キングダム・オンライン
『SAO』というデスゲームが始まって一ヶ月…
ソラ達は未だに第一層すら攻略できていなかった。
既に千人以上のプレイヤーがゲームオーバーとなっている。
これだけで、このゲームの過酷さがわかる。
初めてオンラインゲームをした人、いろいろなオンラインゲームをやってきた人、βテスターの人。
『ゲームオーバー=死』が身体の動きを鈍らせ、判断を誤らせる。
あの日、ソラはクラインの知り合いと合流し『はじまりの街』を出た。
この世界をよく知らず、具体的に何をすればいいのかわからない。
できるだけ《ポーション》を買い溜め、ひたすらレベルを上げるために戦った。
このゲームをクリアするために。
「よし、今日はこんくらいにしとくか!」
「そうだな!」
クラインの提案にみんな賛成し街に戻ることにした。
この世界では街などの《安全区域》があり、その場所ではプレイヤーのHPが減ることはない。
逆に、それ以外の場所ではプレイヤーのHPが減る。死に近付くということだ。
「今日はこの部屋にしようぜ!」
街にはいくつかの宿泊施設がある。
『コル』呼ばれる通貨を払い泊まることができる。
値段は高いものから、格安のものまでたくさんだ。
「わるい、俺少し装備のメンテにいってくるよ。」
「ん?そうか。じゃあ、ここからは自由行動にすっか!明日の待ち合わせはあとで《メッセージ》を送るわ!」
「サンキュー!」
そう言って、ソラはクラインとそのメンバーと別れた。
そして、再び街から出てモンスターを狩る。
一緒に行動してからしばらくこんな生活ばかりしていた。
おかげで既にソラのレベルは9にまで達してた。
第一層の時点でこのレベルはおそらくトップクラスだろう。
ある森の迷宮区を歩いていると、そこにプレイヤーがモンスターと戦闘をしていた。
たまにピンチになりそうな人を見つけて助けていたソラだが、今回は違った。
フード被って顔はわからないが、背丈はソラか少し大きいかもしれないその人は『レイピア』と呼ばれる細長くリーチが長い武器をモンスターののど元に正確に《ソードスキル》である《リニアー》を打ち込んでいた。
《リニアー》とは《片手剣》や《レイピア》といった武器に扱えるスキルで、相手に目掛けて突きをする単発スキルだ。
その華麗さに見とれていたが、少し無駄が多いように感じた。
なぜなら普通の攻撃一撃で倒せるモンスターにもソードスキルを使って倒していたからだ。
その姿は少し狂気にすら感じた。
「君、スゴく強いね!いつも、ここでレベル上げしてるの?」
戦闘が終わってからソラは思い切って話しかけてみた。
が、帰ってきた言葉は
「あなたには関係ないでしょ?私に関わらないで。」
遠目でしかもあたりは暗いのでよくわからなかったのだが、声を聞く限りこの人は女性であることがわかった。
この世界で女性プレイヤーはかなり珍しい。
しかも、ここは現状ではトップクラスの迷宮区だ。
彼女が相当強いということがわかる。
それにしても…
「ちょっと話しかけただけじゃないか!?」
ソラも少しムキになって返してしまった。
しかし、相手は気にせず手に取ったレイピアを下において代わりに新たにアイテム欄《ストレージ》から下に置いたものと同じレイピアを取り出した。
しかも、よく見たらその武器は《はじまりの街》でも買える初期の武器だ。
「きみ…もしかしてその武器でここまで来たの?」
「なに?なんか文句でもあるの?」
だとしたら、この人は相当なものだ。
ソラは感心していると、彼女は突然ふらつきだした。
慌てたソラは彼女の背中を支える。
すると、彼女はそのまま倒れて動かなくなった。
どうやら意識を失っているらしい。
このままにしておく訳にはいかないと思ったソラは一度街に戻ることにした。
しかし、今のソラの筋力値では人を運んでいくのは厳しい。
どうやって彼女を運んでこうか?
作品名:キングダム・オンライン 作家名:スバル