4月1日
ピロートーク
何度も肌をくすぐってくるクセ毛が鬱陶しくて、手で払う。それが不満なのかますます身を寄せてくる男は、剥き出しの肩に歯を立てる。
さっきまで爪を立てていたせいで、そこは傷になってる。ぬるい舌が舐るたびに、ちりりと痛い。
胸に触れる髪を指に絡めとりながら、軽く引っ張ってやる。髪も指も舌も、本当にこの男の性格をよく表している。なんてしつこく絡んでくるのだろう。
「痛いよ」
「平気さ」
傷を舐めるなと文句を言えばいいのだろうけど、言い返されるに決まっている。結局、お互い様ってやつに落ちつく。
だから髪を食み、不満げに揺れる瞳を捉える。
こういうとき雄弁な言葉なんて必要ないし、舌は言葉を紡ぐより先になすべきことがある。邪魔な距離を零にして、互いにそれを絡めとる。
溶ける体温に触れ合う指先。その中にあって、肉体そのものが邪魔くさい。もっと交じり合えればいいのに。
「ねぇ」
「……なに?」
そのまま床にふたり転がれば、彼のニセモノの髪が波のように広がる。さっきまでしつこかったのが嘘のように逃げていく。だから。
「もっと僕と溶け合っていて」