二人と結婚式
目の前に広がるのは真っ青な空だけ。上り坂にさしかかっていたから目の前には空しかない。ふうふうという兄の切れた息に下りようか?なんて気遣ってみせながら日々人はそんなことを言った。もし世界の終わりなんてものがあったとして、そこには自分と六太の二人しかいないとして、それはまるで完成された幸せな箱庭の世界のようで。
そんな日々人の思考に気づかないまま、相変わらず不機嫌そうな六太が立ちこぎで坂道を登りつつ馬鹿だなお前、という。それからまっすぐ前方をみながら何かの覚悟を決めるように俺は、といった。
「俺はお前がいるんなら、別に世界が終わったってかまわねーよ」
自転車が石に乗り上げてがたんと揺れる。ぐらりと揺らいだ自転車に日々人は思わず地に足をついた。短い坂道は終わりを告げて、先に広がるのは田んぼがちらちらと見える田舎道、ちゃんと載ってろよと六太は言い日々人はそんな兄の背に凭れかかる。
「じゃあもう、二人で幸せになるしかないね」
日々人の言葉に、お前は短絡的だな、と六太は笑い、自転車をがたがた言わせている。きっともうすぐ運転代われとか言いだすんだろうなと思いながら、日々人はその背で少しだけ泣いた。