Telephone call
忍岳
イライラする。
俺が忙しい合間を縫って・・・いや別に忙しくはないか。
両親がいないタイミングを見計らってわざわざ電話してやってんのに。
いつまで経ってもコール音は終わらない。
侑士のケータイは鳴らし続けても留守電サービスに切り替わらない。
跡部は不便で仕方がないといっていたけど、それが今の自分にはありがたい。
このまま留守電のアナウンスが流れたら、ありったけの罵詈雑言を残して切ってしまうだろう。それでは駄目だ。
つーかこれケータイだろ?何で出ないんだよ。持ち歩かないんならケータイの意味無いじゃんか。
まさかこんな時間まで練習してるとか・・・?そんなわけないよな。
うーんと考え込む中、ふいにコール音が止む。
『…岳人?』
お前の知り合いに俺以外の向日がいるのか。
「出るのおせーよ侑士!」
『堪忍してや、今戻ってきたとこなんやから』
「・・・ケータイは」
『部屋で充電してた』
ということは気付いていながらシカトしていたわけではない、と。
良かった、シカトだったらマジで凹んでたぞ。
「合宿ってそんなに練習遅いのか」
『別に練習しとったわけやないんやけど・・・』
なるほど、いつものパターンか。
収まったはずのイライラがまた集まってきたようだ。自然と眉根が寄る。
「わかった、また跡部と一緒だったんだろ!クソクソ跡部め!」
『しゃあないやろ、アイツが勝手に呼び出すんやから。帰ったらなんか奢ったるから、機嫌直し?』
これもいつものパターン。不機嫌になった俺を、食べ物で釣ってご機嫌取り。
・・・いつまでもそんなもので釣られると思うなよ!と言ってやりたいが。
それじゃいつまでも同じところをグルグルグルグル。堂々巡りだ。
だから俺は、おとなしく餌に掛かって見せる。そして、
「ホントか?」
『ホントやって』
「絶対奢れよ!」
『はいはい』
「あと、」
これはほんの少しの勇気。
「合宿終わったら俺ん家来い!」
『・・・・・・そら、大胆な誘い文句で』
「うるせーな!わかったのかよ」
『わかった』
「・・・・・・ならいいんだよ」
『岳人?』
「もう切るからな!じゃ、頑張れよ侑士!」
『ちょ、
・・・・・・全く、可愛いやっちゃなぁ』
その言葉は、俺の耳は届かないけど。
作品名:Telephone call 作家名:まんじゅう