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日常の一場面

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 ザァァァーッ……キュッ、キュッ。
 流れ出るシャワーの水を止め、浴室を出て、バスタオルで体と髪を適当にふき、下着の上にパジャマがわりのティーシャツとハーフパンツを着てタオルを持って洗面所を出る。
 アンディは部屋の中を見回した。
 同室の先輩ウォルターの姿がない。
 さっきまで机の前に座って何か読んでいたようだったのに。
(とうとう埋もれたかな? ……)
 部屋のウォルターのスペースは尋常じゃない汚さで、もちろん机も例外ではないので、……っていうかそこが一番汚い……風呂に入っている間にさらに汚して姿が見えなくなっていまったのかな、と。
(まあ、それはないだろうけど……)
 アンディは首をひねりながら部屋の中央に足を進める。
 ……本当に机にはいないみたいだ。
 ということは、部屋を出て行ったのか。
 こんな遅い時間に?
 時計を見ればもう9時を過ぎている。
 食堂はとっくに閉まっているし……コンビニにでも行ったのか。
 まぁ、いいや。
 ごしごしと頭をタオルで拭きながら……いつもなら洗面所を出た時点で髪の毛から滴を垂らしているとウォルターの『ちゃんと乾かしてから出てこいよ』という声が飛んで、場合によっては強制的にドライヤーをかけられる、それが案外気持ちいいので黙って受けている……アンディは飲み物を取り出そうと小型冷蔵庫の方に足を向けかけて、気付いた。
 ……いた。
 アンディは目を据わらせて『それ』を見る。
「……ちょっと、何してんのさ、ウォルター」
「んー……」
 ベッドの中から眠たそうな声が返る。
 眠くなってベッドで寝るのはいい。どうぞご勝手に、だ。
 でも。
「そこ、ボクのベッドなんだけど」
 憮然として言う。
 ウォルターが寝転がっているのは2段ベッドの下の段。
 だが、ウォルターのベッドは上の段、だ。
「……んー」
 一応『知ってるよ』程度の返事が枕に顔を埋めた赤い頭から返ってくる。
 いや、『んー』じゃなくて。
 アンディは眉根を寄せてスタスタとベッドに近付く。
 そして、赤い頭を見下ろす。
 枕にしがみつくようにして完全にベッドに体を沈ませている相手。
「ウォルターは上でしょ? 眠いならちゃんと自分のところで寝なよ。ボクはどこで寝ればいいのさ」
「ん……動くのダリぃ……眠い……」
 わずかにこちらに向けられた顔が、甘えるような目で、甘えるような声を出す。
「なぁ、アンディ。今日はおまえが上で寝て……」
 ぷちっ。
 アンディは己の体のどこかで何かが音を立てて切れるのを感じると同時にくるりと後ろを向いてウォルターの背中の上に『ドスン』と腰を下ろした。
「いって!!」
 ウォルターがいきのいい海老のような動きをする。
「ちょっ、アンディ、重っ……」
 ぐりぐりと右に左に体重を傾けてウォルターを『漬け物の刑』に処す。
 気分は漬け物石だ。
「ヤベッ、内臓出る……っていうか、折れる折れる、体がふたつになる!!」
「増えるの?」
「馬鹿なこと言ってないで早く退くんだ、アンディ!!」
 アンディはじゅうぶん懲らしめたと思うと、ゆっくりとウォルターの上から退く。
「それはこっちのセリフ。……早く退いてよ」
 しぶしぶと起き上がるウォルターは、痛そうに背中に手を当ててさすっている。
「あー……腰がいてぇ……やられた」
「勝手に人のベッドで寝てるからだよ」
「ちょっとくらいいいじゃん! 俺のベッド汚くて手足のばせねぇんだもん。しょうがねぇだろ」
 口をとがらすウォルターに、アンディは枕をつかんでそれをぶつけた。
「いでっ!!」
「全然しょうがなくないでしょ。片付けろ」
 わざと冷たく言うのは、ウォルターが未練がましく人のベッドの上にあぐらをかいて動く様子がないからだ。
 ぽりぽりと後ろ頭をかいていたウォルターは、前に立つアンディを上目遣いに見て、期待をこめた口振りで言う。
「おまえなら俺より小せぇから大丈夫そうだしさ……今日ベッド交換しない?」
 そうか、背中に乗っても枕で殴ってもダメなのか……とアンディは次の攻撃を何にしようかと考える。
 不穏な沈黙に、ウォルターが慌て始める。
「あっ、なんなら一緒に寝るか? アンディ。それなら俺もおまえも体のばして寝れるしな……てっ!!」
 タオルを素早く振り回してウォルターの顔面にぶち当てたアンディは、目を半眼にしてウォルターの顔に顔を近付け、間近で低めた声を出した。
「狭いでしょ」
「ハイ……」


作品名:日常の一場面 作家名:野村弥広