあ、鳥籠の中の姫君のために今宵はどんなデザートー夢物語ーを用意しようか。