ヒーローになれなかった男
にわか雨が降り止んで、もしかしたら虹がでているかもしれない、けれど多分ビルで遮られる筈の池袋の真ん中で何故俺の思考がトリップしていたのか。ああ、確か
「ねぇシズちゃん聞いてよこの前さぁうっかり取引先の人から贈り物をもらったんだよ!なんだったと思う!君のショッカー姿のシャ・シ・ン!全身タイツだよ?!しかも黒!俺思わずその場で噴き出して大ッ爆笑しちゃってさぁ!お客さんの前なのにね!笑い死ぬところだったよシズちゃん!いやぁ俺も迂闊だったねぇ間接的とはいえ君に殺されそうになるとはね!しかも笑い死にで!あー今思い出しても笑えるよホント最悪ホント駄作アハハハハハハハハハ!流石シズちゃん!でも君よく悪役似合ってたよ子供も逃げそうなすごい目つきでさぁ!ところで俺シズちゃんはいつ転職するのかと思ってね。ああ今就いてる仕事は俺のせいで駄目になっちゃったかやったねシズちゃん!じゃあ今が転職時だよシズちゃん俺が君の天職をご教授してあげよう!反吐が出るね!ふふ、なんだと思う?池袋のゴ・ジ・ラ!アーッハハハハハハ俺最ッ高ッ!あっでも今もう破壊活動してるか!ほらみてみてよシズちゃん今までの君の軌跡をさぁ。多分ね、君今までに街一個分以上は破壊してると思うんだ俺は!違う?違わないでしょ?そんなに壊してどうするのシズちゃん!破壊活動なんて人間がすることじゃないんだよ?ほら一応森林破壊にも生きる為とか木を伐採する為とか名目はあるわけじゃない俺の愛しい愛しい愚かな人間は!でもねシズちゃん君の暴力には意味はないんだよ、あ、あったっけ?俺をコロス為?まあそのコロスっていうのが既に暴力だったり破壊だったりしてしかもそれも意味のないものだったりしてね!あーほんっとうに理解不能だよ意味がわからないこれじゃあ言葉が通じない只のモンスターだね!化け物だよ!あーどこからかこの悪役を倒してくれるヒーローとかがおでましてくれないかなぁ!」
そうかそうだこいつのせいだこいつがまた俺の目の前に現れてきてまたつまらないことをぬかしてああ今日こそ殺す絶対殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
人の波とノミ蟲の耳が腐るような笑い声を突っ切って走っていたら視界の端に赤いものを見かけた。駆けよって、今日こそ、今度こそ、今こそ奴を殺そうとソレを持ち上げる。
不意に、頭がくらりとした。
作品名:ヒーローになれなかった男 作家名:草葉恭狸